バンダイ (日本) 1/24 ウィリスジープ (1970年) [AFVモデル]
※旧 今井科学 1968年製
BANDAI 1/24 WILLYS JEEP (1970) ※ORIGINAL IMAI KAGAKU 1968 Release.
第二次大戦中に登場して全戦線で勇名を馳せたウィリスMBジープの1/24モーターライズキットです。
元々は今井科学が1960年代末に発売したものですが、ほどなくバンタイが販売元となりしばらく店頭で見かけたので、このバンダイ版に見覚えのある方のほうが多いかも知れません。
箱絵は「空挺作戦前夜」といったところでしょうか。
空挺隊員と彼らを運ぶ輸送機のパイロットがジープの傍らで打ち合わせ中の様子が描かれています。
これは小松崎 茂 画伯の手によるもので、今井科学から発売されていたときはジープと人物のみが切り抜かれたレイアウトになっていましたが、バンダイ版ではモノクロのM60中戦車と155ミリカノン砲が背景に合成されました。
M60も155ミリ砲も今井科学が1/24スケールで発売していたので、その関係もあったのではないでしょうか。
キット内容は当時としては標準的なもので、ランナー配置を見てもそのまとまりの良さがうかがえます。
1/24でモーターライズ走行させるため、モーターは車内に、そして電池ボックスはジープの相棒として有名な1/4トンカーゴトレーラに載せて、ジープ本体のプロポーションが電池ボックスによって著しく損なわれるのを防いでいます。
カーゴトレーラ上の電池ボックスは大型の弾薬箱のような箱で覆い、カモフラージュされます。
また、弾薬箱だけでは寂しいと感じたのでしょうか、畳んだテントとバッグがアクセサリーとして含まれているのが微笑ましく感じられます。
そのうえ、このカーゴトレーラは配線でジープ本体とつながるにも関わらず、取り外し可能なように設計されています。
また、カーゴトレーラは単体で自立するように、スタンドがスプリングを使って折り畳み可動になっているのも気が効いています。
走行のためのギヤはちゃんとデフの中に収められ、ドライブシャフトを介して後輪を駆動させます。
前輪はステアリングが効くようになっているので、残念ながら実車と同じ四輪駆動のギミックは無理だったようですが、このキットの原体験を持つ方々にお話をうかがうと、予想していたよりも走行性能は良かったようです。
作るとなかなか楽しいキットに思えますが……待てよ、このキット、本当に1/24スケールなんだろうか?
昔のキットは箱に書かれたスケール表示と実際のスケールが違うことが多々あります。
簡単に検証してみることにしましょう。
ハセガワの1/24スケール「ジープ ウィリスMB」。
2003年に発売された、現時点では最も新しい1/24スケールのウィリスジープのモデルです。
近年のプラモデルは目の肥えたマニアのニーズに応えて基本的な寸法等はできるだけ正確に再現されているので、ハセガワのジープの内容を信用して比較してみました。
ハセガワのジープはタミヤ1/35(MMシリーズ新設計版)と同じくボディの主要部品とフロントグリルが一体成形となっているので、比較対象としてはもってこいです。
左上のシャシーフレーム部品とランナーでつながっているのがバンダイ(旧 今井科学)1/24。
右下がハセガワ1/24。
……基本的な寸法はほとんど同じで、不自然なほど寸法や角度が違う部分は見あたりません。
自動車の模型ではそのイメージを左右する重要な要素であるタイヤも比較してみました。
左の中央にランナーが付いているのがハセガワ1/24。
右がバンダイ(旧 今井科学)1/24。
直径も幅も厚みも、驚くほど合致しています。
これを見る限り、今井科学は1960年代末という時期に相当マジメにジープを1/24で模型化したことがわかります。
ただ、残念なのは……「顔」です。
ジープ好きの人間がいちばん気にするポイントのひとつが、顔……フロントグリルの出来映えです。
今井科学のジープは、同時期の各国産メーカー品によく見られるように、ジープのフロントグリルの特徴をつかみ取れず、ずいぶんとコミカルな顔立ちになってしまいました。
恐らく、大戦型のウィリスMBと戦後に登場したウィリスMC・M38の特徴が混ざってしまったのでしょう。
ここが実車に似ていたならば、かなり高い支持を得ることの出来るキットになったのではないでしょうか。
実は車体各部にもウィリスMBとM38の特徴が混在しています。
(第二次大戦型・ウィリスMBジープ)
(戦後に登場したウィリスMCジープ・M38)
……とは言え、ジープの型式・年式による細部の違いを詳しく解説した資料はなかなか手に入らなかった時代の製品ですし、この当時はゼンマイ動力で走る1/24ジープのキットはあっても、モーターライズの1/24キットは珍しい部類に入りました。
これだけでも今井科学の意気込みが伝わってきます。
現在では超精密なディスプレイキットが主流となり、モーターライズで走行するスケールモデルは極少数派になってしまいましたが……オトナの手のひらに乗るサイズのウィリスジープがテーブルの上をすぃーっと走る光景を想像すると……なんだかワクワクしませんか?
ハセガワ1/24ジープの細部部品を流用したりモールドを移植して仕上げれば「実車のようなスタイルのウィリスジープがモーターライズで走る」様子を楽しめる……そんなディテールアップをしてみるか??
それとも「昔はこんな面白いキットがあったんだなァ」と往時を偲んで完全にキットの内容そのままで作って楽しむか??
うぅむ……とても悩ましいキットです(笑)