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アダムズ(アメリカ)1/40 ホーク ミサイル バッテリー (1958年初版) [AFVモデル]

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ADAMS 1/40 “HAWK” MISSILE BATTERY


“ホーク”は1950年代後半から開発が始まり1960年代より広く使われた地対空誘導弾で、陸上自衛隊・高射特科部隊でも改良を重ねながら使い続けられ、先の湾岸戦争でもニュース映像に登場した長寿でポピュラーなミサイルシステムです。
運営システム自体は模型化した場合の見栄えがいいし、また新鋭兵器としてマスコミで採り上げられたためか、一時は各社から製品化されていました。

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興味深いのは、1958年にアダムズとレベルが個別に1/40キットを発売して、同じスケールで同じアイテムが2社によってバッティングしてしまいましたが、様々な資料で時系列を検証してみると、この当時すなわち1950年代末にはホークミサイルはまだ運用試験段階であり、実際に部隊配備されたのは1960年代になってからとのことで、アダムズやレベルが「西側期待の新鋭兵器」としてずいぶん早々とホークミサイルの製品化に取り組んだことがわかります。


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アダムズのキットはすぐにスナップに受け継がれ、1970年代初期までライフライクからも販売されていましたが、それとは別に日本国内ではクラウンモデルなど数社がこれらアダムズ由来の1/40キットの模倣品を販売しており、ベテランモデラーの中には見かけたことのある方も多いかと思います。


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クラウンからはアダムズ製(スナップのブランドで日本に輸入されていました)のジープ、ホークミサイル、M20装甲車、120ミリ高射砲などが模倣され、後には売れ行きを考えたのか一部の製品が1/35スケール表示になって店頭に並んでいた時期もありました。

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僕も中学生の頃、老舗の模型屋さんでクラウンのホークとM20装甲車を見つけて「こんなキットがあったのか!」と驚き、価格も確か300円かそこらだったので喜んで買って帰ったものの、M20を手許にあったタミヤ1/35の旧モーターライズ版M8グレイハウンド装甲車と比べると車体などの主要部品が一回り以上小さく、実寸は1/35ではないことに気づいてひどくガッカリした経験があります(笑)

……このクラウンのキットとの出会い、そして1970年代~80年代初期にかけて専門誌で紹介されていた大塚康生 先生の模型コレクション紹介記事によって往年の1/40スケールミリタリー輸入キットに注目し始め、オリジナル版のホークミサイルやM20装甲車、オネストジョンが欲しいと思うようになり、僕は骨董品キット探しの長い旅に発ったのでした(笑)


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参考までに、アダムズ製品現役の頃、組み立て説明書に掲載されていたカタログもご紹介しておきましょう。
これらの多くが様々な後発キットの手本となったり模倣されたりしている、ミリタリーモデル界のご先祖様的ラインナップです。



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アダムズのキットはミサイル本体とミサイルランチャーの他に、ミサイル運搬・装填用のクローラ式ローダーXM-501とレーダー・コンポーネンツ、整備員のフィギュアまで付属した豪華版で、このキットをひとつ買ってくるだけで米陸軍対空ミサイル部隊の攻撃準備状況が机上に再現出来ます。
後には各社から様々な戦場のシチュエイションを再現した「ジオラマセット」キットが発売されましたが、このホークミサイルバッテリーはベース(地面)部品こそ含まれていないものの、ジオラマ系製品の走りとも言えるのではないかと思います。

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小型で愛らしいXM-501は老舗FMC社の製品で、ジープ史上最高の名車と名高いウィリスMD(M38A1)“ブルドッグ”ジープのパワートレインが使われているそうです。
キットではこの小さな車体を丁寧に再現しており、楽しくなります。

ちなみにクローラ式車体に勇ましいミサイルを3本も背負った姿から、この車体から直接ミサイルを発射する……つまりXM-501は攻撃用の車両だと勘違いした人も多く、恐らく模倣品を発売したクラウンもそう思い込んでいたのではないかと推測されます。
実際には先にも述べたように、ミサイル発射装置(ランチャー)まで予備のミサイルを運搬し、装填するための支援機材です。

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お馴染みの一体成形ながらポージングやモールドが秀逸なフィギュアたち。
少しリラックスした雰囲気でホークミサイルシステムの設営に携わっている人々の姿が活写されています。




―――― ところで、ライフライク版特有のあっさりした味付けのパッケージをシケシゲとながめていると……思わぬものを発見してしまいました。


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絵の片隅に小さく「亜樹」という文字が読めます。

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これは、どう見ても東洋人の名前ではナカローカ? 
しかも響きが日本人名に思えます。
ライフライクのパッケージアーティストは日本人だったのでしょうか? 
タッチや色使いが同社のロングトムなどとは似通っていますが、M40自走砲やオネストジョン、L.V.T(A)5は明らかに別人のタッチです。
何人かのイラストレーターが分担して手がけていたのでしょうが、後になって同社のカーモデル(パイロ社製1/32を受け継いだもの)のパッケージにも「亜樹」の署名を発見することが出来ました。
亜樹サン、ライフライクの秘蔵っ子だったのかな?

……こんなことをあれこれと推理するのも、古いキットの楽しみ方のひとつではないでしょうか。

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アダムズ(アメリカ)1/40 M40 自走155ミリ加農砲 (1957年初版) [AFVモデル]

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ADAMS1/40 M40 155mm SELF-PROPELLED GUN


第二次大戦末期のヨーロッパ戦線に登場して後の朝鮮戦争でも活躍した自走155ミリ砲M40の精密キットです。
終戦間際に登場したこと、HVSS(水平ボリュートスプリング式サスペンション)を装備していること、またビジョンブロック付きキューポラなど後期型のシャーマン戦車に採用された特徴的な部品が使われていることなどから、シャーマン戦車の最終形態であるM4A3E8イージーエイトをベースに開発された自走砲だと思われがちですが、実際にはコンチネンタルエンジン搭載のM4シャーマンをベースに車格を拡張して造られた信頼性の高い自走砲で「第二次大戦中に開発されたものの中では最良の自走カノン砲だった」とする資料もあります。


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1950年代後半に登場したアダムズの1/40ミリタリーモデルはすぐにスナップ社へと受け継がれ、日本では1960年代にマルサン商会が輸入して「マルサンスナップ」の商標でお馴染みだったようです。
1970年代初頭まではライフライク社が金型を受け継いで販売していましたが、現在ではさすがに見かけなくなりました(それぞれSNAP1/40 LIFELIKE1/40とメーカー表記されています)。

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アダムズ由来の1/40ミリタリーモデルには、どれも印象的なニックネームが付けられていて、ときにはそれが商品名になっていることもありましたが、このM40自走砲には155ミリ砲の壮大な攻撃力に似合わない“CHOO CHOO BABY(汽車ポッポあかちゃん)”という可愛らしいニックネームが与えられています(スラングでは別の意味合いもありそうですが、ここでは触れません)。


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このキットも50余年前の骨董品で、登場時期が早かったことと品質が高かったこともあり国内外の各模型メーカーから手本とされたり模倣されたりしました。

