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バンダイ (日本) 1/24 ウィリスジープ (1970年) [AFVモデル]

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※旧 今井科学 1968年製
BANDAI 1/24 WILLYS JEEP (1970) ※ORIGINAL IMAI KAGAKU 1968 Release.

第二次大戦中に登場して全戦線で勇名を馳せたウィリスMBジープの1/24モーターライズキットです。

元々は今井科学が1960年代末に発売したものですが、ほどなくバンタイが販売元となりしばらく店頭で見かけたので、このバンダイ版に見覚えのある方のほうが多いかも知れません。

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箱絵は「空挺作戦前夜」といったところでしょうか。
空挺隊員と彼らを運ぶ輸送機のパイロットがジープの傍らで打ち合わせ中の様子が描かれています。

これは小松崎 茂 画伯の手によるもので、今井科学から発売されていたときはジープと人物のみが切り抜かれたレイアウトになっていましたが、バンダイ版ではモノクロのM60中戦車と155ミリカノン砲が背景に合成されました。
M60も155ミリ砲も今井科学が1/24スケールで発売していたので、その関係もあったのではないでしょうか。


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キット内容は当時としては標準的なもので、ランナー配置を見てもそのまとまりの良さがうかがえます。

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1/24でモーターライズ走行させるため、モーターは車内に、そして電池ボックスはジープの相棒として有名な1/4トンカーゴトレーラに載せて、ジープ本体のプロポーションが電池ボックスによって著しく損なわれるのを防いでいます。
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カーゴトレーラ上の電池ボックスは大型の弾薬箱のような箱で覆い、カモフラージュされます。
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また、弾薬箱だけでは寂しいと感じたのでしょうか、畳んだテントとバッグがアクセサリーとして含まれているのが微笑ましく感じられます。
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そのうえ、このカーゴトレーラは配線でジープ本体とつながるにも関わらず、取り外し可能なように設計されています。
また、カーゴトレーラは単体で自立するように、スタンドがスプリングを使って折り畳み可動になっているのも気が効いています。
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走行のためのギヤはちゃんとデフの中に収められ、ドライブシャフトを介して後輪を駆動させます。
前輪はステアリングが効くようになっているので、残念ながら実車と同じ四輪駆動のギミックは無理だったようですが、このキットの原体験を持つ方々にお話をうかがうと、予想していたよりも走行性能は良かったようです。
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作るとなかなか楽しいキットに思えますが……待てよ、このキット、本当に1/24スケールなんだろうか?

昔のキットは箱に書かれたスケール表示と実際のスケールが違うことが多々あります。
簡単に検証してみることにしましょう。



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ハセガワの1/24スケール「ジープ ウィリスMB」。
2003年に発売された、現時点では最も新しい1/24スケールのウィリスジープのモデルです。
近年のプラモデルは目の肥えたマニアのニーズに応えて基本的な寸法等はできるだけ正確に再現されているので、ハセガワのジープの内容を信用して比較してみました。


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ハセガワのジープはタミヤ1/35(MMシリーズ新設計版)と同じくボディの主要部品とフロントグリルが一体成形となっているので、比較対象としてはもってこいです。
左上のシャシーフレーム部品とランナーでつながっているのがバンダイ(旧 今井科学)1/24。
右下がハセガワ1/24。

……基本的な寸法はほとんど同じで、不自然なほど寸法や角度が違う部分は見あたりません。


自動車の模型ではそのイメージを左右する重要な要素であるタイヤも比較してみました。

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左の中央にランナーが付いているのがハセガワ1/24。
右がバンダイ(旧 今井科学)1/24。
直径も幅も厚みも、驚くほど合致しています。

これを見る限り、今井科学は1960年代末という時期に相当マジメにジープを1/24で模型化したことがわかります。


ただ、残念なのは……「顔」です。

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ジープ好きの人間がいちばん気にするポイントのひとつが、顔……フロントグリルの出来映えです。
今井科学のジープは、同時期の各国産メーカー品によく見られるように、ジープのフロントグリルの特徴をつかみ取れず、ずいぶんとコミカルな顔立ちになってしまいました。
恐らく、大戦型のウィリスMBと戦後に登場したウィリスMC・M38の特徴が混ざってしまったのでしょう。

ここが実車に似ていたならば、かなり高い支持を得ることの出来るキットになったのではないでしょうか。
実は車体各部にもウィリスMBとM38の特徴が混在しています。


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(第二次大戦型・ウィリスMBジープ)


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(戦後に登場したウィリスMCジープ・M38)




……とは言え、ジープの型式・年式による細部の違いを詳しく解説した資料はなかなか手に入らなかった時代の製品ですし、この当時はゼンマイ動力で走る1/24ジープのキットはあっても、モーターライズの1/24キットは珍しい部類に入りました。
これだけでも今井科学の意気込みが伝わってきます。


現在では超精密なディスプレイキットが主流となり、モーターライズで走行するスケールモデルは極少数派になってしまいましたが……オトナの手のひらに乗るサイズのウィリスジープがテーブルの上をすぃーっと走る光景を想像すると……なんだかワクワクしませんか?


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ハセガワ1/24ジープの細部部品を流用したりモールドを移植して仕上げれば「実車のようなスタイルのウィリスジープがモーターライズで走る」様子を楽しめる……そんなディテールアップをしてみるか??

それとも「昔はこんな面白いキットがあったんだなァ」と往時を偲んで完全にキットの内容そのままで作って楽しむか??

うぅむ……とても悩ましいキットです(笑)












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日本ホビー(日本)1/35 陸上自衛隊 61式戦車 (1966年) [AFVモデル]

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NIPPON HOBBY KK 1/35  J.G.S.D.F Type61 Medium Tank

戦後初の日本国産戦車として1960年代後半にプラモデルメーカー各社から多種多様なキットが発売されて子供たちに親しまれた車体です。


日本ホビーは現物取材による正確・精巧な模型化を謳い文句にした1/20前後のラージモデルと1/35前後のミドルクラスモデルの二本柱で各種戦車キットを販売していたようです。
1965年生まれの僕は日本ホビー製品の原体験は少なく、幼少時に何かのお土産で同社のカーモデルを買ってもらったのをオボロゲに覚えている程度でした。 確かフォード・ムスタングか何かだったように思います。 当然1/35の61式戦車といえばタミヤ製品にお世話になったクチです。 しかし、タミヤとは違うメーカーが1/35でプラモファンにはお馴染みの61式を発売していたことを25年ほど前に知ってからは興味津々で、いつかは作ってみたいと思っていました。


今回ご紹介するのは、同社「パノラマボックスシリーズ」の1/35 61式戦車です。


……この「日本ホビー」というメーカー名。
古いプラモデルに興味をお持ちの方なら一度は聞いたことのある名前だと思いますが、こういったものはリアルタイムで原体験があるなどの“経験値”が無いと、なかなかその全貌は掴めないものです。
これは他の老舗メーカーにも言えることですが、本格的な戦車キットをはじめとして様々なアイテムをリリースしていた日本ホビーに関しては、是非とも詳しいことが知りたいと常々思っておりました。

そこに、まさに救世主が現れました。
少年時代から日本ホビーのキットに親しみ、現在でもキットそして日本ホビーという企業そのものの研究を続けておられる、森本康生さんです。

森本さんはご自身の研究成果をウェブサイトにも公開しておられます。
その名もズバリ「日本ホビーKK研究室」です!
非常に濃密な情報が豊富に掲載されているサイトです。森本さんの熱意が伝わってきます。
是非、皆さんもご覧になってください。

