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モノグラム(アメリカ)1/32 M4シャーマン ヘッジホッグ (1975年) [AFVモデル]

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MONOGRAM1/32 M4 Sherman “hedgehog”


第二次大戦中に行われた有名なノルマンディー上陸作戦。
フランス沿岸に上陸した米軍戦車隊は、ボガージュと呼ばれるその地帯特有の生け垣に行く手を阻まれました。
この生け垣を戦車が乗り越える際、戦車の車体の中で最も装甲板の薄い「底面」を敵に晒してしまい、待ちかまえていたドイツ軍の対戦車砲に撃たれてしまうのです。
そこで生け垣を乗り越えるのではなく、戦車の重量を利用して力まかせに突き崩すための器具が開発され、車体前面に装着されました。
この器具を装着した戦車は“ヘッジホッグ(ハリネズミ)”と呼ばれました。
また、ドイツ軍の強力な対戦車ロケット兵器(成形炸薬弾)の攻撃から身を守るため、車体に金属製の籠を溶接して、その中に大量の土嚢を詰め込んで車体をすっぽり覆ってしまう防御策がとられることもあり、これは“ソフトアーマー”と呼ばれました。

……モノグラムのシャーマン戦車は、そんな前線の状況を実感たっぷりに再現してありました。

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他の数多くの模型メーカーに先駆けて、モノグラムは1950年代から1/35のAFVモデルを販売していましたが、どうしたわけか70年代に入ってからは、AFVはスケールを1/32に変更して新シリーズの展開を始めました。
もしかすると1/35クラスでは日本製キットの勢いが凄まじかったので、欧米では古くより親しまれていた「古巣」ともいえる1/32クラスに鞍替えして安定を図ったのかも知れません。

僕がこのキットを初めて作ったのは中学時代……70年代の終わり頃でした。
あの当時、前期型の溶接構造車体を再現したこのクラスのシャーマン戦車のモデルは他社から発売されていなかったので、鹿児島市内の輸入品専門店でこのキットを発見したときは狂喜乱舞しました。

当時からAFVは1/35スケールを主に作っていたので、1/32のこのシャーマンは少し大柄ですが、当時発売されていた田宮のシャーマン・イージーエイトも1/35表示ながら実寸は1/32だということを知っていたので、あまり気にしませんでした。
何より、シェパード・ペイン氏による完成見本と、M4A3に改造してディオラマにしてある作例には、雷に打たれたようにシビレました。

1970年代中盤に入ると、豪華に描かれたプラモデルの箱絵が実際の商品内容と異なり、消費者に誤解を与えるのではないかという議論が消費者団体から巻き起こったとかで、この頃からのアメリカ製プラモデルパッケージは派手な絵画を使わず、キットの完成品写真で構成することが多くなってきました。
モノグラムは、単なる小綺麗な完成見本写真ではなく模型界の巨匠 シェパード・ペイン氏の手による完成品の写真をボックストップに使うことによって製品のクォリティを強く印象づけており、非常に新鮮でした。
しかもあの頃発売されていたバージョンには、ペイン氏によるキットの改造記事と詳細な人形の塗装方法等を紹介した豪華なカラー印刷リーフレットまでオマケに入っていて、高級品の風格がありました。


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実際にはこのシャーマン、ノルマンディーの戦闘でヘッジホッグとして使われたものとは多少型式が違うのですが、もうそんなことはお構いなしです。とにかくカッコイイ! その一言に尽きました。

なんと表現すればよいのか……モノグラムのミリタリーモデル全般に言えることですが、モールド(彫刻表現)と部品の一体化の妙味によって、まるで金属モデルのような重量感とプラモデルならではの繊細さの両方を持ち合わせているような魅力があります。

このキットの特性を生かしながら、田宮の1/35実寸1/32に近いM10またはM36駆逐戦車のサスペンション部品を流用して改造したり、名作の誉れ高いエアフィックス社1/32マルチポーズフィギュアセットと組み合わせてのモデリングを楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

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一体成形を多用しながらも精密感を損ねないモノグラムの得意技が、このキットでもあますところなく発揮されています。
人形も全身像2体、半身像1体が付属していました。
特殊ポリ樹脂製キャタピラは、普通のプラモデルでは製作者が熱したドライバー等で焼き止めして作るのが通例ですが、このキットでは最初から焼き止め加工されたものが入っていました。


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付属の人形。男前ですね!
一体成形ながら彫りが深く、またシャツの胸をはだけていたりするラフないでたちがいかにも職人アメリカ戦車兵といった雰囲気で、プラモデルの人形の彫刻技術が飛躍的に発達した現代の目で見ても決して見劣りしません。それどころか、現代のキットにもこんな小粋な人形を付けて欲しいと思ってしまうほどです。


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車体前面に装着する特殊な器具……ブッシュカッター、ヘッジロウカッター、また発案者である米陸軍のカーチス・キュリン軍曹の名前をとってキュリン・デバイスとも呼ばれるこのツールと、車体全てを覆う土嚢のソフトアーマーも、ほとんど一体成形。
これも丁寧に塗装すると、得も言われぬ立体感を醸し出してくれます。


現在では超精密な戦車プラモデルが数多く流通していますが、そんな今こそ温故知新、昔を思い出しながら、この勇ましいシャーマン・ヘッジホッグを丁寧に作り上げてみたい……キットを眺めながら、いつもそんなことを考えていましたが、どうやら2009年暮れになってレベル・ブランドから久しぶりに再販がかかったようです!

どれどれ……久しぶりに作ってみようかなぁ!

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