M40自走砲というと日本では“BIG SHOT(ビッグショット)”という名前でお馴染みですが、実車のM40には特定のコードネームはありません。
これはタミヤが1963年に発売した1/21スケールのデラックスキットの商品名が「ビッグショット」だったからで、恐らくタミヤもこの1/21キット発売に関してはアダムズ1/40キットを先発の高品質キットとして参考にしたこともあったのではないかと思いますが、その後に登場した各社のキットは今度はタミヤ1/21を模倣することが多く、商品名にも堂々とタミヤと同じ「ビッグショット」を使っています。
21世紀に入って台湾のAFVクラブがようやくM40の1/35キットを発売しましたが、これまたタミヤ製品へのオマージュでしょうか、ビッグショットという商品名がわざわざ付けられています。

たしかにビッグショットとは強力な巨砲を搭載する無骨な自走砲にうってつけの商品名ですが、これは大戦中にM40自走砲の生産メーカーだったプレッシド・スティール・カー社の敷地内にあるテスト場で撮られたと思われる試作型T83の記録写真を参考にしたからでしょう。
写真に写っているテスト用車両には“BIG SHOT”という固有のニックネームが大きく書き込まれていました。

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1960年代~1970年代にかけてはタミヤ1/21、ロコHO(1/87)、マッチボックス1/76、そしてタミヤのビッグショット経由でミツワ1/48などなど……様々なプラモデルや玩具、ミニカーに影響を与えたと思われるアダムズのM40ですが、第二次大戦末期から朝鮮戦争にかけて実戦に参加したという実車の経歴、そしてそのマッシブなスタイルなど非常に魅力的なアイテムであるにも関わらず、1980年代以降は現代的設計センスで作られたスタンダードスケールのキットが発売されなかったのが驚きです。AFVクラブのキットが登場するまで、実に30年以上の空白期間があります。

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アダムズのキットは総じて、全体的に緻密で彫りの深いモールドがなされており、組み立てている最中も仕上げの塗装でどんな調子になるかがとても楽しみになります。
このM40では各種車外装備品の綺麗な再現の他、オイル注入口キャップには極小の鎖までモールドされている凝りようです。
またシャーマン戦車とそのバリエイションモデルを模型化する場合、昔のキットではモーターライズ仕様が一般的だったためシャーマンの特徴的な部位のひとつであるフロントデファレンシャルカバーの形状が内蔵するギヤボックスの影響で実車と異なるブサイクな形になってしまうことが多かったのですが、アダムズのM40は完全ディスプレイキットとして設計されているのでフロントデファレンシャルカバーは実車と同じ形状をきちんと再現しており、たいへん好感が持てます。

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巨大な155ミリ砲を支えるガンマウント下部は完成するとあまり見えませんが、それでも少し傾斜を持たせてセッティングされている本車の特徴がきちんと表現されています。


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米軍機械化砲兵のフィギュアたち。
生き生きした動きが表現され、それぞれのキャラクターづけまでなされているように見えて楽しくなってきます。


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組み立て説明書の実車解説に添えられたイラスト。
ヨーロッパ戦線に始めてM40が出現した際に参加した“コローネの戦い”の様子を再現しているようですが、実物の写真や資料が手に入りにくかった当時、こういったイラストはディオラマ作りのための良いアイデアソースとなったのではないでしょうか。

1/40というと現在では馴染みの薄いスケールに思えますが、あまりトレンドにこだわらずにそれぞれのスケールレンジで楽しむのもオツなもののように思います。
アダムズ・スナップ、そしてレベルなどの1/40モデルを揃えれば、それだけでもかなり豊かな世界観が展開できるので、いつかは現代の製品群とはひと味違ったラインナップをズラリと作り揃えて楽しんでみたいものです。

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レンウォール(アメリカ)1/32 M47 ジェネラルパットンII 中戦車 (1958年頃) [AFVモデル]

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Renwal 1/32 M47 GENERAL PATTON II


1951年よりアメリカ陸軍主力戦車として配備されたM47パットンIIですが、海外に輸出されて内戦や紛争で使われたものは別として、本家本元の米軍所属車両としては大きな戦闘を経験しないままわずか5年半程度で退役したため、かなり地味な存在となっているようです。

ところがこれが映画の世界となると話は別で、各国に輸出されていたからハリウッド映画の撮影班が海外のロケ先で容易に手配出来る信頼性の高い劇用車だったらしく『バルジ大作戦』『パットン大戦車軍団』『アルデンヌの戦い』『アンツィオ大作戦』など様々な映画で第二次大戦中の米・独 両軍戦車を演じており、スクリーン上ではM24チャフィ軽戦車などと並んでマサに売れっ子役者でした。

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そういった幾多の映画の影響があったのかなかったのか、それとも単に外国製高級キットを模倣したかっただけなのか、1960年代の国産プラモデル界ではパットン戦車が大人気で、このレンウォールの大作キットも日本国内の様々なメーカーから手本とされ、似たようなキットが市場に溢れていたようです。
なかには箱絵ごと模倣してしまった物や、モーターライズ、リモコン仕様にしてしまった物もあったようです。
なにせ“高級舶来品”であるレンウォール製品はヘタをすると当時の大学出の初任給ほどの価格で売られることもあったらしく、国内メーカー製の廉価版は喜ばれたのかも知れません。


実車のM47パットンIIについては個人的な思い出もあります。
若い頃に在籍していた映像専修学校の学部がS県内にあったのですが、その近くに大手ミリタリーショップ店主さんの所有する大きな倉庫があり、その敷地内にこのM47がデン!と置かれていて、何度か見物に行ったことがあります。
旧防衛庁が1960年代に国産戦車“ST”(後の61式戦車)開発にあたって参考資材として導入し、後に廃棄処分したスクラップを回収して、外見だけ復元したものです。
背丈があるからか、自衛隊基地祭で見物したことのある国産の74式戦車より遙かに大きく感じられ、まるで鉄でできた巨人がアグラをかいて座っているようで、たいへん強そうに見えたのを覚えています。
古い米軍戦車など見る機会も少ないので興味津々、車体はもちろんフェンダーも何もかも異様に頑丈そうだったから、ゲンコでガンガン叩いてみたら持ち主の方にすごくイヤな顔をされたのもハッキリ覚えています(笑)


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僕がこのキットを初めて目にしたのは1980年代に入った頃でした。
当時はレベルのブランドで売られていて、完成品見本写真パッケージとなっていたので箱を見ただけでだいたいの内容が理解できたのですが、どう考えても新製品とは思えないレトロな風合いだったため、これは絶対に古いキットの再販だ!と思い、多少値は張りましたが恐る恐る買って帰りました。
内容を検討して、これは1950年代のレンウォール製品だろうと見当を付けたのはしばらく経ってからのことでした。


この時代のレンウォール製品を手に取ると、僕の頭の中には「教材」という言葉が浮かびます。

下はよくレンウォールのキットに入っていたミニカタログですが……
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後に日本国内のメーカーからも手本にされた透明の人体や動物の模型などなど……。
どの製品も、現代的な感覚においての「プラモデル」というよりは、作って楽しめる「教材」というテイストが強いように思います。
それと同じ香りを、僕はレンウォールのミリタリーモデルの分野でも感じ取ってしまいます。

