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日本ホビー(日本)1/35 陸上自衛隊 61式戦車 (1966年) [AFVモデル]

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NIPPON HOBBY KK 1/35  J.G.S.D.F Type61 Medium Tank

戦後初の日本国産戦車として1960年代後半にプラモデルメーカー各社から多種多様なキットが発売されて子供たちに親しまれた車体です。


日本ホビーは現物取材による正確・精巧な模型化を謳い文句にした1/20前後のラージモデルと1/35前後のミドルクラスモデルの二本柱で各種戦車キットを販売していたようです。
1965年生まれの僕は日本ホビー製品の原体験は少なく、幼少時に何かのお土産で同社のカーモデルを買ってもらったのをオボロゲに覚えている程度でした。 確かフォード・ムスタングか何かだったように思います。 当然1/35の61式戦車といえばタミヤ製品にお世話になったクチです。 しかし、タミヤとは違うメーカーが1/35でプラモファンにはお馴染みの61式を発売していたことを25年ほど前に知ってからは興味津々で、いつかは作ってみたいと思っていました。


今回ご紹介するのは、同社「パノラマボックスシリーズ」の1/35 61式戦車です。


……この「日本ホビー」というメーカー名。
古いプラモデルに興味をお持ちの方なら一度は聞いたことのある名前だと思いますが、こういったものはリアルタイムで原体験があるなどの“経験値”が無いと、なかなかその全貌は掴めないものです。
これは他の老舗メーカーにも言えることですが、本格的な戦車キットをはじめとして様々なアイテムをリリースしていた日本ホビーに関しては、是非とも詳しいことが知りたいと常々思っておりました。

そこに、まさに救世主が現れました。
少年時代から日本ホビーのキットに親しみ、現在でもキットそして日本ホビーという企業そのものの研究を続けておられる、森本康生さんです。

森本さんはご自身の研究成果をウェブサイトにも公開しておられます。
その名もズバリ「日本ホビーKK研究室」です!
非常に濃密な情報が豊富に掲載されているサイトです。森本さんの熱意が伝わってきます。
是非、皆さんもご覧になってください。

「日本ホビーKK研究室」
http://www.mecha-land.com/Hobby/hobby.html

……さて、この1/35スケール「61式戦車」のコンテンツに関して、森本さんからご連絡を頂き、大変詳しい情報をご提供頂いたうえに、僕が先にアップロードした文面中の誤り等を懇切丁寧に解説して頂きました。
日本ホビーの戦車キットに興味のある方は必見の情報です。

以下、森本さんから頂いた情報をまとめて掲載させて頂きます。


―――― 日本ホビーは、タミヤなどのように大きな会社になることはなく、まったくの個人経営の中小企業で、ロットごとにパッケージや内容を変更しては、同じ戦車を製品化していました。
その順番は……
①パノラマボックスシリーズ 
②日本戦車シリーズ
③アクションタンクシリーズ+チャンピオンシリーズ 

私も当時子供でしたから、詳しくは知るすべもないのですが、この順番だけは、リアルタイムでプラモデルに親しんできた事実から間違いありません。
「パノラマボックスシリーズ」は「マンモス戦車シリーズ」と同時期に、主に自衛隊の戦車をシリーズ化したものでした。
「パノラマボックスシリーズ」の箱は、ミシン目からボックスアート部分をくりぬき、そこに付属の透明のフィルムを貼り、同時にくりぬいた絵を箱の中に背景として貼りつけると、箱が展示用のボックスになることから、そう命名されました。

そのラインナップは……

61式戦車 1/35
60式装甲車 1/30
60式無反動ロケット砲 1/20
M41 1/35 (注:「パノラマボックスシリーズ」に存在したかどうか不明 見たことがありません)
M24 1/31
スターリン 1/36
九七式チハ 1/33(注:「パノラマボックスシリーズ」に存在したかどうか不明 見たことがありません)
九七式改 1/33

