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フジミ(日本)1/32 コマンドールワーゲン (1971年) [AFVモデル]

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FUJIMI1/32 Grosser Mercedes-Benz


1935年式グロッサー・メルセデスベンツのモーターライズキットです。

もともとはフジミが発売していた日本の皇室の「天皇御料車」のキットですが、菊の御紋章などの部品を廃してドイツ軍特有のデカール等を付属させることによって、軍用車のキットとして甦りました。

ちなみに高荷義之画伯によるこの箱絵。
背景に並ぶドイツ戦車部隊の中に、よ~く見ると「お遊び」で、とある戦後型米軍戦車が紛れ込んでいる……というのは、マニアには有名なお話ですね!

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このキット、少年時代に確かに見覚えがあるのです。
しかし、しばらくはマルイが発売していた1/35アドルフ・ヒットラー専用車グロッサー・ベンツのキットと記憶がゴチャ混ぜになっていました。
あの当時はちょっしたミリタリーブームで、各社こぞってこういった製品をリリースしていましたから、記憶が曖昧になってしまっていたんです。

戦争映画好きの僕は少年時代にプラモデルを使って映画のワンシーンのような特撮写真が撮りたいと頑張っていたのですが、よく映画に出てくるシーンの「高級そうな軍用乗用車で司令部にやってくるドイツ軍将校」みたいな写真が撮りたくても、手に入るのはキューベルワーゲンやホルヒ乗用車ばかりで、ありきたりに感じてしまっていたので、このキットを見つけたときは大喜びでした。
しかし当時はお小遣いが足りなくて……戦車ばかり買わずにコッチを買えば良かった!と悔やんだものでした。


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10年ほど前にアンティークショップでこのキットを見つけて、ようやく自分の記憶を整理することができました。

フェンダーの曲面など、クラシカルで美しいデザインを損なわず綺麗にまとめた部品や、極小のギヤボックスと
ウォームギヤを使って本来の形状に破綻をきたさないように配慮しつつモーターライズ化してあるなど、フジミの
意気込みが感じられます。


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細い窓枠、ラジエーターグリル、サイドステップ等、実車がメッキ仕上げだったりモールの張り巡らされている
部分には、美しいメッキ部品が用意されていました。
ボディの成形色もしっとりとした黒、タイヤはゴム製なので、初心者が塗装をせずに組み立てても見栄えのする
出来上がりが期待できたのではないでしょうか。

デカールも将軍旗、国防軍と武装親衛隊のものがキッチリとセットされています。

……日本のミリタリーモデルが、質的にも飛躍的に向上し始める直前の頃の、ユニークなキットです。


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マックス模型(日本)1/35 ホワイト M3A1スカウトカー (1973年初版) [AFVモデル]

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MAX1/35 White motors M3A1 SCOUT CAR


マックス模型は、ミリタリープラモデル全盛の1970年代初頭、他社では見られないようなマニアックなアイテムを矢継ぎ早に発売して、やがて消えていった幻のようなメーカーです。

M3A1は1930年代後半にトラックの名門メーカー、ホワイト社が設計した指揮・偵察用の装甲車で、第二次大戦が始まる頃にはすでに旧式化していたため米軍ではさほど使われませんでしたが、有名なパットン将軍が北アフリカ戦線で運用していたこともあって、戦史家にはよく知られた車体でした。
一般的ユーザーの人気……というものを考えつつもドイツ軍アイテムではなく米軍アイテムを発売しようとした場合、普通ならばM2またはM3ハーフトラックかM8グレイハウンド装甲車を発売する方向に向かいそうですが、アメ車でありながら英連邦軍やソ連軍で多用されたこのクラシカルなスカウトカーを選んでしまうあたりが一捻りの得意なマックスらしいセレクトのように思います。

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僕が初めて作ったマックスのキットが、このM3A1スカウトカーでした。

……告白しましょう。

小学2年生の僕は、このキットが作れませんでした。
完成しませんでした。悔しくて、泣きました。
小学生が作るには、あまりにも高度な内容だったのです。
これは一種のトラウマになりました。その後いくつもタミヤの戦車や装甲車を作り、かなり腕前は上がっていったものの「いや、まだまだマックスのキットを作るときには油断してはいけない……」ずっとそう思っていました。
このトラウマが解消されたのは中学生になってからで、恐る恐る買ってきたマックスの(その頃には、トミーのブランドから発売されていました)M3A1を1週間かけて注意深く組み立て、無事に完成させました。
あのときの嬉しさは今でもよく覚えています。友達にも自慢しました。