実は僕は本家サイト“BANANA GUYs”のコンテンツでも同じ事を書いているのですが、このパットン戦車のプラモデルは、子供から「パパ、戦車ってどういうものなの?」と尋ねられたお父さんが休日に買ってきて、お話をしながら子供と一緒に作る……もしかするとお父さんは在郷軍人かも知れないし退役軍人かも知れない。予備役かも知れない。そういう立場で、自分の職場でよく目にしていた“道具”を、模型作りによって子供に説明する……そんな類の製品なのではないかと思ったりするのです。



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溢れんばかりの重量感!
戦車の「重さ」まで表現したような力強いデッサンで仕上げられています。
やはり実戦で使用されて武勲をたてたとか、ドラマチックなエピソードを持っていない車体なので、模型メーカーは1960年代も後半に入るとM47に対して途端に冷淡になります。
精密なスケールモデルとしての鑑賞に耐えるM47のキットの出現は1970年代後半に入ってイタラエレイ(現イタレリ)が自国イタリアの陸軍で使われていた車体を綿密に取材して1/35で模型化するまで待たねばなりませんでしたが、前時代的なしつらえとはいえレンウォールのキットも模型的な魅力に溢れています。


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実車のサスペンションは所謂トーションバー方式ですが、このキットはホィール2つを一組にしたシーソー式でカチャカチャと可動するようになっていて、完成してみるといかにもトーションバーで動いているように見えるという楽しいギミックが付いています。
キャタピラは現在のキットに見られるポリ製のものよりやや硬い材質で、少々扱いが厄介です。


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これは後のイタラエレイ1/35キットにも影響を与えたのではないかと思われるエンジン部分。
コンチネンタル製ツインターボV型12気筒空冷ガソリンエンジンの上面部分が一枚の大きな部品に彫り込まれており、小型ハッチをいくつも手動で開閉させて覗き見ることができます。


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このキット最大のチャームポイント。
砲身をゆっくり押し下げると、砲塔上の2つのハッチが開いて、ちょっとコミカルな造作の戦車隊員がヒョッコリ顔を出すオモチャ的なギミックが仕込まれています。
実際に作ってみるとたいへん微笑ましく、子供が見ると大喜びしそうです。
キットにはこれ以外に3体のフィギュアが含まれています。



―――― 20年ほど前に作った際の写真が残っていました。ご笑覧ください。


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いやぁ失敗しました!
このキット、そのまま作ると、どうも見覚えのないヘッドライトの形状になってしまうので、金属材でライトガードを自作するなどして、よく実車写真で見かける型式のものに改造してしまったのですが、よくよく考えるとレンウォールはM47の中でも極めて初期の型を取材して模型化したのではないかと思うのです。
余計な小細工などせず、キットのままの仕様で作るべきでした。

こうして一個作ってもまったく飽きない楽しいキットですから、またいつかもう一個手がけて……そのときはキット内容に忠実に仕上げてみようと思っています。


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レンウォール(アメリカ)1/32 75ミリ自動高射砲スカイスイーパー (1957年頃) [AFVモデル]

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Renwal 1/32 75mm Anti-Aircraft Gun M51 SKYSWEEPER

M51スカイスイーパーは1950年代中盤、ソ連空軍が米本土にいつ飛来するかわからないといった危機感の中で生まれた、いわば冷戦緊迫化時代の申し子とでも言える対空火器で、飛躍的に高速化した敵爆撃機を電子計算機とレーダー、高射砲弾速射機能を連動させて撃ち落とそうという極初期の弾道精密計算型防空システムです。
1950年代、レンウォールはこのような冷戦下における「西側の花形マシン」を次々に模型化しており、このスカイスイーパーの箱にも「我々の都市上空を守り抜く……」といった勇ましいキャッチフレーズが誇らしげにあしらわれていて、嗚呼そういうコワイ時代だったのだ……と、ナニヤラ納得してしまいます。


レンウォールの1/32ミリタリーモデルは1970年代初期に同社の消滅後に金型がレベルに引き取られたらしく、1980年代以降にはレベル「ヒストリーメイカーシリーズ」に含まれたり、また単発で再版され、一時はレベル傘下に入ったマッチボックスのブランドからも販売されたアイテムもありましたが、どうしたわけかこのスカイスイーパーとラクロスミサイルキャリアなど数点はレベルから再販されることがなく、稀少品となってしまいました。
21世紀に入ってからもレベルは温存しているレンウォールの金型を使って時折限定復刻を行っているようで、レンウォール初版の箱絵まで復刻させた品も存在しますが、スカイスィーパーは一向に姿を現しません。
金型の破損などで“幻のキット”になってしまったのでしょうか??

下はレンウォール製品に付属していたミニカタログ記載の当時のラインナップです。

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このスカイスイーパーをはじめとして、8インチ自走榴弾砲、ナイキやホークのミサイル群、5トンレッカー車など、現在に於いても他社からビッグスケールで発売されていない珍しいアイテムが多く含まれていることがわかります。
280ミリ原子砲“アトミック・アーニー”など、今後も模型化するメーカーは出てこないのではないでしょうか。


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スカイスイーパーの開発にあたっては、第二次大戦型の設計を持つ75ミリ高射砲を基にしながらも最新鋭の高射砲を造ろうということで、当時の一流重機械工業や精密機器工業が総出に近いかたちで駆り出されており、その開発チームにはスペリージャイロスコープ社、A.C.スパーク社、GM、アメリカンマシンアンドファンダリーなどなど、当時の先端を行く錚々たる企業名が並んでいます。
このキットでもそういった先進性をアピールするべく「電算機」のコントロールパネルのハッチが開いて中が見えたりスコープが起倒式になっていたりと、当時の未来的メカニズムを演出するギミックが備えられています。


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操作要員のフィギュアもセットされています。
実はレンウォールは総じてフィギュアの造型が弱く、せっかくボリューム感のあるミリタリーマシンのキットであっても付属のフィギュアを使ってしまうと何ともチープな仕上がりになってしまう危険性があり、このあたりの造形力、企画力はレンウォールと同時期の1950年代からフィギュア付きの各種ミリタリーモデルを豊富にリリースしていたアダムズ・スナップやレベルの1/40、そしてモノグラム1/35などと比べると、いささか見劣りしてしまいます。
そんな中でもこのキット付属のフィギュアはレンウォール製としてはかなり「上の部」に入る仕上がりで、頑張ってヒケ部分を埋めて服のシワのモールドを彫り込んだり、ヘッド部分を出来の良いエアフィックス1/32フィギュアの部品と交換したりすれば、もしかしたらなんとかなるんじゃないかなぁ……と思わせるものがあります。

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地味な存在ながら、移動姿勢と射撃姿勢の両方が完全再現出来るオール可動キットです。
タミヤ往年の名作 1/21スケール「155ミリ砲M2ロングトム」が1963年に、そしてMMシリーズの88ミリ砲が1972年に登場するまでは、恐らく世界的に見ても火砲モデルの最高峰のひとつだったのではないかと思えるほどのデラックスモデルです。
ここまでの火砲キットをリリースしておきながら、レンウォールはなぜ牽引する車両のほうまで作らなかったのかが不思議です。



―――― 今となっては稀少なキットではありますが、部品段階でもある程度は完成品の姿が予想できる各種車両のキットとは違い、火砲のキットというのはなかなかミステリアスで、なんとか完成品を見てみたいという衝動に駆られてしまい5年ほど前に一個作ってみました。
最近では珍しい、けっこう真面目なスカイスイーパーの完成品写真です。ご笑覧ください。