……というものでした。

「パノラマボックスシリーズ」では「マンモス戦車シリーズ」と同じ思想である、実物に忠実であることを売りにしていました。
キャタピラが金属色ポリ製で、ギアボックスが金属で完成しているところも自慢していました。(確かに、当時はバラバラのギアを組み立てる方式のキットが多くありました。その点、組み立て済みで確実に動くことが、私が日本ホビーが好きになった理由でもありました。35モーターで強力でしたし)。
でも、子供ながらに不満だったのは、シャーシが共通で、転輪数が6個のものと5個のものの2種類を使いまわしていることでした。
これは「マンモス戦車シリーズ」でも同じことで“実物に忠実である”という点から、ちょっとはずれた部分でした。
その後、業者向けのパンフレットに「お客の心をとらえるには、ただ動くだけではだめです」という宣伝文句で、「アクションタンクシリーズ」に方向転換していったのです。
同時期に、タミヤは戦車博物館の取材をもとに、よりスケール度の高まった、しかも世界の戦車を製品化していき、日本ホビーは競争に負けることになってしまいました……。


―――― 以上です。

原体験をお持ちで、そして日本ホビー製品を見つめ続けてきた森本さんならではの情報そして視点で、当時の空気までが感じられるようです。
ときおり日本ホビーの戦車モデルを見かけると、様々なバージョンの箱があって、どれが先に発売されたものか困惑することがありますが、森本さんの解説により、その謎が氷解しました。

森本さん、ありがとうございました!


それでは、キット内容を見てみましょう。


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森本さんの解説でお解り頂けたかと思いますが、このシリーズのチャームポイントは「パノラマボックス」と銘打ったパッケージで、完成後はこの箱の一部を切り取り線に沿って穴を開け、展示ケースとして使えるようになっていました。

ちょっとパノラマボックスに注目してみましょう。

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背面には「61式戦車 図解説明」が印刷されています。
図柄は量産型の一般的な61式ではなく、試作型のSTA-4が描かれているのが興味深いです。
懐かしい東宝の特撮怪獣映画でお馴染みの車体ですネ。


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底面に印刷された同社の製品ラインナップ。
実車写真をトレースした精密イラスト風の紹介図ですが「スターリン3型」だけはあまり鮮明でない海外の書籍の写真を下絵に使ったためか、他の自衛隊車両よりも幾分ラフなタッチになっているのがなんとなく微笑ましく感じられます。


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思ったよりシンプルなキット内容。
現在の目で見ると多少実車と構造や形状の異なる部分も見受けられますが、それでも図面と実車取材による写真から推察される形状を許容範囲内のコストで立体造形物として再現すればこうなるであろうという、かなり説得力のある形をしており、発売時期を考えれば確かに精巧な高級キットだったであろうと思います。

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試作型を思わせる、ややロングホィールベースに見える車体。半球型に突出したコマンダーズキューポラ、箱型に簡略化されたライトガード、ゴッツイ足回り。
どのメーカーのこれ!……とは言えませんが、61式戦車を題材としたやや小型サイズの古いプラモデルでは、こういうスタイルの物が多かったように思います。
そんなことを考えつつ部品を眺めると、日本ホビー製品が他社に与えた影響の大きさが実感できます。

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砲塔内部にコードを引き入れて、砲塔床板部分に取り付けられた接点によって通電し、砲塔を回すことによってモーターライズ走行のオン・オフができるようになっています。
単純なオン・オフスィッチにしないあたりが、ギミックにこだわる日本ホビーらしさでしょうか。


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ちょっとイタズラ心でタミヤ1/35(旧モーターライズ版)の主要部品と比較してみました。
左奥の暗いプラ成形色がタミヤ製です。
大きさはほぼ同じ。1/35クラスとして堅実に模型化されていることが解ります。
細部表現の違いに発売年度の差……技術的な進歩やモデラーの嗜好に合わせたセンスの差が見て取れますが、立体造形物として鑑賞した場合、どちらも捨てがたい魅力があると感じるのは僕だけでしょうか。