「日本ホビーKK研究室」
http://www.mecha-land.com/Hobby/hobby.html

……さて、この1/35スケール「61式戦車」のコンテンツに関して、森本さんからご連絡を頂き、大変詳しい情報をご提供頂いたうえに、僕が先にアップロードした文面中の誤り等を懇切丁寧に解説して頂きました。
日本ホビーの戦車キットに興味のある方は必見の情報です。

以下、森本さんから頂いた情報をまとめて掲載させて頂きます。


―――― 日本ホビーは、タミヤなどのように大きな会社になることはなく、まったくの個人経営の中小企業で、ロットごとにパッケージや内容を変更しては、同じ戦車を製品化していました。
その順番は……
①パノラマボックスシリーズ 
②日本戦車シリーズ
③アクションタンクシリーズ+チャンピオンシリーズ 

私も当時子供でしたから、詳しくは知るすべもないのですが、この順番だけは、リアルタイムでプラモデルに親しんできた事実から間違いありません。
「パノラマボックスシリーズ」は「マンモス戦車シリーズ」と同時期に、主に自衛隊の戦車をシリーズ化したものでした。
「パノラマボックスシリーズ」の箱は、ミシン目からボックスアート部分をくりぬき、そこに付属の透明のフィルムを貼り、同時にくりぬいた絵を箱の中に背景として貼りつけると、箱が展示用のボックスになることから、そう命名されました。

そのラインナップは……

61式戦車 1/35
60式装甲車 1/30
60式無反動ロケット砲 1/20
M41 1/35 (注:「パノラマボックスシリーズ」に存在したかどうか不明 見たことがありません)
M24 1/31
スターリン 1/36
九七式チハ 1/33(注:「パノラマボックスシリーズ」に存在したかどうか不明 見たことがありません)
九七式改 1/33

……というものでした。

「パノラマボックスシリーズ」では「マンモス戦車シリーズ」と同じ思想である、実物に忠実であることを売りにしていました。
キャタピラが金属色ポリ製で、ギアボックスが金属で完成しているところも自慢していました。(確かに、当時はバラバラのギアを組み立てる方式のキットが多くありました。その点、組み立て済みで確実に動くことが、私が日本ホビーが好きになった理由でもありました。35モーターで強力でしたし)。
でも、子供ながらに不満だったのは、シャーシが共通で、転輪数が6個のものと5個のものの2種類を使いまわしていることでした。
これは「マンモス戦車シリーズ」でも同じことで“実物に忠実である”という点から、ちょっとはずれた部分でした。
その後、業者向けのパンフレットに「お客の心をとらえるには、ただ動くだけではだめです」という宣伝文句で、「アクションタンクシリーズ」に方向転換していったのです。
同時期に、タミヤは戦車博物館の取材をもとに、よりスケール度の高まった、しかも世界の戦車を製品化していき、日本ホビーは競争に負けることになってしまいました……。


―――― 以上です。

原体験をお持ちで、そして日本ホビー製品を見つめ続けてきた森本さんならではの情報そして視点で、当時の空気までが感じられるようです。
ときおり日本ホビーの戦車モデルを見かけると、様々なバージョンの箱があって、どれが先に発売されたものか困惑することがありますが、森本さんの解説により、その謎が氷解しました。

森本さん、ありがとうございました!


それでは、キット内容を見てみましょう。


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森本さんの解説でお解り頂けたかと思いますが、このシリーズのチャームポイントは「パノラマボックス」と銘打ったパッケージで、完成後はこの箱の一部を切り取り線に沿って穴を開け、展示ケースとして使えるようになっていました。

ちょっとパノラマボックスに注目してみましょう。

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背面には「61式戦車 図解説明」が印刷されています。
図柄は量産型の一般的な61式ではなく、試作型のSTA-4が描かれているのが興味深いです。
懐かしい東宝の特撮怪獣映画でお馴染みの車体ですネ。


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底面に印刷された同社の製品ラインナップ。
実車写真をトレースした精密イラスト風の紹介図ですが「スターリン3型」だけはあまり鮮明でない海外の書籍の写真を下絵に使ったためか、他の自衛隊車両よりも幾分ラフなタッチになっているのがなんとなく微笑ましく感じられます。


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思ったよりシンプルなキット内容。
現在の目で見ると多少実車と構造や形状の異なる部分も見受けられますが、それでも図面と実車取材による写真から推察される形状を許容範囲内のコストで立体造形物として再現すればこうなるであろうという、かなり説得力のある形をしており、発売時期を考えれば確かに精巧な高級キットだったであろうと思います。

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試作型を思わせる、ややロングホィールベースに見える車体。半球型に突出したコマンダーズキューポラ、箱型に簡略化されたライトガード、ゴッツイ足回り。
どのメーカーのこれ!……とは言えませんが、61式戦車を題材としたやや小型サイズの古いプラモデルでは、こういうスタイルの物が多かったように思います。
そんなことを考えつつ部品を眺めると、日本ホビー製品が他社に与えた影響の大きさが実感できます。

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砲塔内部にコードを引き入れて、砲塔床板部分に取り付けられた接点によって通電し、砲塔を回すことによってモーターライズ走行のオン・オフができるようになっています。
単純なオン・オフスィッチにしないあたりが、ギミックにこだわる日本ホビーらしさでしょうか。


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ちょっとイタズラ心でタミヤ1/35(旧モーターライズ版)の主要部品と比較してみました。
左奥の暗いプラ成形色がタミヤ製です。
大きさはほぼ同じ。1/35クラスとして堅実に模型化されていることが解ります。
細部表現の違いに発売年度の差……技術的な進歩やモデラーの嗜好に合わせたセンスの差が見て取れますが、立体造形物として鑑賞した場合、どちらも捨てがたい魅力があると感じるのは僕だけでしょうか。




―――― キットに同梱されていたチラシです。

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当時としてはかなり熱心な商品展開を行っていたようで、同社約1/20スケールの各種戦車モデルに使えるように別売の連結組み立て式キャタピラまで製品化されていました。

皆さんご存じのようにキャタピラの形状というのは車種によって違います。
それに構わずこの1種類のキャタピラで押し切ってしまうというのは少々強引な気がしないでもありませんが、それは現在の感覚で見てしまうからで、いささかリアリティに欠けるゴム製キャタピラが一般的だった当時の戦車モデル・シーンにあって、まるで実物のようにプラ製本体にゴム製パッドを貼り付けていき、一枚ずつ連結させていくキャタピラというのは、実車と比べて多少の形状の違いはあっても、それを差し引いて余りあるリアリティを感じさせてくれる「高級ディテールアップ用部品」だったことと思います。


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また組み立て説明書にも「地上最大の戦車模型」と銘打った約1/20スケールの「マンモス戦車シリーズ」と、八千円あれば(それでも当時としては超高額!)それらのキットをラジコン化出来るセット「ホビーコーン」の紹介が掲載されています。


―――― 日本ホビー1/35の61式は今回ご紹介した未組み立て品とは別に所謂「完成品のジャンク」を入手していたので、今回はそれを修復して在りし日の姿を再現してみました。

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組み立て説明書を頼りに破損箇所を確認し、紛失していたホィールの一部はお友達の「T2F」さんのご協力で型取り・複製をしていただきました。
基本的にはキットをストレート組みするとこんな姿になる……というのを再現しようとしましたが、細かい部品の欠損部分の補修によってほんの少しオリジナルと異なる部分もあります。
またキットでは砲口も開いていないので、ここだけはオリジナルと違ってしまうのを承知で雰囲気アップのために開口しました。
当時の模型マニアにも戦車のポイントである砲身の開口はドリルなどを使って行う方も多かっただろうという判断です。
もちろん付属デカールはありませんので、日の丸はデカール自作、その他のマーキングはクラシカルな雰囲気に仕上げるため手描きで表現してみました。
本来は砲塔を回すことによってスイッチがオン・オフされてモーターライズ走行しますが、経年変化でスィッチ部分と電池ボックス部分が錆びてボロボロだったため、市販品のスイッチと電池ボックスを車内に収めました。
でもギヤボックスとモーターは当時そのままのものです。
スィッチを入れると、まるで大地を踏みしめるようなユッタリとしたスピードで、ガガガガ!と大音響のギヤノイズを響かせて力強く走ります。

