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オカノ(日本)1/32 ドイツジープ キューベルワーゲン (三共製1969年初版) [AFVモデル]

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OKANO(SANKYOU)1/32 Kübelwagen


1969年に三共が発売したもので、その後になってオカノというメーカーに受け継がれて再版されました。

キューベルワーゲンは有名なポルシェ博士によって設計されたフォルクスワーゲンを元に軍用車として作られたもので、第二次大戦中のドイツ軍のトレードマーク的なクルマとなったことは広く知られています。
プラモデルの世界では1970年代初期まで「ドイツ軍ジープ」と言われることも多かったようです。後に登場した田宮ミリタリーミニチュア(MM)シリーズのキューベルワーゲンも箱に「キューベルワーゲンジープ」と記載されていました。


僕は以前モデルアート増刊「PanzerGraph!」誌でプラモデルを使った特撮写真講座の連載を書かせていただいておりました。
その第12号(2008年4月号) はタミヤの誇るプラモデル・シリーズ「1/35ミリタリーミニチュアシリーズ」40周年記念号とのことで、僕の連載はいつもの撮影テクニック紹介をお休みして、タミヤが毎年開催していたミリタリーモデルの特撮情景写真コンテスト「パチッ特集」の黎明期を振り返り、検証する記事を……というオーダーをいただきました。

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調べてみると「パチッ特集」はタミヤのPR誌「タミヤニュース」に含まれるページとして1968年に産声を上げ、1970年になって別冊誌として刊行され始めたという非常に歴史の深いコンテスト本で、その黎明期……すなわち70年代いっぱいに刊行された号を細やかに検証するべく、タミヤ研究の第一人者「田宮模型歴史研究室の助手さん」こと松井さんにお願いして貴重な「パチッ特集」をすべてお借りして原稿の執筆に入りました。

まさに日本のミリタリーモデリング黎明期の貴重な写真資料集といえるパチッ特集の応募作品を見ていると、当時の熱気、ファンの飽くなき創意工夫が伝わってきて本当に楽しめましたが、同時に興味深いのは撮影の小道具として田宮以外のメーカーの製品がけっこう頻繁に使われていることでした。
特にキューベルワーゲンはよく登場していました。
当初は田宮MMシリーズのキューベルだと思って見過ごしていたのですが、よくよく考えると田宮のキューベルは1970年10月発売。この製品がまだ発売されていないか、まだ広く出回っていないであろうと思われる極初期の頃の情景写真作品にもキューベルが登場しているのです。

……ははぁ、これが噂に聞くサンキョーのキューベルワーゲンなのだなとようやく気づきました。
以前、模型趣味の大先輩から「三共のキューベルワーゲンは当時としてはなかなか良かった」といったお話をうかがったことがあったのです。

今でこそ高品質のキューベルワーゲンのキットがいくつも発売されていますが、この黎明期に活躍した古典キットもいつかは作ってみたいと探しまわり、ようやく見つけたのが、この三共からオカノに受け継がれた版です。

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箱絵はオカノで新調したもののようですが、組み立て説明書のトップにあしらわれているイラストが、三共時代の箱絵をトリミングしたものでしょう。
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キットはシンプルな設計のゼンマイ走行モデルです。

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今となっては懐かしい全金属製のゼンマイユニットと蝶ネジ型のハンドル。
当時のものとしては珍しくデカールも充実しており、国防軍、空軍、親衛隊のマーキングが選べます。


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表面のモールドも意外にしっかりしており、これならば塗装するとビシッと引き立つでしょうし、また細部を作り込んでも楽しい仕上がりになりそうな、そんな素材としての良さも感じられるように思います。


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キットをそのまま作るとガンマウントに機関銃を搭載した仕様に仕上がりますが、箱絵のように幌を展開状態に作りたいときは幌そのものを紙などで自作する必要があり、そのための型紙が組み立て説明書に印刷されているのが何ともユニークです。



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「パチッ特集号」も2号3号と続くうちに、応募作品からは三共製キューベルワーゲンの姿が消え、新登場の田宮製MMシリーズのキューベルが大活躍するようになります。