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しかし……これがまたエラク建て付けの悪いキットでした(笑)
何せ50余年も昔のキットだから仕方ないのですが「面が出ない」というのでしょうか、現在のキットと違って箱組みの部品の接着部分が表面に露出してしまうので、それを他のモールドを消さないように注意しつつ整形し、きちんと直角を出して複雑な火器ならではのシャープさを演出するのが少々厄介なキットでした。
ただ、丁寧な作業を心がければそれに応えてくれるキットでもありました。
あまり飛躍した工作はせず、キット内容を尊重しつつ各部にそれらしいディテールを加えたり、注意書きのデカールを他から流用して貼り込んで、雰囲気アップに挑戦しています。
当初は陸自仕様で作ろうとしていましたが、レンウォールのスカイスイーパーに付属しているデカールの米軍高射砲部隊のマーキング「ホウキで敵機を払い落とす魔女」がイタク気に入ってしまい、1950年代からの貴重なデカールでもあるし、これを使用することにして必然的に米軍仕様となってしまいました。
昔は自衛隊のパレードなどでもお馴染みのメカでしたから、このキットを入手して実際に組み立てた方の多くはマーキングを工夫して陸自仕様にしたのではないかと思います。


ちなみにこのスカイスイーパーとベストカップルといえば、やはりコレでしょう。
農機や各種トラクタの名門アリスチャルマース社が開発したM8A1砲兵用トラクタです。
牽引状態で写真を撮ってみました。
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別項で牽引している日東科学製M8A1トラクタも採り上げています。
是非ご覧ください。
http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

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タミヤ(日本)1/35 フランス陸軍32トン中戦車 A.M.X.30ナポレオン (1966年初版) [AFVモデル]

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TAMIYA1/35 French A.M.X.30 Napoleon


“ナポレオン”というのは“ロンメル”や“シャイアン”と同じくタミヤ独自の製品名で、実車に固有のコードネームはありません。
現在でこそ1/35戦車プラモといえば第二次大戦中のドイツ軍ものが大人気ですが、1960年代後半のプラモデル・シーンはまだまだそんな状況にはなく、面白いもの、カッコイイものなら何でもキット化してみよう!という気概があったようです。


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このA.M.X.30もけっこう人気のある戦車だったらしく、1/35スケールでは同じ頃に日模も「A.M.X.30フランス」という製品名で発売していますし、デッカイ金属製61式戦車(STA-4)などで有名だったアイハラも1/35でA.M.X.30を出していたようです。
画像は上がタミヤ、左がクラウンモデルの輸出版(米国A.H.M社扱い)右がニチモの「フランス」です。

ヨーロッパから遠く離れた日本のプラモデルメーカーで相次いで発売されたA.M.X.30ですが、フランス本国の老舗プラモデルメーカー、エレールから発売されたのが一番遅くてタミヤのキットとは10年以上の開きがあります。
でも、この“ナポレオン”が懐かしいというベテランさんも多いのではないでしょうか。



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僕の世代では、田舎に住んでいたこともあって中学生くらいまで田宮の古いキット……モーターライズのM8グレイハウンドやT-10スターリン戦車などの売れ残りを買うことが出来ましたが、ナポレオン戦車は模型屋さんのショーウィンドに飾ってある完成品を眺めたことがある程度でした。
当時まだまだ手に入った田宮の古いキットの組み立て説明書に掲載されているミニカタログには、時折このナポレオン戦車が掲載されていることもあり、いつかは自分で作ってみたいと思ったものです。



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なかなか豪華なパッケージです。
箱の折り込み部分にもカラフルな印刷で様々な解説、キットの仕様、カタログが載せられています。


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これが「クィック配線」仕様のシャシー。
製品の段階で電池ボックスの接点が組み立て済みでユーザーの負担を軽減しています。


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懐かしいゴムキャタピラと金属製ギヤボックス。
実際に組み立ててみると、作り手の微調整の仕方にもよるのでしょうが、ことのほか静かで心地よい走行音を発しながら滑るように走ります。


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昔のキットではお馴染み……赤外線サーチライトには半透明、赤いプラスチック板が部品としてセットされています。
赤外線となれば「とりあえず赤にしとこう」ということで、こういう部品を付けてしまうというのは、やはり「コタツ」が一般家庭どこにでもあるという風土を持つ日本ならではの発想、文化ではないでしょうか。
主砲防盾のダストカバーには、薄い布を実際に貼り付けて再現するように、寸法どおりに切り出した布の部品が付いてます。
今風に言えばマルチマテリアルキットといったところでしょうか。


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A.M.X.30は実車が登場したとき、その筋のジャーナリストから「いかにもフランス的な流麗なスタイル」と評されたそうですが、タミヤのナポレオンは当時の金型技術で、この複雑で美しい三次曲面を一所懸命に再現しようとしています。
こうして見ると、確かに綺麗です。
当時のキットですから、寸法云々……など、そのような細かい検証は避けますが、それでもかなり印象の良い内容です。
このキット、他の後発タミヤ戦車プラモデルと比べて内容が古いためか一度も再販されておらず、完全に消滅してしまっております。まったく残念!


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せっかくですからニチモ1/35「フランス」と比較してみました。
砲塔のデッサンなどに似た部分はありますが、恐らく実車の資料も少なかったであろう設計条件のなか、両社で独自の解釈をおこなっており興味深いものがあります。こうした同じアイテムでもメーカーによるアレンジの違いというのは大切にして、塗装バリエーションで作り比べてみたくなります。



―――― この時代の戦車プラモデルは、あまり細かいディテールアップなどはせずにキットの素性を生かして作ってみたくなります。
とくにこのナポレオンは流麗なフォルムが評判でしたから、その立体造形物としての魅力を味わいたいと思い、一個作ってみることにしました。


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基本的にはストレート組みです。
デカールはさすがに劣化していて使用不能だったので、フォトショップでそれらしい図柄で自作したものや他キットからの流用品を使ってみました。



さて、世にも珍しいツーショットをご覧ください!
お友達のT.M.さんからエレール製1/35キットを丁寧にストレート組みした完成品をお借りして記念撮影してみました。
日本の老舗の手による古典キットとフランス本国メーカー品とのコラボレーションです!