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とにかく凝った設計のキットでした。
タイヤ装着部分の部品分割は、組み立て説明書によれば「実車と同じ機構になっているので、タイヤ交換中のジオラマも作れます」というほどのもので、この部分だけでも4つのタイヤすべてをバランス良く組み込むのが大変でした。


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キットには3体のアメリカ兵のフィギュアが付いていました。
当時、タミヤのフィギュアはみんなキチンとボタンを留めてお行儀の良いものばかりでしたが、マックスのものはガンベルトを付けず、ボタンを外したラフな恰好で、格好良いなァと思ったものです。
ただし、お顔の造作やポーズのバランスなどはあまりよくなく、子供心にナントカしたいと思ったのを覚えています。
中学時代に「リベンジ」したときは、頭や腕の部品をタミヤのものに交換して、格好良く仕上げようと努力しました。


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これもすごかった……。
M3A1はM2ハーフトラック同様に車体の周囲をグルリと囲むようにガンレールが取りつけられ、その上をガンマウントがスルスルと滑っていくような機構になっていますが、マックスのキットはこれを完全再現して、ガンマウント可動になっていました。
ところが、子供が作るとガンレールとガンマウントの間に接着剤が入り込んで、うまく可動させることはとても不可能でした。
しかしこういった部分にも、メーカーの意気込みが感じられます。


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マックス、そのこだわりの極致。
ドアの部品には「四角の中にバッテン印」のようなモールドが付けられています。
これは米軍機械化騎兵部隊の伝統的なエンブレムです。
M3A1は機械化騎兵の偵察部隊などで使用されましたから、その象徴としてのモールドです。
実車もこれは真鍮の銘板のようなものですから、マックスはデカール処理にせず、立体的なモールド表現を選んだのでしょう。
ちょっと見ただけでは気づかないこだわりです。
今度作るときには絶対、綺麗な真鍮色で塗ってみたいものです。


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マックスというメーカーは1980年代を待たずして消滅。
その金型はトミーに受け継がれました。
その後はイタラエレイ(イタレリ)に移りましたが、その際イタレリは「作り易さ」を考慮して金型を改修しています。
イタレリ改修版はその後テスターやズベズダからも発売されており、今でも手に入れることが出来ます。
しかし、今までに紹介してきた「実車と同じ構造のタイヤ取りつけ部分」や「可動式ガンレール」また3体のフィギュアなども省略されています。
特にイタレリ版では、マックス版に付属していたモールドの素晴らしい「展開状態のホロ」などもなくなってしまい、ズベズダでは新しくホロの部品を追加して販売していますが、その品質はマックス版には及びません。

現在も手に入るイタレリやズベズダ版はかなり作りやすくなっているので手軽に楽しむことが出来ますが、
少年時代、苦労しながらも何とか頑張ってマックス版を作れた経験が出来て幸せだった……と思っています。


マックス模型(日本)1/35 ダッジ3/4トンWC56/57 コマンドカー (1974年初版) [AFVモデル]

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MAX1/35 DODGE 3/4ton WC56/57 COMMAND AND RECONNAISSANCE VEHICLE

たびたびご紹介しているように、マックスは1970年代前半当時からマニアックな車両のキットを発売することで知られておりましたが、そんな中でもマックスの人気商品となっていたのが、このダッジトラックのシリーズです。

第二次大戦中“スリークォーター”と呼ばれ米軍の代表的な3/4トントラックとなった車体で、戦後も軍民両方で長く、そして幅広く使われ、映画にもよく登場するのでご存じの方も多いかと思います。
ジープのような恰好をしていながら、実際にはアメリカのフルサイズの乗用車と投影面積がほぼ同じくらいという、デカくて迫力のあるトラックです。

マックスからは、
「3/4トンWC51/52ウェポンキャリア・ビープ」
「WC56/57 コマンドカー」
「37ミリ砲搭載型トラックM6」
「1.1/2トンWC62/63パーソナルキャリア」
……が発売され、どれも高荷義之画伯の素晴らしい箱絵が魅力でした。

後にマックスの金型を受け継いだトミーからも引き続き野戦救急車型「WC54アンビュランス」がリリースされ、マックス由来ダッジシリーズのラストを飾りました。

このうちWC51/52ウェポンキャリア・ビープに関しては僕のサイト・バナナっ子クラブ(BANANA GUYs)で当時の想い出を紹介しておりますので……

http://www.tepproject.com/banana/contents/entrance/20030502.html

……こちらでは、シリーズの中でも人気の高かったWC56/57 コマンドカーの内容をご紹介しましょう!

