オオタキ(日本)1/35 ドイツ陸軍装甲車 ピューマ.3 (1967年) [AFVモデル]
OTAKI 1/35 Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”
“Puma”は第二次大戦後半期にドイツ軍によって使われた高性能の装甲偵察車で、正式名称はSd.Kfz.234/2といいます。
プラモデルファンの間では“Puma”のドイツ語風発音の「プーマ」という名前でお馴染みですが、大滝はピューマと読ませています。
またキットの組み立て説明書には「Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”」と詳しい正式名称が表記されているにも関わらず箱に印刷された商品名は「ピューマ.3」となっており、この「.3」が何を意味するのか、気になるところです。
1970年代初頭のタミヤ情景写真コンテスト作品集「パチッ特集号」を見ていると、明らかにタミヤ製品ではない不思議なシルエットの装甲車モデルを発見することがあります。
前々から、これはいったい何だろう? と疑問に思っていたのですが、このオオタキのキットを見つけてようやく疑問が解けました。
まだまだ市販されているキットの種類も少なく、また実車の詳しい資料も簡単には手に入らなかったあの当時、エネルギッシュな先輩方はこのキットを改造してドイツ軍の大型装甲車を作り、情景写真に使っていたのです。
以前オオタキの「T-92デストロイヤー」を採り上げましたが……
http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-04-29
その項で、
「1960年代のオオタキ製AFVキットの持ち味は 独自のアレンジと男らしいしつらえ、これに尽きると思います」
……と述べました。
今回のピューマ.3にも同じことが言えます。
この頃のオオタキ……立ち位置がブレていません!(笑)
もしかすると1960年代から発売されていたオーストリアのロコ社製HOスケールモデルを参考にして、図面を引き延ばす感じでデッサンしたのか、それともほんの2~3枚の平面図を基に設計して、その際に実車の形態的特徴が薄められてしまったのでしょうか……これまた戦車などにお詳しい方が何の補足説明もなしにこのキットの完成品を見せられたら、何処の国の何という装甲車なのかしばらく考え込んでしまいそうな、実に思い切ったアレンジに仕上がっています。
シングルモーターライズ仕様ですが、走行系には興味深い設計がなされています。
後輪2軸はギヤボックス。ここはタミヤが1966年に発売した1/35モーターライズ「M8グレイハウンド」と同じようにギヤボックスそのものがシーソー式に動いてサスペンションが効くようになっており、前後の車軸に輪ゴムをかけて両方が駆動するようになっている点まで似ています。
発売時期を考えると、タミヤのグレイハウンドへの対抗意識があったのでしょうか?
最前部はスィッチを兼ねてのステアリング可動。
その後の車軸はプラ素チックの弾性を利用したサスペンション可動。
なにせタイヤが8個もある車体ですから、そのどれもにサスペンション機構や駆動機構を盛り込んで、動かすと楽しいキットに仕上がるように工夫されています。
現在の目で見るとスケールモデルというよりファンタジーに近い珍品ですが、冒頭で述べたように、他に同種のキットが無かった1960年代当時、ドイツ軍の大型装甲車を再現した貴重なキットとしてマニアの改造ベースとしての需要もあったようです。
今これを作るならば、実車との違いはそのままに「これがオオタキのテイストなのだ」と納得して丁寧にストレイト組みで作るか、フィクションモデルと割り切って自分なりに工作を加えてオリジナル仕様で作って楽しむか……迷ってしまいます。