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こうしてみると後発のタミヤ1/35とはまた違った作風で独特のシルエットを持っていますが、非常に存在感が豊かなモデルのように思います。


―――― 余談ながら、日本ホビーの61式戦車つながりでの話題をひとつ。

1964年公開の東宝特撮映画『モスラ対ゴジラ』のヒトコマ。

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ゴジラ撃退作戦中、ゴジラの放つ放射能火炎で炎上する61式戦車です。

この当時、東宝には1954年公開『ゴジラ』のときに準備された1/10~1/12程度と思われるスケールのM24チャフィ戦車のミニチュアモデルのストックがあり、『モスラ対ゴジラ』にはこのM24の車台にアイハラ製1/15スケール金属モデル61式戦車(STA-4)の車体と砲塔を載せた撮影用モデルが登場しますが、この画面に映っているものは明らかにそれとは別の市販のプラモデルのように見えます。

これは何だろう? と検証していたところ、ウェブサイト「プラモデルの王国」の高見氏より「形状から見て恐らく日本ホビーの1/20だろう」という情報をいただきました。
日本ホビー1/20の61式戦車は1964年の発売とのことで、撮影当時パリパリの新製品だったことがわかります。

こういった戦車プラモは他の特撮映画でもよく活躍しています。
そんなところに注意しながらあらためて特撮映画のDVDを観てみるのも、マニアの密かなる楽しみですネ!
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クラウンモデル(日本)1/35 アメリカ陸軍 中戦車 M60パットン (1974年) [AFVモデル]

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CROWN MODEL 1/35 U.S.Medium Tank M60 Patton

1960年代より米軍戦車隊の主力として使われていたM60戦車の1/35モーターライズキットです。
どうしたわけか箱絵には「ウェッジシェイプ型」砲塔を搭載した改良型のM60A1が描かれていますが、キット内容は亀甲型砲塔を載せたM60……すなわち、他社プラモの製品名で模型ファンにはお馴染みとなった「M60スーパーパットン」です。


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クラウンのプラモデルの箱を眺めると、今となっては懐かしい1970年代の駄菓子屋さん、雑貨屋さんの匂いを思い出してしまいます。
あの頃、クラウンは1/35モーターライズをはじめとして1/50程度の大きさのノンスケール物などのモーターライズやゼンマイ走行など、多種多様な戦車モデルを発売していましたが、タミヤやニチモの戦車がどちらかというと大人びた雰囲気のマニア向けで模型専門店や大手デパートの模型売り場で買い求めるような品だったのに対して、クラウン製品は学校の近くの駄菓子屋や文具店で子供たちがその月のお小遣いの範疇で手軽に買えるシンプルな廉価版といった風情で、テリトリーの“棲み分け”ができていたような印象があります。
また同社1/35キットの多くはタミヤ製をはじめとする他社キットを大いに参考にして、また場合によっては複数社のキットやスケールの違うキットの内容までも組み合わせ、それを手本として独自の商品を仕立てていたように思われます。


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このM60パットンのキットは僕にとって「幻の品」でした。
少年時代に何かのお土産でもらって作った覚えがあるのですが、その後は一度も店頭で見ることがなく、もしかするとそんなキットは実在せず、長らくタミヤ1/48ミニタンクシリーズの「M60スーパーパットン」と勘違いしていたのかも知れない……と思っていたのです。
それが近年になってお友達に実在したことを教えてもらい、頭の中のモヤモヤとした霧が晴れたような思いで、そうこうするうちにオークションで現物を発見して嬉々として購入したのでした。


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このM60パットンは、車体は明らかにタミヤの「M60A1シャイアン」を参考にしていますが、シャシー部分は実車の「舟艇型」とも言われるなだらかな膨らみを割り切りよく省略して単純な箱型としてあります。


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砲塔はタミヤのシャイアンの「ウェッジシェイプ型」砲塔とは違って、M48パットンの亀甲型砲塔をベースに形状を微調整して105ミリ砲を搭載したものになっており、かなりきちんとM60用砲塔の形状を再現してあります(つまり単純なM48パットンの砲塔形状でもありません)。
当時はニチモや今井科学が大スケールでM60を製品化していたので、もしかするとそのあたりを手本にしたのかも知れませんが、いずれにせよこのクラウンのM60パットンは現代に至るも「唯一のM60の1/35スケールキット」ということになります。その意味では大変貴重です。


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チョコレートブラウンの成形色の部品がタミヤ1/35「M60A1シャイアン」です。
こうして並べると、まさに兄弟キットなのですが、先に述べたようにクラウンのキットはタミヤと「似て非なるもの」……部品分割やモールドの面にも年少者向けの低価格帯商品としての工夫が施されているようです。



―――― とにかくクラウンの製品は多種多様で、僕は今もその全貌を掴んでいません。
似たようなキットでも箱絵が違ってみたり、同じ型式でも大きさや価格が違ったり。
メーカーが違うのに中身が似ているキット……他社の模倣品ということも当時は多かったでしょう……だけど違う製品名。
似てるけどチョットだけ違うキット内容……そういうものが店頭に並んでいると、当時の子供はひどく混乱したものでした。


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例えば、これはクラウン1/35の「M60A2イロコイス」。
この箱絵の戦車……どう見ても、タミヤが1/48ミニタンクシリーズで発売していた「M60A1E2ビクター」と同じであり、しかもそのタミヤ自体、このビクターと実にソックリな戦車を1/35で「M60A2チェロキー」という名称で発売していました。

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形は同じなのにビクター。
同じ型式名なのにチェロキーとイロコイス。
さっぱりワケがわからない。

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21型とか52型とかの違いはあっても零戦は零戦だろ? これは何で名前まで違うの??……という感覚でした。
当時の田舎の子供に、それは模型メーカーが独自に付けた「製品名」だなんて解るわけがないのです(笑)
こちらもチョコレートブラウンの成形色の部品がタミヤ1/35「M60A2チェロキー」です。


……しかし今になって考えると、この製品名のアイデアというのも模型文化のひとつだったように思います。
以前、本家サイトでこんなコラムを書きました。

http://www.tepproject.com/banana/contents/essay/20011201.html

そこにも書きましたが、例えば海外の映画を日本で配給するときに“邦題”が付けられます。
本来その作品が持っている内容のイメージを損なうことなく、時代のトレンドにマッチした語句を散りばめてあり、原題と比べるとなかなか楽しいものですが、模型の商品名もそれに似た感覚で楽しみたいというのが僕の考えです。


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モノグラム ミリタリージープ (1957年) [AFVモデル]

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MONOGRAM 1/35(?) MILITARY JEEP with 37mm ANTI TANK GUN

モノグラムは1950年代から1/35スケールのミリタリーモデルを発売していましたが、アメリカ軍のトレードマークともいえる1/4トントラック“ジープ”も抜かりなくラインナップに加えています。
遊び心を忘れないモノグラムは、このキットではフィギュアとともに可愛らしい37ミリ対戦車砲をオマケに付けています。