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マックスのダッジ3/4トンWCシリーズは、小学生高学年から中学にかけて、いったいいくつ作ったかわかりません。
本当にお気に入りのキットでした。当時からしてタミヤに比べて作りにくかったのですが、それでも同社の大作「M3A1スカウトカー」などに比べればまだまだラクチンで、その無骨さ、カッコヨサに惹かれて繰り返し作ったものでした。


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何せマックスのキットには、組み立て説明書とは別に、ダッジの実車に関する非常に詳細な解説書まで入っていて、興味をかきたてられたのです。


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これはその解説書の一部。ダッジトラックのバリエーションがひとめで解ります。
この他にも、実車の写真などがふんだんに掲載されていました。
現在のキットに、こんな冊子が付いているでしょうか!?


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極めつけはコレ!
「こってみたい方のために……」と題して、ワイヤーロープの作り方、ライトガードのデイテールアップや効果的なタイヤのヨゴシ塗装の方法などが細かく解説されていました。
こんな楽しい組み立て説明書の付いたプラモデルが、日本で他にあったでしょうか!?


マックスのキットのお楽しみは、どんなオマケが入っているか?ということでもありました。
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このコマンドには、飲料水を運ぶためのタンクトレーラが付属していました。
もちろんそれが第二次大戦中にベンハー社が生産した1トン水槽車だということも、ちゃ~んと解説してあります。


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当時のタミヤ製品と比べてもモールドは甘いですが、楽しいフィギュアも付いていました。
ちょっとマンガチックなデブっちょの将校さんが付いているなんて、今のキットでは考えられない楽しさです。


このダッジも、マックス消滅後はトミーに移り、そしてイタレリへと譲渡されて金型が改修されました。
現在でもイタレリ版は手に入りますが、ダッジシリーズそれぞれにオマケに付いていたカーゴトレーラーや水槽車は別売となり、フィギュアは一切付属しなくなりました。
もちろん、楽しい実車解説や工作アイデア記事もなくなりました。
金型改修で作りやすくなったとはいえ、これらマックスのキットの本当の楽しさが失われた今、キットを見るたびに寂しく思われます。

あの当時……少年時代に、戦争映画のワンシーンを思い浮かべながら、マックスの解説書を読んで苦労しながらもキットを作った楽しさは、イタレリ版では味わえなくなってしまいましたが、良い思い出を残してくれたキットたちでした。




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―――― ところで、これらマックスの1/35軍用車両キットのプランニング、設計に、アニメーション作画監督の大塚康生 先生が参加されていたことは模型ファンの間ではよく知られています。


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僕は軍用車両模型愛好会「ホィールナッツ」に参加したご縁で大塚先生と親しくさせていただき、ことあるごとにアニメーションや模型のお話をいろいろうかがうことができたのですが、そんななか、いつか先生に詳しくお尋ねしたいと思っていた疑問がありました。

それは、先にも述べたマックスのダッジシリーズに付属していた実車解説書についてです。
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この解説書、明らかに大塚先生がお書きになったものだとわかるのですが、豊富に掲載された珍しい写真はいったいどうやって手に入れたのかが不思議だったのです。


2009年春。この疑問を解く機会に恵まれました。
「プラモデルの王国」の高見敬一郎氏とともに大塚先生のお宅にお邪魔することになったのです。

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この機を逃すまい!と、僕は大塚先生にダッジの実車解説書掲載の写真についてお尋ねしてみました。


答えは簡単で、写真は米軍オフィシャルのものをのぞき、あとはぜんぶ先生がご自身でお撮りになったものだったのです(笑)


例えばダッジトラックのキットの実車解説書に載せられた、このM37トラックの写真。
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このバンパーのマーキングは一体何なのか?と昔から不思議に思っていましたが、先生はあっけらかんと、

「これは昔、沖縄に行ったときに僕が撮った写真。道端に立っているだけでこんなトラックがひっきりなしに通るんだよね。このバンパーの“RY”で始まる文字は沖縄駐留部隊の“RYUKYU”……琉球なんだよ」

と、教えてくださいました。

琉球を表すペイントということも意外でしたが、この写真自体、先生がお撮りになったものだったとは!
また朝鮮戦争が終わって大量のダッジ・トラックがまるで前衛芸術のように積み重ねられている写真も、集積場で先生がお撮りになったものだそうです。
先生のライブラリーで、別アングルからの写真も見せていただきましたが、いやはやこれには驚きました。