せっかくですから、ここで両者を比較してみました。

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オカノ(三共)がイエローの部品。
田宮MMシリーズがダークグレイの部品です。

なるほどなるほど、田宮が1/35なのに対して三共は1/32表示ですので、少し大柄なのがわかります。

しかし、目も当てられないほど大きさに差があるというほどでもなく、これなら1/35モデルとして使いたくなりますね!
モールドやプロポーションなどの作風も、当時の他の1/35クラスのモデルと相性が良かったと思います。

1960年代末から70年代初頭にかけて、日本のミリタリープラモデルが黎明期を迎えた頃、この趣味の大先輩達に親しまれたこの可愛らしいキューベルワーゲン。
機会を見つけて丁寧に作ってみようと思っています。



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エルエス(日本)アメリカ陸軍水陸両用トラック ダック (スケール不詳・1964年初版) [AFVモデル]

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LS DUKW353
※画像は初版のものではなく、僕が入手できた第2版頃の物です。

「ダック」はそのまま読めばDuck……アヒルのことですが、実際にはDUKW353という車両で第二次大戦中に広く使用されました。

DUKWは米軍車両の類別用語で、次のような意味があります。

D 1942年製造……First year of production code "D" is for 1942.
U 車体の型式"U"(多用途)…… utility truck (amphibious).
K 前輪駆動……Front wheel drive.
W 後輪2軸駆動……Two rear driving wheels (tandem axle).

……この略称でDUKW。
これを“ダック”と読ませて水陸両用トラックの愛称にしたわけです。
米軍が伝統的に得意としている語呂合わせ、言葉遊びです。

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エルエスの箱には正式名称のDUKW353という文字がきちんと表記してあり、また組み立て説明書にはエンジン出力、ペイロードの他にも本車の特徴である走行中にタイヤの空気圧を調整できることも書かれており、キットの開発にあたっては基本的な資料収集だけはおこなったのであろうことがうかがえます。


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またこの説明書には「ノルマンディー上陸作戦の映画でも見られるように……云々」の記述があることを考えると、1962年に公開された20世紀フォックスの大作『史上最大の作戦』に影響されて企画した製品なのかも知れません。
映画の中では米軍第2レンジャー大隊がオック岬の断崖絶壁をよじ登ってドイツ軍砲台を攻撃するシーンで、レンジャー隊員を海岸線まで運ぶのに多数のDUKW353が使われていました。
実際のところDUKW353という車両は資材や人員の海上運搬用トラックであって戦闘用車両ではなく、薄い鉄板でできた車体に銃撃を受けて少し穴が開こうものならばすぐに水没してしまう脆いクルマなので、あのような激戦地の最前線で使われることはほとんどなかったとは思いますが、一般的な上陸用舟艇とは明らかにシルエットの違う特殊装備といった風情での映画への出演は印象的でした。


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人気があったのかなかったのかわかりませんが、エルエスのダックは田舎の模型屋さんによく売れ残っていて、僕は小学生の頃に作ったことがあります。
やはりドイツ軍車両に比べて米軍車両のキットが少なかったので、ちょっと目先の変わった米軍車両なら何でも買って作ってみようと思っていたからです。しかし1970年代当時からしてずいぶんと古めかしい内容でした。

次に作ったのは21世紀に入ってからです(笑)
水遊びの出来るプラモデルを持ち寄って楽しもうという模型オフ会があり、その参加作品として製作しました。
しかしその製作を通して、このキットに関するいろいろな疑問が湧き起こってきました。

キット内容をご説明しながら、その疑問についても触れてみましょう。

エルエスのダックは非常にシンプルな構成のモーターライズキットで、一般的な自動車キットと同じような機構で前輪ステアリングが可動し、尾部にある大きな舵が連動して左右に切れるようになっています。


……ここからが疑問点です。

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実車のDUKW353は車体下面後部にあるスクリューの先に一枚の舵がついているのですが、このキットは実車の形態を無視して連動可動式の大型舵が2枚。
そしてスクリューの部品は車体への取り付け部品ともどもペタッと接着して済ますようになっていますが、これはどう見てもシャフトを車内まで通してスクリューを回すような設計の片鱗が見える……すなわち、このキットの初版はタイヤを駆動させての陸上走行とスクリュー回転で水上航行の両方がモーターライズされた水陸両用キットだったのだろうと思われるわけです。

ちょっとばかり実車と形が違うけど、水陸両用モーターライズで遊べる!?
これは楽しそうだ!