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1972年になってタミヤが1/35MMシリーズでウィリスMBを発売したことにより、ようやくミリタリーモデルファンは本格的な第二次大戦型ジープのキットを作ることが出来るようになりましたが、それ以前はこのクラスのジープのキットとしてはスナップ1/40とともにこのモノグラムしかありませんでした。
他のアメリカ製ミリタリーキット同様、このジープも日本国内メーカーの製品に大きな影響を与えたようです。
単品販売の他、レベル(Revell)のブランドに移ってから一時は映画「MASH」のテレビシリーズのキャラクターモデルとしても販売されたり、M34イーガービーバー・トラックとセット販売されたりもしました。


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僕がこのキットを初めて見たのは高校生の頃で、当時は完成品写真パッケージで売られていました。
後になって1957年の初版以来、様々なバージョンの箱絵で販売し続けられていたことを知り、そのクラシカルな画風に魅せられて買い集めるようになりました。
過去に3つほど作ってみましたが、少しばかりディテールアップしたとしてもタミヤ1/35旧MMのジープの半分以下の時間で完成してしまう、何とも愛らしいキットでした。


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発売当初、明確なスケール表示はなかったようですが、おおむね1/35スケール・クラスでまとめられています。
厳密に計測はしていませんが、ご覧のようにタミヤ1/35のウィリスMB(新版)と比べてわずかに大柄で、およそ1/33スケールといったところでしょうか。


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シンプルなパーツ分割で組み立ては簡単。
ボディ側面にはM1カービンなどを収納する革製のライフルスカバードが一体成形されるといったモノグラムらしい遊びが加えられています。
この内容に関わらず、実際に組み立てて眺めてみると、とくに真横からのスタイリングなどは見事で、タイヤとシャシー、そしてボディのバランスが美しく決まります。

ただし、他の多くのジープのキット同様にフロントグリルには誤りがあり、MBジープらしさがやや損なわれているのが惜しまれます。

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第二次大戦型ジープ ウィリスMB及びフォードGPWの「ツラガマエ」の特徴は、ボンネット(エンジンフード)が地面に対して水平ではなく、なだらかな曲面になっており、それがフロントグリルグリルよりやや前に突き出ていて帽子のツバのように影を作り、そしてフロントグリルの縦穴9本のうち左右2本がやや短く、ヘッドライトの開口部分はわずかに「逆オムスビ型」をしていて、その中に奥目がちに真円のヘッドライトが光っている……といったところで、このいくつかのシンプルな特徴さえキチンと掴んでいれば、子供でも本物ソックリのジープの「似顔絵」が描けるほどなのですが、これらの特徴の中でも特にヘッドライト開口部の形状を正確に表現したのは全スケールのキットを通じてタミヤMMシリーズの「SASジープ(1974年発売)」が初めてでした。


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3体のフィギュアと37ミリ対戦車砲のボーナスパーツ。
特に37ミリ砲は2010年に至るまで他社からは発売されていない唯一のインジェクションキットです。
第二次大戦中期からはさすがに対戦車用としてはパワー不足でしたが、対戦車用徹甲弾や対歩兵用キャニスター弾など各種の砲弾が発射できるのが特徴で、取り扱いと整備も簡単だったことから大戦末期まで支援火器として重宝されたようなのでディオラマの小道具などには便利なのですが……。



―――― 15年ほど前に作った物の写真が残っていました。
お目汚しですがご笑覧ください。


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現在のキットと比べてディテール描写がシンプルなので、ドライブラシでモールドを浮かせていますが、こりゃあチョット、やりすぎですね!(笑)

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シンプルで作りやすくシルエットが良いということもあって僕はこのキットが大好きで、今もまた改めて作ってみようと思い、またひとつ、いじくり回している最中です。
いくつ作っても飽きないのもモノグラムのキットの良さではないかと思っています。


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タミヤ(日本)1/35 M4シャーマン (1966年初版)  [AFVモデル]

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TAMIYA 1/35 M4A3 Sherman 76mm Gun Tank

モーターライズ戦車キット華やかなりし頃にタミヤが発売した76ミリ砲搭載型M4A3シャーマンです。
ところがなぜか商品名が「M4A3E2」になってしまい、E2というのは装甲強化型の“戦線突破型”として造られた特殊な型式のシャーマンいわゆる“ジャンボ”のことなので、当時は戸惑ったマニアの方もいらっしゃったかも知れません。
当時このクラスのシャーマン戦車のプラモデルはレベル1/40(実寸1/35)とその亜流モデルしかなく、すべてサスペンションが水平ボリュートスプリング型(HVSS)だったので、このキットは珍しい垂直ボリュートスプリング型(VVSS)として喜ばれたそうです。



―――― まず、この画像をご覧ください。




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おっとっとスミマセン!
冒頭から誤解を招くような展開をしてしまいました。

この画像はタミヤのM4A3E2シャーマンの完成品ではありません。

僕が中学生の頃に作った「76ミリ砲型M4A3シャーマン」です。


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かれこれ30余年前のシロモノで、半分スクラップ状態で実家の倉庫に残っていました。
それを数年前に帰省した際に発見して、砲塔やシャシー、サスペンション、ギヤボックスのダメージが少なかったので、もしかしたらナントカ生き返るかも知れないゾ!と、一発奮起して補修・再塗装したものです。


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当時発売されていたタミヤの「M4A3E8イージーエイト」の車体と砲塔に小改造を加え「M10襲撃砲戦車」のシャシーや細部部品をそっくり流用して作ったものです。
記憶を辿りながら、なるべく当時の姿に戻そうと破損・欠損部分を修復していきましたが、イージーエイトの車体にM10のライトとライトガードを移植して接着位置を変えてあったり、砲塔のピストルポート(薬莢排出口)をプラ板とパテで自作したりといった工作は当時そのままです。
なにせ中学生にとって2個の戦車プラモデルを組み合わせて1台を作るというのはとても贅沢な作業なので、2個のキットの部品から使えるものは何でも使ってしまおうという感じで仕上げてあるのがわかります。
ヘタッピな中学生なりにいろいろ工夫して作っています。


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模型専門誌で紹介される山田 卓司氏やフランソワ・バーリンデン氏らの作品の影響もあって、あの頃から車体にアクセサリー部品(荷物)を満載した仕上げが好きで、このモデルでもM10やM3A2ハーフトラックに付属していた今となっては懐かしいアクセサリー、そしてティッシュペーパーやガーゼで作ったシートなどをいっぱい載せてあります。
よくよく考えると不自然な荷物の載せ方をしている部分も多いのですが、ここも敢えて当時の状態のままにしてあります。

また中学生当時はヘタな筆塗り仕上げで、厚塗りのため一部のモールドが消えかかっていたりとベッタベタな感じでしたが(笑)
その質感をそのまま残しつつも、今回はエアブラシを使って塗り直し、細部も小まめに塗り分けたので、当時より多少は小綺麗に仕上がっています。
もちろん当時はドライブラシもウォッシングも上手に出来ませんでしたから(笑)もっとベタ塗りな仕上げでした。
それを考えると今回の仕上げは、チョット反則ですネ。
これら再塗装にともなってデカールも貼り直しましたが、これはタミヤM4A3E2のオマージュにしようと思い、同キット付属のデカールをスキャンしたものを元に若干アレンジして自作したものを使っています。



中学生の僕がなぜこんなシャーマンを作ったかというと……。
昔はバンダイが「ミスターシャーマン」という商品名で1/48スケールの76ミリ砲型M4A3を発売しており、なんとかお手軽な工作でその1/35版が作ってみたいと思ったのと、老舗の模型店のショーウィンドウの中に飾られていたタミヤのM4A3E2の完成品を目撃して、同じような物が欲しくなってしまったからなんです。