こういった豊富な知識と経験、考察の蓄積があってこそ、当時あれだけマニアックで、そして後には長寿を誇ることになるキットがリリースできたのだなと痛感した一日でした。



シャープ(日本)  フロリダタッグ (1970年代中盤・スケール不詳) [艦船モデル]

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SHARP Tugboat “Florida”


今はなきシャープが発売していた「夏休みの友達」……タグボートの可愛らしいキットです。
※未確認ですが、1966年に三共が発売した「引船 タッグボート」の金型を受け継いでの再販かも知れません。

夏休みシーズンになると、模型屋さんはもちろんのこと、雑貨屋さんや文房具屋さんの店頭にも船の模型やオモチャが並ぶようになり、ひとつの風物のようになっていたのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
たいていの子供達は勇ましい軍艦やいかにも速そうなレース艇、モーターボートのプラモデルを買って作ってましたが、そんな中、いろいろと欲しいキットを探していて、まるで森で珍しい昆虫を見つけたかのような気分にさせてくれたのが、タグボートなどの「働くフネ」のキットだったように思います。

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シャープは「海の案内船タッグボートシリーズ」と題して、2隻のタグボートを発売していました。
華やかな南国風味のカラーリングが施され、爽やかな箱絵でまとめられた「フロリダ・タッグ」と、初代原子力空母“エンタープライズ”と思われる巨大な艦船を背景に勤務中の堅実な風情を持つ箱絵があしらわれた「オーシャン・タッグ」。
箱絵とシール(デカールではありません)そしてプラ成形色は両者で異なりますが、金型はまったく同一のものです。


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日本ではあまり馴染みがありませんが、海外ではこのタグボートのような港湾施設で逞しく働く船たちは人気があり、さまざまな模型や玩具も発売されています。
ファンクラブなども存在するようです。
もしかするとシャープは、輸出を念頭においてこのキットをリリースしたのかも知れませんネ。


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一体成形の船体は18センチほど。
手すりや煙突も細かく再現され、接岸時に使う緩衝材や舷側にぶら下げる古タイヤなどの部品も用意されています。

……日本ではタグボートの精密キットが最後に発売されたのは、80年代初めのイマイ製「シュミット・ネダーランド」あたりということになるでしょうか。
あのキットも、どちらかといえば輸出を前提にした海外の愛好者向けだったように思います。

日本でも、軍艦や豪華客船だけでなく、こうした「働き者」の船のキットにももっと注目が集まれば、模型趣味の世界も今以上に、そして飛躍的に豊かになるかも知れません。
そんなことを感じさせてくれる、愛らしいキットです。

緑商会(日本) 宇宙戦車スーパービートル (1968年初版) [SF・キャラクターモデル]

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MIDORI Sci-Fi Space Tank SUPER BEETLE


1960年代、日本の各プラモデルメーカーは自社オリジナルの企画で、まるで少年誌の空想科学読み物にでも
出てきそうなSFマシンのキットをいっぱい販売していました。
メーカーオリジナルのデザインで、楽しいギミックが付いてモーターライズ走行する……まさに日本の模型文化特有のジャンルでした。

このスーパービートルは、緑商会の社外のエンジニアの方からの「持ち込み企画」だった……と聞いた覚えがあります。
こんなデザインのマシンを夢想して、立体化する……まさにクラフトマンシップですね!

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かなり古い品で、もちろん僕自身は少年時代での原体験はありませんが、数年前の模型オフ会でこのキットの美しい完成品が実際に走る姿を見せていただき、ホントに一目惚れしてしまいました。



キットには、この架空のマシンの詳細なデータを表記したプレートも付属しています。

全長12メートル。全幅10メートル。全高9メートル。
重量190トン。馬力12000HP。登坂力40度。
発動機 宇宙用エンジン。使用燃料 無水アンモニア。 酸化剤液体酸素。
乗員・操縦員2名、戦闘員2名、医師1名搭載、ロボット操縦パトロール機
(以上、原文ママ)

なんとなくリアリティの漂う、楽しい設定です。


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四軸駆動。
それぞれに四つのタイヤが付いていて、オランダの風車のようにそれを回転させて不整地を走破。
コクピット上のレーダーと後部のミサイルランチャーも走行中に連動して旋回するという見事なギミックを内蔵しています。