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T.M.さんの素晴らしい模型博物館サイト「T.M.FACTORY」はこちら!
http://park.geocities.jp/tmfc2007/
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モノグラム(アメリカ)1/35 パーソナルキャリアM3A1 (1958年初版) [AFVモデル]

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MONOGRAM 1/35 PERSONALCARRIER M3A1 HALF TRACK

半分トラック、半分戦車のような特異な形態を持つ「ハーフトラック」という車種は、装輪車(タイヤ走行式車両)の高性能化、装軌車両(キャタピラ走行式車両)の信頼性向上にともなって1940年代を最後に消えていった車種ですが、第二次大戦中には米・独両国がそれぞれ独自に開発したハーフトラックを装甲兵員輸送車として大量に使用しており、部隊の花形でもありました。

モノグラムはパーソナルキャリア(兵員輸送車)とMGMC(マルチプルガンモーターキャリッジ・自走多連装対空機関銃)の2種類のハーフトラックを発売しましたが、1958年という初版登場時期を考えると恐らく世界最古のハーフトラックの本格的組み立てキットだったのではないかと思います。
1950年代にはレベルとスナップが1/40スケールで、レンウォールが1/32であれほど豊富に米軍車両キットを発売したにも関わらずハーフトラックには手を付けませんでしたし、他社からも競合スケールでは発売されなかったので、タミヤがMMシリーズとして1975年に精密なキットをリリースするまでは唯一のハーフトラックの本格的1/35ディスプレイキットでした。
その後何度もパッケージを変えて再版されているので、手にしたことのある方も多いかと思います。
極初期のタミヤ「パチッ特集号」にも、このキットを使ったプラモデル情景写真がときおり登場しています。

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このキット、一応M3A1ハーフトラックという製品名にはなっていますが、現代の目で見ると随分と変わった車種だということがわかります。
組み立て説明書表紙の完成品見本で、このキットの独特のスタイルが確認できます。

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まずフェンダー。米軍が多用したオートカーまたはホワイト、ダイヤモンドTの各社が製造したM3A1ハーフトラックがクラシックカーを思わせる三次曲面彎曲型のフェンダーを持つのに対して、このキットは英連邦軍で多用されたインターナショナルハーベスター製M5A1またはM9A1ハーフトラックと同じ平面彎曲型のフェンダーを持っています。
ところが車体のサイドパネルとリアパネルの接合部がM5A1またはM9A1では曲面仕上げなのに対して、キットではM3A1と同じ直角仕上げで表現されています。
またヘッドライトガードが戦後にイスラエル軍が中古車両を補修して仕上げたような不思議な形状になっています。
車内も、運転席と兵員室がバルクヘッドで仕切られるなど、どの量産型にも見られない特徴を持っています。

下は米軍が第二次大戦中に作成した実車のT.M(テクニカルマニュアル・取扱説明書)記載の実車記録写真です。

米軍に大量配備されたM3A1ハーフトラック
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英連邦軍に多数貸与されたM5A1ハーフトラック
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……いったい何故このような「架空の車種」ともいえるハーフトラックを模型化したのか、今となっては理由がわかりませんが、もしかすると米軍から放出されたM3A1ハーフトラックとM5A1ハーフトラックのT.Mをキット開発の参考資料とした際に誤って両車の特徴が混濁してしまい、不明な部分は想像で造型してしまったのか、あるいは戦後よく見られた「手に入る部品をあれこれ組み合わせてデッチ上げてしまった」ような、考証的に誤りのある復元車両の取材を基に模型化してしまったのかも知れません。
いずれにせよ、たいへんミステリアスな車体です。




―――― モノグラムのハーフトラックとは、実に変則的な出会いをしてしまったのが思い出として残っています。

高校2年の頃、老舗の模型店で売れ残ってホコリを被っていた日東科学製の「バトル」というプラモデルを発見しました。

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クラシカルなタッチの箱絵が気になって内容を確認してみると、なんとモーターライズで走行するハーフトラックのキットでした。
しかも、箱にはまったくスケール表示がないものの部品の大きさに馴染みがあります。
これは……と思い立って模型店の棚に積まれていたタミヤ1/35のM3A2ハーフトラックを持ってきてバトルと比べてみると、なんとまぁほとんどタミヤのキットの部品と同じ大きさ、つまり1/35なわけです。

モーターライズで走る1/35のハーフトラック!これは面白い!……ということで買って帰り、高校の文化祭に出品するために撮っていた8ミリ特撮映画の撮影用ミニチュアとして使いました。
ボール紙で作った街並みの中をタミヤ1/35の61式戦車と一緒に元気に走ってくれたのをよく覚えています。


その翌年、今度は輸入品を扱っている模型店に顔を出して、モノグラムのハーフトラックを見つけました。
当時は完成品写真をパッケージに使った版が売られていたので、輸入品特有のシュリンクパックになっていても内容がすぐに理解できたのですが、つい1年前に作った日東科学のバトルとそっくりのスタイルにびっくり仰天しました。

ここでようやく、日東科学は古いモノグラムのハーフトラックを模倣してモーターライズ化したものを製品化したのだということに気づいたのでした。



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21世紀の現代では、ベテランの域に達したタミヤのキットに加えてドラゴンモデルズも1/35で米軍ハーフトラック各種をリリースしており、需要は満たされた感はありますが、そういった精密な現代的センスのキットが出揃った今になってモノグラムのキットを手に取るというのも温故知新的な面白さがあります。

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再販が繰り返し行われたといっても、最終版ですらかなり昔のことになってしまうので、どの版のキットを買っても古い輸入キットではお馴染みの「部品がランナーから外れて箱の中でザラザラいってる」という状況になっていることが多いですが……。

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なにしろ、このシンプルさです。
部品を拾い上げて説明書で軽く確認すれば、組み立てで間違えることはまずありません。
ドアも開閉する楽しいキットです。

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モノグラムは1950年代からアクセサリーに気を使っています。
乗車している兵士たち、車外で戦闘中の兵士たち。そして車体側面に自由にレイアウトできるフィールドバックパックなどが豊富にセットされています。
さすがに前時代的な出来映えですが、米国の著名なモデラー シェパード・ペイン氏がこのフィギュアやアクセサリーを見事にアレンジしてディオラマに使っていたのを思い出すと、丁寧に整形、塗装して使ってみようかなあという気分になります。



せっかくですから、日東科学のキットもご紹介しましょう。

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日東科学「パーソネルキャリア バトル」です。
初版はモノグラムに遅れること約10年の1967年です。


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日東はバトルに先立って対空機関銃装備ハーフトラック「ビクトリー」も発売していますが、こちらもモノグラムの「アーマードハーフトラックM16」を手本にしてモーターライズキットに仕立てたものです。

ただし面白いのは、モノグラムのアーマードハーフトラックが実際には商品名と違ってマクソン社製の50口径機関銃2連装M33機関銃架を装備したM13(またはM14)を模型化しているのに対して(実車との相違はパーソナルキャリアのキットと同じです)日東科学のビクトリーは50口径機関銃4連装のM45機関銃架を装備したM16(またはM17)に改変してある点で、ただし箱絵には誤ってモノグラムと同じ2連装M33機関銃架が描かれているので、この大きな違いに気づく人は案外少なかったようです。

他の日東科学1/35ミリタリーモデルが後にパッケージを変えて再版されたのに対して、このハーフトラック2種が再版されることはなく、金型ごと売却されたのか後になって台湾のブルータンク社から発売されています。
ブルータンク版ではモーターライズ機構が廃止され、他の製品から流用したと思われる見慣れない造作の軟質樹脂製キャタピラが付属しています。


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モーターライズ機構を備えたことによって部品構成はモノグラムと異なる部分も多く、後部転輪がモノグラムの一体成形部品ではなく、個別に回転するようになっており、ドアの開閉は省略されています。
また兵員室内部は電池ボックスで埋まってしまうのにともなってディテールが省略されてしまいました。

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走行機構のためのギヤボックスとゴム製キャタピラ。
スィッチなどを見てもやや脆弱な感じがしますが、実際に作ってみると接触不良によるエンコなどもなく、快調に走ってくれたのをはっきりと覚えています。