……と思ったのもつかの間。

待てよ……このキットの設計には「防水に対する処置」が施されていた形跡がほとんど無いように思えるのだが、果たしてこのキット、初版が水陸両用モーターライズ仕様だったとして、ちゃんと水に浮いたのだろうか??

もしかしたら、水陸両用として発売してみたはいいが、どうも案配が悪くて浸水がひどいため、次の版からはスクリューシャフト取り付け用の穴を埋めてしまいギヤボックスも簡略化して、単純な陸上走行用キットに改訂してしまったのかも知れませんネ。


……話題を戻して、キットのフォルムを見てましょう。
このキットにはスケール表示はありませんが、少年時代に店頭で箱の中身を眺めたときの印象は、他社の1/35スケールの戦車やトラックと並べるとちょうどいいくらいの大きさじゃないかなぁという感じで、喜んで買って帰ったのを覚えています。

そこで、イタレリが発売した1/35 DUKW353と並べて大きさを比較してみようと思い立ちました。

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イタレリのDUKWは完成するとこんな感じに仕上がります。
参考までにということで、お目汚しながら拙作をご紹介させていただきます。
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一部に簡単なディテールアップとフィギュアやアクセサリーの追加をおこなっていますが、ほとんどストレート組みです。
イタレリの製品は生真面目にDUKWを1/35で再現してあるので、実車はどんな感じのトラックなのかお解り頂けると思います。


このイタレリのDUKWとエルエスのダックの車体部品を並べてみると……。
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う~む、これは判断が難しいなァ。
車幅、車高はまぁこんなもんかなという感じで1/35に合致しますが、車体長は約5センチ短くなっています。
1/35で5センチということは実車では1メートル75センチ短いわけですから、これではもう別の車種ですね(笑)
スケール表示ができないはずです。
エルエスも惜しいことをしました。
この当時、海外製品も含めて1/35サイズのDUKWは発売されていなかったし、レジンキットを除けばイタレリが発売するまで実に40年あまりDUKWの1/35キットは出現しなかったわけで、たとえ簡単な内容の子供向けワーキングモデルとはいえ、せめて車体長があと5センチ長くて、何となくでもいいから1/35サイズに仕立てておけば、これを元にディテールアップを頑張って1/35のDUKWを作ろうというマニアもいたでしょうし、それによってチョッピリ売り上げが伸びたかも知れませんネ!


……さて、先に21世紀に入ってこのエルエス製ダックの車体部品作ったことがあると述べましたが、実は完成後に落っことしてしまってスクラップになってしまいました!

とりあえず、壊れる前の画像が少しばかり残っていましたので、ご紹介したいと思います。

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このモデルではキット付属のギヤボックス使用はあきらめ、簡単なギヤボックスを自作して前輪駆動、スクリュー回転仕様にして防水処理を施し、水陸両用を実現させました。
走行用とスクリュー用の2つのモーターを使っています。
前輪駆動にしたのは、上陸のアクションをおこなう場合に、まず水上航行しながらやがてスロープとなっている水底にタイヤが接地するわけですが、その際に最初に接地する前輪が駆動しないと地上まで駆け上がることができないだろうと考えたからです。
実際に動かしてみると、水没することなく水上航行をおこなった後、木の板で表現したスロープをエッチラオッチラと登って走行してくれました。
実は外観に関しても、エンジンルーム部分を延長したりタミヤ1/35の2.1/2トンCCKW353トラックの部品を流用してヘッドライト周辺と運転席付近を作り込んだりタイヤを換えてみたりと、けっこう気をつかって仕上げてあります。
タイヤは走行性能を考えて、もったいないと思いつつ絶版品のトミー1/35GMCトラックのゴム製を使ったと思います。
いったい何をやっているんでしょうか(笑)

とはいえ……幾つになっても、こういう工作、こういう模型は本当に楽しいデス!

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