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タミヤのM4A3E2は1966年末から3年ちょっとの間だけ販売されていたとのことで、僕が中学生の頃にはさすがにもう何処にも売っておらず、当時は古いタミヤ製品に対する知識もなかったので模型店に飾られていた完成品を見たときはマニアが古いキットを使って改造したものか、または昔タミヤがそんな製品を発売していたのか、どっちとも判断がつかず、いろいろ考えているうちに似たような物が欲しくなってしまったのです(笑)


―――― 僕が本家本元のタミヤ製M4A3E2を手に入れたのは、それから四半世紀以上も経ってからのことです。



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このM4A3E2のキットが大改修されて陸上自衛隊でも使われていた「M4A3E8イージーエイト」として生まれ変わり1970年から発売されるわけですが、設計の古さから来るフランクな部分を差し引いても、このM4A3E2(実際にはM4A3)のキットのほうが第二次大戦を舞台にしたディオラマや情景写真では使い道が広いし、絶版を惜しんだ方も多いかも知れません。
絶版にともなって、もしかするとその昔、僕と同じような改造で76ミリ砲型M4A3をお作りになった方って案外多いのではないでしょうか。
お小遣いを叩いてイージーエイトとM10(M36ジャクソンでも良かったんだけど、M10のほうがアクセサリーがいっぱい付いていて100円ほど高くてもお買い得な感じがしました)を買ってきて、M10のシャシーにイージーエイトのボディが何の改造もなしにパコッ!とはまってくれたときには、ちょっと感動しませんでした?(笑)



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なかなか高級感のあるキット内容で、走行機構用金属部品がブリスターパックされています。一昔前の高級キットにはよく見られたパッケージング手法ですが、資料によればタミヤの戦車プラモデルでブリスターパックが使われたのはこのキットが初めてだったそうです。


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ゴムキャタピラとサスペンション部品。
僕も含めて後の世代のモデラーは、このサスペンションは同社の「M36ジャクソン駆逐戦車」「M10襲撃砲戦車」のものと同一だろうと思い込んでしまいがちですが、実際にはまったくの別物で、サスペンション本体のスプリングケース部分とサスペンションアームが別部品化されています。スプロケットなどの形状もM10/36とは違いがあります。
キャタピラは実車のT-48型を再現。これは「ラバーシェブロン」と言われるもので表面が硬質のゴム製であり、またシャーマンを含む米軍戦車のキャタピラテンショナー(キャタピラの緊張具合の調整装置)はきつめにセッティングされてキャタピラはピンと張っているので、このようなモーターライズ走行用ゴム製キャタピラでも思った以上に実車の雰囲気を醸し出していますが、ただ残念なことにキャタピラ両側にある特徴的な山型突起付きエンドコネクターが省略されており実感を損ねるとともに、たぶんキットをモーターライズ走行させてもキャタピラ脱落の度合いが高かったのではないかと思います。


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ボディと砲塔は基本的に後のイージーエイトと同じですが、実車同様にイージーエイトにはこのキットの車体部品にオーバーフェンダーを追加モールドしたことがわかります。
少年時代にイージーエイトを作ったとき、箱絵と違って向かって右側のヘッドライトとクラクションホーンの位置が逆になっているのが不思議でしたが(箱絵が正解なのは皆さんご承知の通りです)このM4A3E2でも同じ誤りがあります。

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1990年代以降、シャーマン戦車は1/35でも高品質の製品が豊富に発売されるようになり、今ではとくに難しい工作を行わなくても立派な76ミリ砲型M4A3の模型を手に入れることが出来るようになりました。
製品そのものの出来映えに不満を覚えたり、我慢しなくても済むようになったのです。

模型ファンとして本当に嬉しい反面、この古いタミヤのキットや少年時代の自分が作った作品を眺めていると、こういうのどかな時代も模型作りというもの自体になにやらオモシロ可笑しい楽しさがあって、何故だかいつもワクワクしていたなぁ……と思ってしまいます。


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オオタキ(日本)1/35 ドイツ陸軍装甲車 ピューマ.3 (1967年) [AFVモデル]

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OTAKI 1/35 Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”


“Puma”は第二次大戦後半期にドイツ軍によって使われた高性能の装甲偵察車で、正式名称はSd.Kfz.234/2といいます。
プラモデルファンの間では“Puma”のドイツ語風発音の「プーマ」という名前でお馴染みですが、大滝はピューマと読ませています。
またキットの組み立て説明書には「Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”」と詳しい正式名称が表記されているにも関わらず箱に印刷された商品名は「ピューマ.3」となっており、この「.3」が何を意味するのか、気になるところです。


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1970年代初頭のタミヤ情景写真コンテスト作品集「パチッ特集号」を見ていると、明らかにタミヤ製品ではない不思議なシルエットの装甲車モデルを発見することがあります。
前々から、これはいったい何だろう? と疑問に思っていたのですが、このオオタキのキットを見つけてようやく疑問が解けました。
まだまだ市販されているキットの種類も少なく、また実車の詳しい資料も簡単には手に入らなかったあの当時、エネルギッシュな先輩方はこのキットを改造してドイツ軍の大型装甲車を作り、情景写真に使っていたのです。


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以前オオタキの「T-92デストロイヤー」を採り上げましたが……

http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-04-29

その項で、
「1960年代のオオタキ製AFVキットの持ち味は 独自のアレンジと男らしいしつらえ、これに尽きると思います」
……と述べました。

今回のピューマ.3にも同じことが言えます。
この頃のオオタキ……立ち位置がブレていません!(笑)

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もしかすると1960年代から発売されていたオーストリアのロコ社製HOスケールモデルを参考にして、図面を引き延ばす感じでデッサンしたのか、それともほんの2~3枚の平面図を基に設計して、その際に実車の形態的特徴が薄められてしまったのでしょうか……これまた戦車などにお詳しい方が何の補足説明もなしにこのキットの完成品を見せられたら、何処の国の何という装甲車なのかしばらく考え込んでしまいそうな、実に思い切ったアレンジに仕上がっています。


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シングルモーターライズ仕様ですが、走行系には興味深い設計がなされています。
後輪2軸はギヤボックス。ここはタミヤが1966年に発売した1/35モーターライズ「M8グレイハウンド」と同じようにギヤボックスそのものがシーソー式に動いてサスペンションが効くようになっており、前後の車軸に輪ゴムをかけて両方が駆動するようになっている点まで似ています。
発売時期を考えると、タミヤのグレイハウンドへの対抗意識があったのでしょうか?


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最前部はスィッチを兼ねてのステアリング可動。
その後の車軸はプラ素チックの弾性を利用したサスペンション可動。
なにせタイヤが8個もある車体ですから、そのどれもにサスペンション機構や駆動機構を盛り込んで、動かすと楽しいキットに仕上がるように工夫されています。


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現在の目で見るとスケールモデルというよりファンタジーに近い珍品ですが、冒頭で述べたように、他に同種のキットが無かった1960年代当時、ドイツ軍の大型装甲車を再現した貴重なキットとしてマニアの改造ベースとしての需要もあったようです。

今これを作るならば、実車との違いはそのままに「これがオオタキのテイストなのだ」と納得して丁寧にストレイト組みで作るか、フィクションモデルと割り切って自分なりに工作を加えてオリジナル仕様で作って楽しむか……迷ってしまいます。


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アダムズ(アメリカ)1/40 ホーク ミサイル バッテリー (1958年初版) [AFVモデル]

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ADAMS 1/40 “HAWK” MISSILE BATTERY


“ホーク”は1950年代後半から開発が始まり1960年代より広く使われた地対空誘導弾で、陸上自衛隊・高射特科部隊でも改良を重ねながら使い続けられ、先の湾岸戦争でもニュース映像に登場した長寿でポピュラーなミサイルシステムです。
運営システム自体は模型化した場合の見栄えがいいし、また新鋭兵器としてマスコミで採り上げられたためか、一時は各社から製品化されていました。