―――― キットに同梱されていたチラシです。

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当時としてはかなり熱心な商品展開を行っていたようで、同社約1/20スケールの各種戦車モデルに使えるように別売の連結組み立て式キャタピラまで製品化されていました。

皆さんご存じのようにキャタピラの形状というのは車種によって違います。
それに構わずこの1種類のキャタピラで押し切ってしまうというのは少々強引な気がしないでもありませんが、それは現在の感覚で見てしまうからで、いささかリアリティに欠けるゴム製キャタピラが一般的だった当時の戦車モデル・シーンにあって、まるで実物のようにプラ製本体にゴム製パッドを貼り付けていき、一枚ずつ連結させていくキャタピラというのは、実車と比べて多少の形状の違いはあっても、それを差し引いて余りあるリアリティを感じさせてくれる「高級ディテールアップ用部品」だったことと思います。


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また組み立て説明書にも「地上最大の戦車模型」と銘打った約1/20スケールの「マンモス戦車シリーズ」と、八千円あれば(それでも当時としては超高額!)それらのキットをラジコン化出来るセット「ホビーコーン」の紹介が掲載されています。


―――― 日本ホビー1/35の61式は今回ご紹介した未組み立て品とは別に所謂「完成品のジャンク」を入手していたので、今回はそれを修復して在りし日の姿を再現してみました。

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組み立て説明書を頼りに破損箇所を確認し、紛失していたホィールの一部はお友達の「T2F」さんのご協力で型取り・複製をしていただきました。
基本的にはキットをストレート組みするとこんな姿になる……というのを再現しようとしましたが、細かい部品の欠損部分の補修によってほんの少しオリジナルと異なる部分もあります。
またキットでは砲口も開いていないので、ここだけはオリジナルと違ってしまうのを承知で雰囲気アップのために開口しました。
当時の模型マニアにも戦車のポイントである砲身の開口はドリルなどを使って行う方も多かっただろうという判断です。
もちろん付属デカールはありませんので、日の丸はデカール自作、その他のマーキングはクラシカルな雰囲気に仕上げるため手描きで表現してみました。
本来は砲塔を回すことによってスイッチがオン・オフされてモーターライズ走行しますが、経年変化でスィッチ部分と電池ボックス部分が錆びてボロボロだったため、市販品のスイッチと電池ボックスを車内に収めました。
でもギヤボックスとモーターは当時そのままのものです。
スィッチを入れると、まるで大地を踏みしめるようなユッタリとしたスピードで、ガガガガ!と大音響のギヤノイズを響かせて力強く走ります。

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こうしてみると後発のタミヤ1/35とはまた違った作風で独特のシルエットを持っていますが、非常に存在感が豊かなモデルのように思います。


―――― 余談ながら、日本ホビーの61式戦車つながりでの話題をひとつ。

1964年公開の東宝特撮映画『モスラ対ゴジラ』のヒトコマ。

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ゴジラ撃退作戦中、ゴジラの放つ放射能火炎で炎上する61式戦車です。

この当時、東宝には1954年公開『ゴジラ』のときに準備された1/10~1/12程度と思われるスケールのM24チャフィ戦車のミニチュアモデルのストックがあり、『モスラ対ゴジラ』にはこのM24の車台にアイハラ製1/15スケール金属モデル61式戦車(STA-4)の車体と砲塔を載せた撮影用モデルが登場しますが、この画面に映っているものは明らかにそれとは別の市販のプラモデルのように見えます。

これは何だろう? と検証していたところ、ウェブサイト「プラモデルの王国」の高見氏より「形状から見て恐らく日本ホビーの1/20だろう」という情報をいただきました。
日本ホビー1/20の61式戦車は1964年の発売とのことで、撮影当時パリパリの新製品だったことがわかります。

こういった戦車プラモは他の特撮映画でもよく活躍しています。
そんなところに注意しながらあらためて特撮映画のDVDを観てみるのも、マニアの密かなる楽しみですネ!
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