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モノグラムのハーフトラックでは、ブローニング50口径機関銃の弾倉が省略されていましたが、日東のバトルではカマボコ型をした200発入りラウンドドラムマガジン(弾倉)らしき部品を接着するようになっています。
なんとも不思議な部分に気を利かせたものだなぁと思います。



―――― モノグラムのハーフトラック2種は、この日東科学「バトル」および「ビクトリー」をはじめとして、同じく日東科学1/76、エアフィックス1/76、その他多くのダイキャストモデルや玩具に多大な影響を与えました。

レベルの1/40シャーマン戦車にせよ、このハーフトラックにせよ、1950年代のアメリカ製プラモデルには「偉大なるご先祖様」と言えそうなキットがいっぱいあります。
ボチボチとこんなことを調べつつ古いキットを丁寧に作るというのも考古学的な楽しみが味わえて、プラモデルの楽しみ方のひとつのような気がしています。

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日東科学(日本)1/24  トヨタS800 クリスタル (1982年初版) [自動車モデル]

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NITTO1/24 TOYOTA S800 Crystal Version


日東科学が放ったトヨタS800いわゆる“ヨタハチ”の本格的1/24スケールキットです。
日東の自動車モデルといえば1/32クラスの100円ゼンマイカー、一世を風靡して豊富なラインナップを誇った1/28及び1/24の「サーキットの狼」シリーズやFF走行の1/24軽自動車、1/12国産バイクなどが記憶に残っていますが、そんな中でも1980年代に入るやいなやリリースされた「1/24名車シリーズ」のホンダS800、トヨタS800、日産SR311は日東のカーモデルの集大成ともいえるこだわりの品で、プロポーションの良さと精密感を併せ持つ安定した品質で多くのファンの支持を得ました。

その2年後に登場したのが「1/24名車シリーズ」の3車種の主要部品を美麗なクリアパーツ(透明部品)に改めた
「1/24クリスタルモデルシリーズ」でした。

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……僕はこのうちトヨタS800、日産SR311を所有していますが、正直さほど古い品というわけでもなく、あらたまってご紹介せねば、と言うほどの稀少な品ではありません。
今でも模型店の片隅で売れ残りを見つけたり、中古品店でも普通の価格で買える品だと思います。

ただ個人的にたいへん想い出に残っているキットなので、ちょっとだけご紹介させていただくことにしました。
しばしお付き合いくださいませ。



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1960年代のプラモデルにリアルタイムで親しんだ経験のあるベテランモデラーの皆さんからすれば、往年の名作モノグラム1/32「P-51ファントムマスタング」の影響で当時各社から連発された透明部品多用のクリアモデルは懐かしくもあり、また今となっては少しばかり古風な意匠と感じられるかも知れませんが、1965年生まれでこのキットの発売当時は高校生だった僕にとって、主要部品のほとんどが透明部品というこの“ヨタハチ”はとても新鮮に感じられ、店頭で見つけたときにはモワァ~ッと妄想が脳内を駆け巡ったものでした。

このキットをうまく仕上げれば、よく自動車図鑑や自動車メーカーのカタログに載っていた、車体が半分透けて内部のエンジンやサスペンションが見えるように描かれている透視図……ああいうものが立体で作れると思ったのです。
そこでボディの左半分は綺麗に塗装して、右半分との境目はエアブラシ塗装による美しいグラデーションによって透明となり、内装品やエンジンまでが見える……という趣向の、ちょっと大人びた仕上げにチャレンジしました。


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……結論から言えば、僕はこのキットを買うために店頭で支払った800円をムダにしてしまい、ずいぶんと落ち込むことになったのですが(笑)

当時の僕の技量ではエアブラシ塗装で「真っ赤に塗装されたボディ左側から、キラキラの透明に変わるボディ右側への境界線の美しいボカシ処理」はまったく無理で、透明サイドにまで塗料の飛沫が飛び散って見苦しいことになりました。
またそれ以前の問題として……これは透明部品の多いプラモデルを作ったことのある方ならおわかりでしょうが……透明部品というのは、ほんの少し接着剤がはみ出ただけでダイナシになってしまうシロモノで、場合によっては少し多めに接着剤を塗ってしまった部分の周辺まで白濁してしまい、修正がまったく不可能になってしまうのです。

その結果、とても他人様にお見せできるような完成品にならず、さっさとボディ全体を真っ赤に塗りつぶして、普通のプラモデル完成品にしてしまいました。

これがけっこうトラウマになっていて、この歳になってもプラモデルの透明部品を扱うときは、例え小さなジープのフロントウィンドのようなただの透明の板のような部品であっても、少々緊張してしまいます。

……あれから幾年月。
いつかはリベンジしてみたいと思い、新たに買い求めたこのキットを今も手許に置いています。


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昔はミュージックカセットテープ、今ならCD……たいてい透明のプラスチック製ケースに入っていましたが、買ったばかりの新品の頃はすごく高級感があったのに、少しでもキズが付いたりホコリを被ってしまうと、途端になんだか安っぽく見えてしまう……そんな経験、ありませんか?
クリアボディのプラモデルというのもまったく同じで、その部品の美しい透明度イコールそのモデルの存在価値と言えるほどで、取り扱いにはひどく気を使ってしまいます。
とくにこのヨタハチは透明のボディと、やはり美しく成形されたメッキ部品のコントラストが“命”ともいえるキットで、こうして部品を眺めているだけでも、作るときのことを想像してチョット緊張してしまいます。


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ボディはブリスターパックされて箱に収められています。
この当時の1/24クラスの自動車キットではモーターライズ走行するのが一般的で、日東もこのキット以前はゼンマイやモーターで走るキットを数多くリリースしていましたが、このキットでは思い切りよく走行機構を廃して、エンジンの再現などに力を入れています。
ブリスターパックの底に印刷されているのは組み立てられたエンジン部分の写真です。


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組み立て説明書からの抜粋。
エンジン部分は後の工程で「伸ばしランナー」を使って各種のパイプ配管の追加工作を奨めています。
また付属の薄いシートと部品を使ってシートベルトも実車通りに再現するなど、小柄とはいえ相当本格的なキットであることがわかります。

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ボディをブリスターパックから取り出して撮ってみました。
非常に美しい成形に感嘆してしまいます。

自動車のプラモデルを作るのは難しいなぁと、つくづく思います。
戦車や戦闘機と違って、例えこのヨタハチのような旧車であっても、現物を街中で見かけるチャンスが多いからです。
ウソをついて適当に作ると、誰が見ても不自然な仕上がりになってしまう。
このキットはそれに加えて部品の美しさをキープしなければならない。
その仕上げの難しさを考えると、僕が持っている国産プラモデルの中でも、これはもっとも難易度の高いもののひとつではないかと思います。


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レベル(アメリカ)1/118 マーティンPBM-5マリナー飛行艇 (1958年初版) [航空機モデル]

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Revell1/118 Martin PBM-5 Mariner


1983年頃からレベルは「ヒストリーメイカーズシリーズ」と銘打って自社の古いキットの再販を始めました。
僕がこの古典キットに出会ったのはその頃で、他から発売されていない珍しい機種だったこともあってすぐに買い求めましたが、ヒストリーメイカーズがキットの完成写真をあしらったパッケージだったのに対して、後になって初版の頃に使われていた図版を復刻したパッケージのものも再販され始め、その絵柄の見事さに惚れて店頭で見つけるたびに買ってしまいました。
美しい箱絵。小さいのに綺麗で立体的なモールド。まるでSF映画にでも出てきそうな独特のフォルム……本当にお気に入りのキットのひとつです。

PBM-5マリナーは第二次大戦後半に登場した大型飛行艇です。
1945年12月にバミューダ海域で発生したTBFアベンジャー雷撃機編隊の遭難事故の捜索に参加し、その機体もまた忽然と姿を消してしまったという、いわゆる「バミューダ・魔の三角海域」事件でも有名になってしまったというミステリアスな経歴を持つ機体でもあります。

……こういうことってプラモデルの組み立て説明書にも、また戦史などのお堅い本にも書かれておりませんが、実在のメカの歴史を辿っていると、ときとしてこのような興味深いエピソードに出くわし、思わず模型の製作意欲に火が付くことがありますネ!

