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NBK(日本) 宇宙戦車エレクター5 (1967年) [SF・キャラクターモデル]

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NBK SPACE RR TANK ERECTOR-5

もはや日本の“伝統芸能”と言っても過言ではない模型メーカー・オリジナルデザインのSF系マシン模型華やかなりし1960年代、NBKが放った独創的な「宇宙空間で運用される特殊戦車」がエレクター5です。

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……僕自身はこのキットについての原体験はまったくありません。
存在すら知りませんでした。

2008年になって「黄金模型店」さんがクラシカルなプラモデルを紹介する豪華本を出版されることとなり、そのスピンオフ企画として様々な懐かしいキットをカタログ的に紹介するDVDの製作を依頼され、全体の構成、撮影、演出と特撮監督を務めさせていただきましたが、その撮影現場に協力してくださるプラモ・エンスージャストの方が持ち込んだ作品の中に、このエレクター5があり、初めてその全貌を知ることができました。

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子供の頃の思い出に残っているオモチャに通称「アクロバット戦車」というのがありました。
車体全周を囲むキャタピラによって、垂直面をよじ登る挙動を見せ、ひっくり返ると方向転換してまた走り出す……というものでした。
エレクター5は、このアクロバット戦車をよりSF的にアレンジして、また独創的なギミックを加えて魅力を倍増させた未来の車輌の模型という趣に仕上がっていました。

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正直なところ、箱絵を見る限りではさほど格好良いものとは思えなかったのですが、簡単なミニチュアセットの上で特撮イメージ映像を撮影したり、またその独特の動きを見せる映像を撮影しているうちに、野暮ったさの中にも「建機や農機に通じる特殊な機械としての魅力」を感じはじめ、いつかは自分も手に入れてみたいと思うようになっていました。
動きも面白く、見飽きない楽しさがありました。

DVDの映像から、その動きを追ってみましょう。
障害物にぶつかると、それをよじ登り、クルッとひっくり返ったにも関わらず運転席はきちんと前を向いており、何事も無かったかのように逆方向へ疾走していきます。

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最近になって、幸運なことにオークションに出品されていた物を入手できたので、ご紹介したいと思います。


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箱絵には、謎の惑星で活動中のエレクター5がダイナミックに描かれていますが、その絵柄を邪魔しないように、さりげなくも長い英文が書かれています。

JAPANESE SPACE TANK NOW ON ITS DUTY
According to the lastest report from the I.M.C(The Moon Inter Communication Base)Japan has sent a new space tank caiied “ERECTOR-5”to the α planet near the Mars.
It is said that the tank has a faculty of crawing over the rocky hills and valleys by its flexible trucks One of the most characteristic features of this type of tank is its turn-around mechanism which can change its course by turning the hull upside down on the vertical plane. A gloop of the Japanese expedition crew is now wading forward along the craters and making a great effort to search for both astronomic aspects and biological phenomena.(原文ママ)


英語の苦手な僕にはなかなか手強い文面でしたが、だいたいの感じを掴むとすれば……


現在、任務遂行中の日本のスペースタンク
I.M.C(月面コミュニケイション基地)からの最新のレポートによると、日本は「エレクター(建設者)-5」と呼ばれる新しいスペースタンクを火星の近くのα惑星に送り込みました。
タンクには岩盤を調査する科学者陣が乗り込み、またこのタイプのタンクの最も大きな特色のフレキシブルな無限軌道は、垂直面で車体をひっくり返すことによって転進できるターンアラウンドメカニズムです。
日本人の遠征クルーは今、クレーターに沿って前進し、天文学と生物学的現象を調査するため精力的に活動しています。


……といった感じでしょうか。

エレクター5の活躍を、ジャーナリストが報告したような文面になっており、興味をそそります。
これほど長い英文を箱絵にあしらったということは、もしかすると輸出もかなり前向きに考えていた製品なのかも知れませんネ。

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これと同時に組み立て説明書には日本語による「実車解説」と内部構造の説明図解が掲載されています。


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キャビン部分は、敢えて先鋭的なデザインにはせず、第二次大戦中にドイツ軍が使用した軽トラクタ“RSO”はたまた日本国内でもよく目にした古いタイプの小型トラックのような、比較的大人しいデザインにまとめられており、このあたりがナントモ独特のリアリティを醸し出しているように思います。



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このキャビン内には2名のクルーが乗るようになっていますが、大きさからしてだいたい1/32スケール程度ということでしょうか。
このキャビン自体、車体が障害物にぶつかって上下反転するとクルッと回ってクルーが逆さまになるのを防ぎ、車体が上下逆になっても通常通りに操縦できるという趣向になっています。



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車体部品をつぶさに観察すると、深海潜水艇のような丈夫そうなハッチや、昔の軍用車によく見られた装備のパイオニア・トゥール・ラック(工具収納架)のモールドが確認出来ます。
突拍子もないフォルムを持つこの車体に、少しでも説得力を持たせようという配慮でしょうか。こういった、ちょっと気の効いたモールドを眺めていると楽しい気分になってきます。


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デカールはさすがに経年変化で黄変しており、使えるかどうか難しいところですが、キャビン部分の風防を再現する透明部品や、車体各部を彩るメッキ部品はキズもなく輝きを失っておらず、これはぜひ美しさを生かして作ってみたいと思わせてくれます。


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キャタピラはこのころのプラモデルではお馴染みのゴム製。
表面のパターンにはまるで昔のドイツ軍戦車のようなゴツさが再現されています。
各種ホィール類のデザインはなかなかメカニカルで、SF映画に登場するマシンのような魅力があります。


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駆動系の部品と組み立て図。
そうとう、込み入っております!
モーターライズ機構に加えて懐かしい小型電球(ムギ球)による電飾も標準装備。
ミサイルも発射できます。

これは……当時の子供たちはちゃんと完成させることができたかなぁ!?

図そのものも細かく、やや老眼の気配が忍び寄ってきた僕の視力では解読がナカナカ難しく、実際に作る場合はルーペで図面を確認しながらの作業を強いられそうですが、慎重に組み立てないとミスを犯しそうな予感がします。



―――― このようなオリジナルSFタンクのプラモデルは、日本にどれだけ存在していたのでしょうか?

まだまだ魅力的なものがいっぱいあるようで、これからボチボチと見つけて、実際に作ってみるのが本当に楽しみです。

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