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興味深いのは、1958年にアダムズとレベルが個別に1/40キットを発売して、同じスケールで同じアイテムが2社によってバッティングしてしまいましたが、様々な資料で時系列を検証してみると、この当時すなわち1950年代末にはホークミサイルはまだ運用試験段階であり、実際に部隊配備されたのは1960年代になってからとのことで、アダムズやレベルが「西側期待の新鋭兵器」としてずいぶん早々とホークミサイルの製品化に取り組んだことがわかります。


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アダムズのキットはすぐにスナップに受け継がれ、1970年代初期までライフライクからも販売されていましたが、それとは別に日本国内ではクラウンモデルなど数社がこれらアダムズ由来の1/40キットの模倣品を販売しており、ベテランモデラーの中には見かけたことのある方も多いかと思います。


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クラウンからはアダムズ製(スナップのブランドで日本に輸入されていました)のジープ、ホークミサイル、M20装甲車、120ミリ高射砲などが模倣され、後には売れ行きを考えたのか一部の製品が1/35スケール表示になって店頭に並んでいた時期もありました。

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僕も中学生の頃、老舗の模型屋さんでクラウンのホークとM20装甲車を見つけて「こんなキットがあったのか!」と驚き、価格も確か300円かそこらだったので喜んで買って帰ったものの、M20を手許にあったタミヤ1/35の旧モーターライズ版M8グレイハウンド装甲車と比べると車体などの主要部品が一回り以上小さく、実寸は1/35ではないことに気づいてひどくガッカリした経験があります(笑)

……このクラウンのキットとの出会い、そして1970年代~80年代初期にかけて専門誌で紹介されていた大塚康生 先生の模型コレクション紹介記事によって往年の1/40スケールミリタリー輸入キットに注目し始め、オリジナル版のホークミサイルやM20装甲車、オネストジョンが欲しいと思うようになり、僕は骨董品キット探しの長い旅に発ったのでした(笑)


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参考までに、アダムズ製品現役の頃、組み立て説明書に掲載されていたカタログもご紹介しておきましょう。
これらの多くが様々な後発キットの手本となったり模倣されたりしている、ミリタリーモデル界のご先祖様的ラインナップです。



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アダムズのキットはミサイル本体とミサイルランチャーの他に、ミサイル運搬・装填用のクローラ式ローダーXM-501とレーダー・コンポーネンツ、整備員のフィギュアまで付属した豪華版で、このキットをひとつ買ってくるだけで米陸軍対空ミサイル部隊の攻撃準備状況が机上に再現出来ます。
後には各社から様々な戦場のシチュエイションを再現した「ジオラマセット」キットが発売されましたが、このホークミサイルバッテリーはベース(地面)部品こそ含まれていないものの、ジオラマ系製品の走りとも言えるのではないかと思います。

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小型で愛らしいXM-501は老舗FMC社の製品で、ジープ史上最高の名車と名高いウィリスMD(M38A1)“ブルドッグ”ジープのパワートレインが使われているそうです。
キットではこの小さな車体を丁寧に再現しており、楽しくなります。

ちなみにクローラ式車体に勇ましいミサイルを3本も背負った姿から、この車体から直接ミサイルを発射する……つまりXM-501は攻撃用の車両だと勘違いした人も多く、恐らく模倣品を発売したクラウンもそう思い込んでいたのではないかと推測されます。
実際には先にも述べたように、ミサイル発射装置(ランチャー)まで予備のミサイルを運搬し、装填するための支援機材です。

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お馴染みの一体成形ながらポージングやモールドが秀逸なフィギュアたち。
少しリラックスした雰囲気でホークミサイルシステムの設営に携わっている人々の姿が活写されています。




―――― ところで、ライフライク版特有のあっさりした味付けのパッケージをシケシゲとながめていると……思わぬものを発見してしまいました。


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絵の片隅に小さく「亜樹」という文字が読めます。

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これは、どう見ても東洋人の名前ではナカローカ? 
しかも響きが日本人名に思えます。
ライフライクのパッケージアーティストは日本人だったのでしょうか? 
タッチや色使いが同社のロングトムなどとは似通っていますが、M40自走砲やオネストジョン、L.V.T(A)5は明らかに別人のタッチです。
何人かのイラストレーターが分担して手がけていたのでしょうが、後になって同社のカーモデル(パイロ社製1/32を受け継いだもの)のパッケージにも「亜樹」の署名を発見することが出来ました。
亜樹サン、ライフライクの秘蔵っ子だったのかな?

……こんなことをあれこれと推理するのも、古いキットの楽しみ方のひとつではないでしょうか。

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アダムズ(アメリカ)1/40 M40 自走155ミリ加農砲 (1957年初版) [AFVモデル]

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ADAMS1/40 M40 155mm SELF-PROPELLED GUN


第二次大戦末期のヨーロッパ戦線に登場して後の朝鮮戦争でも活躍した自走155ミリ砲M40の精密キットです。
終戦間際に登場したこと、HVSS(水平ボリュートスプリング式サスペンション)を装備していること、またビジョンブロック付きキューポラなど後期型のシャーマン戦車に採用された特徴的な部品が使われていることなどから、シャーマン戦車の最終形態であるM4A3E8イージーエイトをベースに開発された自走砲だと思われがちですが、実際にはコンチネンタルエンジン搭載のM4シャーマンをベースに車格を拡張して造られた信頼性の高い自走砲で「第二次大戦中に開発されたものの中では最良の自走カノン砲だった」とする資料もあります。


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1950年代後半に登場したアダムズの1/40ミリタリーモデルはすぐにスナップ社へと受け継がれ、日本では1960年代にマルサン商会が輸入して「マルサンスナップ」の商標でお馴染みだったようです。
1970年代初頭まではライフライク社が金型を受け継いで販売していましたが、現在ではさすがに見かけなくなりました(それぞれSNAP1/40 LIFELIKE1/40とメーカー表記されています)。

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アダムズ由来の1/40ミリタリーモデルには、どれも印象的なニックネームが付けられていて、ときにはそれが商品名になっていることもありましたが、このM40自走砲には155ミリ砲の壮大な攻撃力に似合わない“CHOO CHOO BABY(汽車ポッポあかちゃん)”という可愛らしいニックネームが与えられています(スラングでは別の意味合いもありそうですが、ここでは触れません)。


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このキットも50余年前の骨董品で、登場時期が早かったことと品質が高かったこともあり国内外の各模型メーカーから手本とされたり模倣されたりしました。

M40自走砲というと日本では“BIG SHOT(ビッグショット)”という名前でお馴染みですが、実車のM40には特定のコードネームはありません。
これはタミヤが1963年に発売した1/21スケールのデラックスキットの商品名が「ビッグショット」だったからで、恐らくタミヤもこの1/21キット発売に関してはアダムズ1/40キットを先発の高品質キットとして参考にしたこともあったのではないかと思いますが、その後に登場した各社のキットは今度はタミヤ1/21を模倣することが多く、商品名にも堂々とタミヤと同じ「ビッグショット」を使っています。
21世紀に入って台湾のAFVクラブがようやくM40の1/35キットを発売しましたが、これまたタミヤ製品へのオマージュでしょうか、ビッグショットという商品名がわざわざ付けられています。

たしかにビッグショットとは強力な巨砲を搭載する無骨な自走砲にうってつけの商品名ですが、これは大戦中にM40自走砲の生産メーカーだったプレッシド・スティール・カー社の敷地内にあるテスト場で撮られたと思われる試作型T83の記録写真を参考にしたからでしょう。
写真に写っているテスト用車両には“BIG SHOT”という固有のニックネームが大きく書き込まれていました。