プラモデルの開発にはかなりの時間とお金がかかると聞いています。
80年代当時、お世辞にも商売安泰とはいえない状況にあった海外の老舗メーカーが、新作キット開発の代わりに自社の大切な財産である古典的キットにもういちど目を向けて、長く続くレトロブームに乗せて再発売する……
ヒストリーメイカーシリーズやその後に続いた復刻版もそうした意図の企画だったのでしょうが、リアルタイムでこうしたヴィンテージキットに親しむことのなかった世代にとっては、昔の稀少キットが手に入って気軽に作ることが出来るというのはありがたいことです。
他の模型メーカーも、新製品ももちろん嬉しいですが、ときにはこうした復刻版サービスをお願いしたいところです。


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これはブラジル・レベルで復刻されたときの箱絵。原画はやはり初版に近い頃のものでしょう。
ロングセラーのプラモデルにはこのように様々なバージョンの箱絵が存在していて楽しめます。
夕陽に照らされなから敵艦を攻撃するマリナー飛行艇……まるで映画のワンシーンのようです。
昔の製品の箱絵は、本当に素晴らしい。
箱絵もキットの値段の一部。こんな箱絵がまた見てみたいものです。


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少ない部品点数で、この巨大な飛行艇の偉容を見事に再現しています。
1/118スケールという落ち着かない数値の縮尺が惜しまれますが、一個のプラモデルとしてのクォリティは1958年という発売時期を考えると世界最高レベルではないかと思います。


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立体感のある彫刻による主翼のリブ等の再現、極小のリベットとスジボリによる外板の表現……。
この時点でレベルはすでに現代でも通じるプラモデルの彫刻技術、細部の表現方法を確立させていたことが解ります。
また爆弾倉ハッチも開閉選択式で、搭載する爆弾を見せることもでき、各部の銃塔とともにこれがただの飛行艇ではなく、かなり強力な攻撃力を持つ機体なのだということをアピールできる構成になっています。
機体のキャラを立たせる構成……ここにもレベルの先見性を見ることが出来ます。


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地球儀をあしらった透明プラ製スタンドは、上に載せた機体の角度を自在に調整でき、高級なデスクトップモデルのような雰囲気を味わうことも出来ます。
こんな楽しいオマケの付いたキットも最近では見かけなくなってしまいました。


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日東科学(日本)1/35 M8A1 トラクターカーゴ (1968年初版) [AFVモデル]

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NITTO1/35 Allis-Chalmers M8A1 Artillery Tractor Cargo

M8は1950年代末頃に登場した、牽引式火砲時代の最後の世代にあたる砲兵用トラクタです。
陸上自衛隊でも長らく現役にあり、1960年代には高射特科連隊の主要装備として90ミリまたは75ミリ自動高射砲などの牽引に活躍していたようですが、今ではもう見ることの出来ない古典メカとなってしまいました。
とはいえ重厚かつ複雑なスタイルが非常に模型映えのする、魅力的なアイテムです。

1960年代に発売された他の日東科学1/35ミリタリーキット同様、このM8A1も発売後15年あまりを経て1980年代に真っ白い背景に車体だけが描かれた端正なパッケージに身を包んだ精密ディスプレイキットとして再販され、僕はそのときに買った世代です。
最初は物珍しさから、そして次には自衛隊でも運用されていたということもあって自主製作8ミリ特撮映画用のミニチュアモデルとして作ったこともあり、個人的にはかなりお馴染みの品でした。


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高級感漂う初版のパッケージ。
横長で、よく店頭で見かける戦艦のプラモデルのような大きさと風格があります。
中には溢れんばかりに部品が詰まっており、厚紙で区分けされた一体成形キャビン部分や袋詰めされた駆動系の金属部品が高級感を演出しています。


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当時の模型誌に掲載されていた広告です。
力の入った目玉商品としてこのM8をリリースした日東科学の心意気がうかがえます。


……そんな日東のスピリッツとは裏腹に、僕のこのキットの第一印象は、とにかく「作りにくいプラモデルだなぁ!」というものでした。
1980年代の版にはモーターライズ機構はありませんでしたが、それでも運転席ドアを除く各ハッチが開閉、サスペンション可動、ドーザーブレード可動、後部砲弾積み卸し用リフト可動というアクションモデルで、バリの多い部品をひとつひとつ成形して綺麗に動くように組み立てていくのはずいぶんと骨の折れる仕事でした。


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組み立て説明書記載の部品図。
どうです、1960年代当時の国産1/35モーターライズ走行キットとしては破格の部品点数だと思いませんか??
可動部満載のキットであり、そして当時としても珍しい精密キットです。


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せっかくですから実車解説も詳しく読んでみましょう。
第二次大戦末期から使用……という歴史的な部分のリサーチには残念ながら誤りがありますが、「転輪のボルトは黄色く塗られているが、自衛隊の方のお話では……」といった現地取材を思わせる記述が印象的です。
また他のページには実車の細部写真も随所に掲載され「これは実物の緻密な取材によって作られたキットです」ということを主張する、ニットーの本格精密スケールモデルを世に問うたという自信が見て取れます。
この時代、国産キットは欧米製のキットをかなり参考にしたものや明かなコピー製品も見受けられたわけですが、このM8A1は純粋に日東科学オリジナル製品です。

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これ以前にオーロラも1/48でM8トラクタを発売しており、昔作ったことがあるのですが、もしや……と思い改めて内容を比較検討しましたが、まったくの別物で、日東のキットにはオーロラ製品を参考にした形跡はありませんでした。



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ただし……付属のフィギュアは海外メーカー品の複製物です。
これがまたオールスター・キャストで、レベル1/40、スナップ1/40、モノグラム1/35の各社各キットのものがランナー内に散りばめられていて、オリジナルを知っている人なら思わず吹き出してしまいそうな状態です。
他の項でも書きましたが、やはりフィギュアというのはスケール相応のプロポーションの良さや金型からの抜け具合を計算できる腕利きの彫像師、造型師に依頼して製作しなければならない厄介なもので、当時の国内メーカーはまだまだその方面が弱かったのでしょう。


