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オオタキ(日本) デストロイヤーT-92 (1964年) [AFVモデル]

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OTAKI T-92 Airborne Light Tank


T-92はC-130ハーキュリーズ輸送機による空輸、最前線への緊急展開を視野に入れた小型軽量かつ強力な武装を持つ新世代型戦車として1953年に開発されたものですが、あまりにも新機軸を盛り込みすぎて量産に向かず、試作のTナンバーが取れないまま博物館行きとなってしまった珍しい車体です。
その前衛的なスタイルが話題となったこともあり、アメリカの模型メーカーが商品化。その影響で日本国内のメーカーも各種の製品を発売することになりました。
そのひとつがこのオオタキのデストロイヤーです。
オオタキの箱絵にはガスマスクと暗視装置を顔面に装着してカービン銃を持つ兵士が描かれ、T-92のキャラクターに相応しい未来科学戦争絵巻が再現されているようです。


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ちなみに実車のT-92には固有のコードネームはありません。
デストロイヤーとは、実はタミヤが1963年にこのT-92を「ワールドタンクシリーズ」の中の一台として発売したときに付けた商品名で、オオタキは名前も造作もこのタミヤのデストロイヤーを参考にして、ふたまわりほど大きなキットとして設計したようです。

僕は以前、タミヤが1967年に「1/50ポケットミュージアムシリーズ」として発売したT-92デストロイヤーを作ったことがあり、もっと大きなT-92のプラモデルはないのかなと探していてこのオオタキ製キットを見つけました。


参考までに、博物館に展示されているT-92の実車写真を見つけましたので載せてみますと……
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……実際には、こんな感じの戦車です。

では、オオタキのデストロイヤーはどうでしょう?

オオタキの戦車といえば1979年になって発売された1/35タイガーI中期型が当時としては名作だったのでよく知られていますが、1960年代のオオタキ製AFVキットの持ち味は「独自のアレンジと男らしいしつらえ」……これに尽きると思います。

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このデストロイヤーも例外ではなく、資料不足でわからない部分はわからないなりに旺盛な想像力を発揮して「こんな具合でどうだ!」と力業でまとめてしまったかのような独特のプロポーションを持っています。
ちなみにこのキット、スケール表示はまったくありませんが、主砲などのパーツを観察してみると、どうも1/32スケール程度の大きさのようです。


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極めつけは架空の「ミサイル発射機構の導入」で、実車のT-92では12.7ミリ機関銃が装備されている小型銃塔に、オオタキのデストロイヤーではまるでエイハブ船長が白鯨に投げつける銛もかくやと思われる太く尖ったミサイルが装着されており、それがスプリングで発射できるようになっています。
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このようなアレンジのため、組み立て説明書に描かれた真正面からの「完成図」では、例えものすごく戦車に詳しい人であっても、何の補足説明もなしにこの絵を見せられたら、いったい何という戦車なのかわからないのではないかと思うほど男らしく我が道を行くアレンジが成された戦車プラモデルに仕上がっているのです。
もはや、オオタキがT-92を参考にしつつも独自に設計したオリジナルSF戦車といっても過言ではありません。

……しかし、1960年代中盤のことです。
実物を正確に再現しようにも資料が手に入らない、多少のスケール感は壊してでも何かしら遊べるギミックを加えておかなければ子供たちは買ってくれない……そんな当時の状況では、こういうキットが多かったのも無理のないことでしょう。


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パッケージにも大きく書かれている「強力ハイゼットモーター」によるシングルモーターライズ走行キットです。シンプルな構造のメタル製ギヤボックスといい、丁寧に組み込めば元気に走ってくれそうです。

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なんとなく全体のフォルムが掴める組み立て説明書の図。
90年代以降に登場した精密かつ正確なAFVキットを見慣れている目には、ビックリするほどおおらかで不思議な印象のキットに見えてしまいますが、これも歴史の生き証人です。
近いうちに、キットの持ち味を生かしつつ丁寧に作って楽しみたいと思います。

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