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1960年代~1970年代にかけてはタミヤ1/21、ロコHO(1/87)、マッチボックス1/76、そしてタミヤのビッグショット経由でミツワ1/48などなど……様々なプラモデルや玩具、ミニカーに影響を与えたと思われるアダムズのM40ですが、第二次大戦末期から朝鮮戦争にかけて実戦に参加したという実車の経歴、そしてそのマッシブなスタイルなど非常に魅力的なアイテムであるにも関わらず、1980年代以降は現代的設計センスで作られたスタンダードスケールのキットが発売されなかったのが驚きです。AFVクラブのキットが登場するまで、実に30年以上の空白期間があります。

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アダムズのキットは総じて、全体的に緻密で彫りの深いモールドがなされており、組み立てている最中も仕上げの塗装でどんな調子になるかがとても楽しみになります。
このM40では各種車外装備品の綺麗な再現の他、オイル注入口キャップには極小の鎖までモールドされている凝りようです。
またシャーマン戦車とそのバリエイションモデルを模型化する場合、昔のキットではモーターライズ仕様が一般的だったためシャーマンの特徴的な部位のひとつであるフロントデファレンシャルカバーの形状が内蔵するギヤボックスの影響で実車と異なるブサイクな形になってしまうことが多かったのですが、アダムズのM40は完全ディスプレイキットとして設計されているのでフロントデファレンシャルカバーは実車と同じ形状をきちんと再現しており、たいへん好感が持てます。

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巨大な155ミリ砲を支えるガンマウント下部は完成するとあまり見えませんが、それでも少し傾斜を持たせてセッティングされている本車の特徴がきちんと表現されています。


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米軍機械化砲兵のフィギュアたち。
生き生きした動きが表現され、それぞれのキャラクターづけまでなされているように見えて楽しくなってきます。


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組み立て説明書の実車解説に添えられたイラスト。
ヨーロッパ戦線に始めてM40が出現した際に参加した“コローネの戦い”の様子を再現しているようですが、実物の写真や資料が手に入りにくかった当時、こういったイラストはディオラマ作りのための良いアイデアソースとなったのではないでしょうか。

1/40というと現在では馴染みの薄いスケールに思えますが、あまりトレンドにこだわらずにそれぞれのスケールレンジで楽しむのもオツなもののように思います。
アダムズ・スナップ、そしてレベルなどの1/40モデルを揃えれば、それだけでもかなり豊かな世界観が展開できるので、いつかは現代の製品群とはひと味違ったラインナップをズラリと作り揃えて楽しんでみたいものです。

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レンウォール(アメリカ)1/32 M47 ジェネラルパットンII 中戦車 (1958年頃) [AFVモデル]

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Renwal 1/32 M47 GENERAL PATTON II


1951年よりアメリカ陸軍主力戦車として配備されたM47パットンIIですが、海外に輸出されて内戦や紛争で使われたものは別として、本家本元の米軍所属車両としては大きな戦闘を経験しないままわずか5年半程度で退役したため、かなり地味な存在となっているようです。

ところがこれが映画の世界となると話は別で、各国に輸出されていたからハリウッド映画の撮影班が海外のロケ先で容易に手配出来る信頼性の高い劇用車だったらしく『バルジ大作戦』『パットン大戦車軍団』『アルデンヌの戦い』『アンツィオ大作戦』など様々な映画で第二次大戦中の米・独 両軍戦車を演じており、スクリーン上ではM24チャフィ軽戦車などと並んでマサに売れっ子役者でした。

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そういった幾多の映画の影響があったのかなかったのか、それとも単に外国製高級キットを模倣したかっただけなのか、1960年代の国産プラモデル界ではパットン戦車が大人気で、このレンウォールの大作キットも日本国内の様々なメーカーから手本とされ、似たようなキットが市場に溢れていたようです。
なかには箱絵ごと模倣してしまった物や、モーターライズ、リモコン仕様にしてしまった物もあったようです。
なにせ“高級舶来品”であるレンウォール製品はヘタをすると当時の大学出の初任給ほどの価格で売られることもあったらしく、国内メーカー製の廉価版は喜ばれたのかも知れません。


実車のM47パットンIIについては個人的な思い出もあります。
若い頃に在籍していた映像専修学校の学部がS県内にあったのですが、その近くに大手ミリタリーショップ店主さんの所有する大きな倉庫があり、その敷地内にこのM47がデン!と置かれていて、何度か見物に行ったことがあります。
旧防衛庁が1960年代に国産戦車“ST”(後の61式戦車)開発にあたって参考資材として導入し、後に廃棄処分したスクラップを回収して、外見だけ復元したものです。
背丈があるからか、自衛隊基地祭で見物したことのある国産の74式戦車より遙かに大きく感じられ、まるで鉄でできた巨人がアグラをかいて座っているようで、たいへん強そうに見えたのを覚えています。
古い米軍戦車など見る機会も少ないので興味津々、車体はもちろんフェンダーも何もかも異様に頑丈そうだったから、ゲンコでガンガン叩いてみたら持ち主の方にすごくイヤな顔をされたのもハッキリ覚えています(笑)


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僕がこのキットを初めて目にしたのは1980年代に入った頃でした。
当時はレベルのブランドで売られていて、完成品見本写真パッケージとなっていたので箱を見ただけでだいたいの内容が理解できたのですが、どう考えても新製品とは思えないレトロな風合いだったため、これは絶対に古いキットの再販だ!と思い、多少値は張りましたが恐る恐る買って帰りました。
内容を検討して、これは1950年代のレンウォール製品だろうと見当を付けたのはしばらく経ってからのことでした。


この時代のレンウォール製品を手に取ると、僕の頭の中には「教材」という言葉が浮かびます。

下はよくレンウォールのキットに入っていたミニカタログですが……
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後に日本国内のメーカーからも手本にされた透明の人体や動物の模型などなど……。
どの製品も、現代的な感覚においての「プラモデル」というよりは、作って楽しめる「教材」というテイストが強いように思います。
それと同じ香りを、僕はレンウォールのミリタリーモデルの分野でも感じ取ってしまいます。

実は僕は本家サイト“BANANA GUYs”のコンテンツでも同じ事を書いているのですが、このパットン戦車のプラモデルは、子供から「パパ、戦車ってどういうものなの?」と尋ねられたお父さんが休日に買ってきて、お話をしながら子供と一緒に作る……もしかするとお父さんは在郷軍人かも知れないし退役軍人かも知れない。予備役かも知れない。そういう立場で、自分の職場でよく目にしていた“道具”を、模型作りによって子供に説明する……そんな類の製品なのではないかと思ったりするのです。



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溢れんばかりの重量感!
戦車の「重さ」まで表現したような力強いデッサンで仕上げられています。
やはり実戦で使用されて武勲をたてたとか、ドラマチックなエピソードを持っていない車体なので、模型メーカーは1960年代も後半に入るとM47に対して途端に冷淡になります。
精密なスケールモデルとしての鑑賞に耐えるM47のキットの出現は1970年代後半に入ってイタラエレイ(現イタレリ)が自国イタリアの陸軍で使われていた車体を綿密に取材して1/35で模型化するまで待たねばなりませんでしたが、前時代的なしつらえとはいえレンウォールのキットも模型的な魅力に溢れています。


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実車のサスペンションは所謂トーションバー方式ですが、このキットはホィール2つを一組にしたシーソー式でカチャカチャと可動するようになっていて、完成してみるといかにもトーションバーで動いているように見えるという楽しいギミックが付いています。
キャタピラは現在のキットに見られるポリ製のものよりやや硬い材質で、少々扱いが厄介です。