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車体そのものは非常に優れた設計のキットです。
実車はM41ウォーカーブルドッグのコンポーネンツを利用して車体長を延ばして作られており、各部の部品もM41のものが多く使われているのですが、比較的近年になって発売されたAFVクラブ1/35のM41ウォーカーブルドッグの精密キットの部品などと比較しても、多くの主要部品の寸法がほぼ一致しており、当時としてはかなり正確に1/35スケールモデルとして設計されていることがわかります。

ただキャビン部分はギヤボックスを内蔵するスペースを確保するため実車より小さくアレンジされており、そうとう窮屈な印象です。
これらのパーツを通して「希代の精密キット」と謳うためのスケール感と当時のユーザーの嗜好としては必須事項であったモーターライズ機構とのせめぎ合いに苦心する日東の設計陣の姿が見えるように感じました。


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ピアノ線スプリングをはめ込んで可動するサスペンション。
可動域が少ないので見た目にはたいして面白味はないのではないかと思ってしまいますが、実際に作って走らせてみると、転輪の個数が多いので案外リアルな挙動を見せてくれて感心します。
このM8A1は後になって台湾のブルータンク社からも再販されていますが、オリジナルの日東版ではサス可動のためのスプリングが左右で逆方向に巻かれていてきちんと車体パーツにはめ込まれるようになっているのに、ブルータンク版は生産工場でミステイクを犯したらしく、左右どちらか片方の巻き方のものしか入っていませんので注意が必要です。



―――― その昔、8ミリ映画の撮影に使おうと苦心惨憺して作ったM8ですが、2005年頃に米陸軍発行の実車のTM(テクニカルマニュアル・取り扱い説明書)を目にする機会に恵まれました。

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これを参考にすれば、今だったらもう少し綺麗に仕上げられるんじゃないかなぁ……そんなことを思い始め、久しぶりに作ってみた作品が手許にあります。お目汚しですが、笑覧頂ければと思います。

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先にも触れましたが近年の1/35スケールキットと部品の基本寸法が合致する部分も多く、この作品では細部部品の多くとキャタピラをAFVクラブ1/35のM41ウォーカーブルドッグのものと交換してあります。車体が延長されているのでキャタピラは都合3本必要で、調達に苦労しました。
また少しばかり体裁を変えてみようと、サンドシールド(サイドスカート)も自作してみました。
もちろん各部の可動機構とモーターライズ走行機能はすべて生かして作りましたので、スィッチを入れるとサスペンションを効かせながら机上をノンビリと走ってくれます。

戦車でもなく装甲車でもなく、かといって土木作業現場で働く建機でもなく……不思議なシルエットがお気に入りです。


別項でレンウォール往年の名作 1/32「75ミリ自動高射砲M51スカイスイーパー」を牽引させた状態もご紹介しています。
ぜひご覧ください。
http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18-1
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日東科学(日本)1/35 アリゲーター L.V.T.(A)5 (1968年初版) [AFVモデル]

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NITTO1/35 L.V.T.(A)5 Alligator


フロリダの湿地帯などで輸送・救援に使おうと開発された水陸両用車を原型として造られた上陸作戦用の水陸両用装甲車両です。この主の車両の登場で、米海兵隊はよほどの断崖絶壁でない限り地球上のどのような地形でも大規模な上陸作戦を展開できるようになったと言われます。
兵員輸送型は水陸両用を意味する「アンフィビアン」そして装軌式(キャタピラ式)を意味する「トラック」を組み合わせた言葉遊び的なニックネームで“アムトラック”と呼ばれ、砲塔を載せた火力支援用はこれに準じて“アムタンク”と呼ばれました。
日東科学が製品化したL.V.T.(A)5は第二次大戦末期に活躍したL.V.T.(A)4を改良した戦後型アムタンクです。

初版の箱絵は平野光一画伯の手によるもので、上陸した海岸線で戦闘中のL.V.T.(A)5と海兵隊員が描かれている迫力ある作画ですが、L.V.T.(A)5実車の登場時期から見て朝鮮戦争時か戦後間もない頃の演習中の風景といったところでしょうか。


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僕がこのキットを初めて作ったのは1980年代に入ってからです。
タミヤMMシリーズを思わせる真っ白な背景に車体が描かれたパッケージの再販品を店頭で見かけ、これは珍しいキットだと思い喜んで買い求めました。



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箱を開けると、大柄の車体のわりには簡素な部品構成でまとめられており、ディスプレイキットして売られてはいるものの過去にはモーターライズ版があった形跡があり、しかもキャタピラが懐かしいゴム製だったので、そうとう古いキットの再版なのだということが一目で解りましたが、まさか1960年代のシロモノだとは思いませんでした。


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さて、古いモーターライズ版の部品構成と組み立て説明書を丹念に見てみると、もしかしてこれは水陸両用モーターライズ走行するのではないか?と期待してしまいます。
水に浮くことは浮くでしょうが、完全な防水処置への配慮が見あたらないため、キットのまま作っただけではお風呂に浮かべるのは諦めたほうがよさそうです。


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組み立て説明書には実車写真も掲載されており、現存する車体を取材してキットを設計したという雰囲気が漂います。


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これは数年前に友達と自衛隊 土浦武器学校を見学したときに撮ったもので、創設間もない頃に自衛隊が資材開発参考品として導入した車体です。
日東科学のキットとどんぴしゃりのL.V.T.(A)5です。写真の雰囲気からも、日東はここで取材をしたことがわかります。


―――― 日東科学の1/35ミリタリーモデルは、後にはケッテンクラートでタミヤとバッティングしてしまいますが、初期の頃には他社が目を付けないユニークなアイテムを率先してリリースしていたように思います。
ただ、先発キットの米軍ハーフトラックがモノグラム製を手本にしていたように、もしかしたらこのアリゲーターも海外製品を参考にしたものなのか?という疑問も湧いてきます。

この当時、参考になりそうなキットと言えばこれしかありません。
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アダムズが1958年に発売し、その後スナップ、ライフライクと受け継がれた1/40スケールキットです。
商品名はL.V.T.(A)(4)となっており(注:キットの表示ママ)絵本から採られた“WINNIE the WHALE”(鯨のウィニー)というニックネームが付いています。
実際には日東と同じ戦後型のL.V.T.(A)5です。アダムズが実車取材したのも1950年代でしょうから、この型になってしまったということでしょう。

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キット内容を比較してみると、確かに大筋の部分で日東はアダムズのWINNIE the WHALEを参考にはしているでしょうが、設計は自社でやり直してきちんと1/35スケールに改め、モーターライズ機構とスケール性を両立させようと気配りしているのがわかります。
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ただし、専門の腕の立つ彫像師に依頼しなければならないフィギュアまでは手が回らなかったらしく、あっさりとアダムズのWINNIE the WHALEのキット付属のものを複製して済ませています。
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こういった部分に手をかけていれば、もっと高い評価をもらえた品ではないかと思います。
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……現在ではイタレリが1/35でL.V.T.シリーズを豊富に発売していますが、第二次大戦後に運用されて朝鮮戦争などでも使われたL.V.T.(A)5の1/35キットは現在に於いても日東科学製が唯一の存在です。
後になって台湾のブルータンク社に金型が移ったらしく、その際の再販品は今でも手に入りますので、コレクションに加えておいても悪くないかも知れません。


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