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この当時のSF系プラモデルは、カッコイイ箱絵とは裏腹に、組み立ててみると「なんか随分と違うぞォ」という
ようなチープなものも多いですが(笑)
このスーパービートルは、ご覧のようにボデイ形状などが勇ましい箱絵と合致しており、少年の夢を崩すことが
ありません。
第二次大戦中のドイツ軍装甲車を思わせる多面体、傾斜装甲に包まれたボディとSFテイスト溢れるミサイルなどの特殊装備とのフュージョンが現代でも通じるデザインセンスのように思います。
1970年代に入ると日本のプラモデルは急速に「ミリタリー人気」が高まりますが、このドイツ軍装甲車風のデザインは1968年という発売時期を考えると、その「前哨戦」のようにも思えてきます。

しかも、丁寧に作ると各ギミックがキチンと作動して確実に走行する!
……これは、先に述べたオフ会で実際に目撃したので間違いありません。
非常に高品質なキットです。


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四つのタイヤがセットされる特異な形状の車軸と、ギヤボックス。
ウォームギヤ等の併用で、故障の少ないシンプルな構造にも関わらず複雑なギミック可動を実現させています。


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キットに含まれている緑商会のミニカタログ。
陸海空を走破するマーキュリーやエコーセブンなど、楽しいキットが満載です。


現在ではアニメキットに代表されるようにSF系キットは花盛りの状況ですが、メーカーオリジナルで展開されたSFトイモデルはなりをひそめ、わずかに「ゾイド」などにその片鱗が残っている程度になってしまいました。

日本の模型文化独自のライン、メーカーオリジナルSFメカ……また復活してほしいものです。


レベル(アメリカ)1/112? スパイ船 “ボルガ” (1970年初版) [艦船モデル]

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Revell Spy ship Volga


全長30センチほどの旧ソ連船籍漁船ボルガ号。

物好きもいいとこで、僕はこのプラモデルを今までに都合2個買っています。
何に惹かれたのか自分でもよくわかりませんが、何しろ中学生の頃、この箱絵を店頭で見たときのインパクトはかなりのものでした。漁船といいながら、何かしらミステリアスで、正体不明といった面白さがありました。

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そうです。この船は、北方での遠洋漁業に使われるトロール漁船を装いながらも、その正体は旧ソ連軍情報部に所属してスパイ活動を展開する「情報収集船」なんです!

今で言うならば「不審船」。
2009年に入ってアオシマが1/700スケールで「海上自衛隊 ミサイル艇 おおたか しらたか」のキットを発売。これにオマケとして小さな小さな「不審船」 が含まれますが(笑)
それでも世界広しといえど、不審船を正真正銘の主役に据えたプラモデルを発売したメーカーなんて、今のところレベルだけではないでしょうか。

ちなみにこのキット、2個買った……と書きましたが、もうひとつは88年頃にパカパカと組み立てて、当時仲間たちと撮っていた自主製作8ミリ特撮映画のミニチュアに使用しました。
自主映画『目覚めよと呼ぶ声あり』の湾岸コンビナート地帯のシーンです。
あの港には、スパイ船が係留されていたんですね(笑)

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社会情勢やその歴史に疎い僕には、こんな船が実在したのかどうか、わかりません。
しかしレベルの説明書には「米海軍の水中発射型巡航ミサイル“ポセイドン”の初の発射テストがこの漁船に妨害されている。射出されたミサイルの保護用耐水性素材の破片をロシア船が奪取しようとした」……といった趣旨の解説が掲載されています。


もういちど、箱絵をじっくり見てみましょう。

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ボックストップに踊る“SPY”の文字。
鉛のような海。
赤とオレンジを塗りたくったような空を乱舞する鳥影。
薄汚れた船体。
舷側に描かれた船員は少しうつむき加減で、ただの「影」としてしか描かれていない……ムード満点ではありませんか。


箱の側面には、キット内容の紹介として「2Russian Spy crew figures in fishermen 's slickers」の 一行が……。

どれだ? 
どれが「らっしゃんすぱい」ナノダ? とパーツをよく見ると……

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あーっ、いるし!
身長10ミリほどの「寒い国から来たスパイ」が二人、着ぶくれしたスタイルでランナーにチョコンとくっついています。

プラモデルは「歴史を写す鏡」でもあると思っています。
冷戦時代には、普通に暮らしている人々が知り得ない水面下での熾烈な戦いが展開されていたのでしょう。
そんなところにまで目を付けて面白いアイテムを発売するプラモデルメーカーのバイタリティーに、ただただ脱帽するばかりです。

ちなみにこのキット、現在では箱絵や組み立て説明書を変えて、ごく普通の漁船のプラモデルとして発売されています。
冷戦構造の崩壊した今、キットも「平和な船」に生まれ変わっているのですね。


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