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これは後のイタラエレイ1/35キットにも影響を与えたのではないかと思われるエンジン部分。
コンチネンタル製ツインターボV型12気筒空冷ガソリンエンジンの上面部分が一枚の大きな部品に彫り込まれており、小型ハッチをいくつも手動で開閉させて覗き見ることができます。


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このキット最大のチャームポイント。
砲身をゆっくり押し下げると、砲塔上の2つのハッチが開いて、ちょっとコミカルな造作の戦車隊員がヒョッコリ顔を出すオモチャ的なギミックが仕込まれています。
実際に作ってみるとたいへん微笑ましく、子供が見ると大喜びしそうです。
キットにはこれ以外に3体のフィギュアが含まれています。



―――― 20年ほど前に作った際の写真が残っていました。ご笑覧ください。


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いやぁ失敗しました!
このキット、そのまま作ると、どうも見覚えのないヘッドライトの形状になってしまうので、金属材でライトガードを自作するなどして、よく実車写真で見かける型式のものに改造してしまったのですが、よくよく考えるとレンウォールはM47の中でも極めて初期の型を取材して模型化したのではないかと思うのです。
余計な小細工などせず、キットのままの仕様で作るべきでした。

こうして一個作ってもまったく飽きない楽しいキットですから、またいつかもう一個手がけて……そのときはキット内容に忠実に仕上げてみようと思っています。


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レンウォール(アメリカ)1/32 75ミリ自動高射砲スカイスイーパー (1957年頃) [AFVモデル]

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Renwal 1/32 75mm Anti-Aircraft Gun M51 SKYSWEEPER

M51スカイスイーパーは1950年代中盤、ソ連空軍が米本土にいつ飛来するかわからないといった危機感の中で生まれた、いわば冷戦緊迫化時代の申し子とでも言える対空火器で、飛躍的に高速化した敵爆撃機を電子計算機とレーダー、高射砲弾速射機能を連動させて撃ち落とそうという極初期の弾道精密計算型防空システムです。
1950年代、レンウォールはこのような冷戦下における「西側の花形マシン」を次々に模型化しており、このスカイスイーパーの箱にも「我々の都市上空を守り抜く……」といった勇ましいキャッチフレーズが誇らしげにあしらわれていて、嗚呼そういうコワイ時代だったのだ……と、ナニヤラ納得してしまいます。


レンウォールの1/32ミリタリーモデルは1970年代初期に同社の消滅後に金型がレベルに引き取られたらしく、1980年代以降にはレベル「ヒストリーメイカーシリーズ」に含まれたり、また単発で再版され、一時はレベル傘下に入ったマッチボックスのブランドからも販売されたアイテムもありましたが、どうしたわけかこのスカイスイーパーとラクロスミサイルキャリアなど数点はレベルから再販されることがなく、稀少品となってしまいました。
21世紀に入ってからもレベルは温存しているレンウォールの金型を使って時折限定復刻を行っているようで、レンウォール初版の箱絵まで復刻させた品も存在しますが、スカイスィーパーは一向に姿を現しません。
金型の破損などで“幻のキット”になってしまったのでしょうか??

下はレンウォール製品に付属していたミニカタログ記載の当時のラインナップです。

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このスカイスイーパーをはじめとして、8インチ自走榴弾砲、ナイキやホークのミサイル群、5トンレッカー車など、現在に於いても他社からビッグスケールで発売されていない珍しいアイテムが多く含まれていることがわかります。
280ミリ原子砲“アトミック・アーニー”など、今後も模型化するメーカーは出てこないのではないでしょうか。


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スカイスイーパーの開発にあたっては、第二次大戦型の設計を持つ75ミリ高射砲を基にしながらも最新鋭の高射砲を造ろうということで、当時の一流重機械工業や精密機器工業が総出に近いかたちで駆り出されており、その開発チームにはスペリージャイロスコープ社、A.C.スパーク社、GM、アメリカンマシンアンドファンダリーなどなど、当時の先端を行く錚々たる企業名が並んでいます。
このキットでもそういった先進性をアピールするべく「電算機」のコントロールパネルのハッチが開いて中が見えたりスコープが起倒式になっていたりと、当時の未来的メカニズムを演出するギミックが備えられています。


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操作要員のフィギュアもセットされています。
実はレンウォールは総じてフィギュアの造型が弱く、せっかくボリューム感のあるミリタリーマシンのキットであっても付属のフィギュアを使ってしまうと何ともチープな仕上がりになってしまう危険性があり、このあたりの造形力、企画力はレンウォールと同時期の1950年代からフィギュア付きの各種ミリタリーモデルを豊富にリリースしていたアダムズ・スナップやレベルの1/40、そしてモノグラム1/35などと比べると、いささか見劣りしてしまいます。
そんな中でもこのキット付属のフィギュアはレンウォール製としてはかなり「上の部」に入る仕上がりで、頑張ってヒケ部分を埋めて服のシワのモールドを彫り込んだり、ヘッド部分を出来の良いエアフィックス1/32フィギュアの部品と交換したりすれば、もしかしたらなんとかなるんじゃないかなぁ……と思わせるものがあります。

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地味な存在ながら、移動姿勢と射撃姿勢の両方が完全再現出来るオール可動キットです。
タミヤ往年の名作 1/21スケール「155ミリ砲M2ロングトム」が1963年に、そしてMMシリーズの88ミリ砲が1972年に登場するまでは、恐らく世界的に見ても火砲モデルの最高峰のひとつだったのではないかと思えるほどのデラックスモデルです。
ここまでの火砲キットをリリースしておきながら、レンウォールはなぜ牽引する車両のほうまで作らなかったのかが不思議です。



―――― 今となっては稀少なキットではありますが、部品段階でもある程度は完成品の姿が予想できる各種車両のキットとは違い、火砲のキットというのはなかなかミステリアスで、なんとか完成品を見てみたいという衝動に駆られてしまい5年ほど前に一個作ってみました。
最近では珍しい、けっこう真面目なスカイスイーパーの完成品写真です。ご笑覧ください。


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しかし……これがまたエラク建て付けの悪いキットでした(笑)
何せ50余年も昔のキットだから仕方ないのですが「面が出ない」というのでしょうか、現在のキットと違って箱組みの部品の接着部分が表面に露出してしまうので、それを他のモールドを消さないように注意しつつ整形し、きちんと直角を出して複雑な火器ならではのシャープさを演出するのが少々厄介なキットでした。
ただ、丁寧な作業を心がければそれに応えてくれるキットでもありました。
あまり飛躍した工作はせず、キット内容を尊重しつつ各部にそれらしいディテールを加えたり、注意書きのデカールを他から流用して貼り込んで、雰囲気アップに挑戦しています。
当初は陸自仕様で作ろうとしていましたが、レンウォールのスカイスイーパーに付属しているデカールの米軍高射砲部隊のマーキング「ホウキで敵機を払い落とす魔女」がイタク気に入ってしまい、1950年代からの貴重なデカールでもあるし、これを使用することにして必然的に米軍仕様となってしまいました。
昔は自衛隊のパレードなどでもお馴染みのメカでしたから、このキットを入手して実際に組み立てた方の多くはマーキングを工夫して陸自仕様にしたのではないかと思います。


ちなみにこのスカイスイーパーとベストカップルといえば、やはりコレでしょう。
農機や各種トラクタの名門アリスチャルマース社が開発したM8A1砲兵用トラクタです。
牽引状態で写真を撮ってみました。
Skysweeper05.jpg


別項で牽引している日東科学製M8A1トラクタも採り上げています。
是非ご覧ください。
http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

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