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クラウンモデル(日本)1/35 アメリカ陸軍 中戦車 M60パットン (1974年) [AFVモデル]

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CROWN MODEL 1/35 U.S.Medium Tank M60 Patton

1960年代より米軍戦車隊の主力として使われていたM60戦車の1/35モーターライズキットです。
どうしたわけか箱絵には「ウェッジシェイプ型」砲塔を搭載した改良型のM60A1が描かれていますが、キット内容は亀甲型砲塔を載せたM60……すなわち、他社プラモの製品名で模型ファンにはお馴染みとなった「M60スーパーパットン」です。


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クラウンのプラモデルの箱を眺めると、今となっては懐かしい1970年代の駄菓子屋さん、雑貨屋さんの匂いを思い出してしまいます。
あの頃、クラウンは1/35モーターライズをはじめとして1/50程度の大きさのノンスケール物などのモーターライズやゼンマイ走行など、多種多様な戦車モデルを発売していましたが、タミヤやニチモの戦車がどちらかというと大人びた雰囲気のマニア向けで模型専門店や大手デパートの模型売り場で買い求めるような品だったのに対して、クラウン製品は学校の近くの駄菓子屋や文具店で子供たちがその月のお小遣いの範疇で手軽に買えるシンプルな廉価版といった風情で、テリトリーの“棲み分け”ができていたような印象があります。
また同社1/35キットの多くはタミヤ製をはじめとする他社キットを大いに参考にして、また場合によっては複数社のキットやスケールの違うキットの内容までも組み合わせ、それを手本として独自の商品を仕立てていたように思われます。


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このM60パットンのキットは僕にとって「幻の品」でした。
少年時代に何かのお土産でもらって作った覚えがあるのですが、その後は一度も店頭で見ることがなく、もしかするとそんなキットは実在せず、長らくタミヤ1/48ミニタンクシリーズの「M60スーパーパットン」と勘違いしていたのかも知れない……と思っていたのです。
それが近年になってお友達に実在したことを教えてもらい、頭の中のモヤモヤとした霧が晴れたような思いで、そうこうするうちにオークションで現物を発見して嬉々として購入したのでした。


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このM60パットンは、車体は明らかにタミヤの「M60A1シャイアン」を参考にしていますが、シャシー部分は実車の「舟艇型」とも言われるなだらかな膨らみを割り切りよく省略して単純な箱型としてあります。


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砲塔はタミヤのシャイアンの「ウェッジシェイプ型」砲塔とは違って、M48パットンの亀甲型砲塔をベースに形状を微調整して105ミリ砲を搭載したものになっており、かなりきちんとM60用砲塔の形状を再現してあります(つまり単純なM48パットンの砲塔形状でもありません)。
当時はニチモや今井科学が大スケールでM60を製品化していたので、もしかするとそのあたりを手本にしたのかも知れませんが、いずれにせよこのクラウンのM60パットンは現代に至るも「唯一のM60の1/35スケールキット」ということになります。その意味では大変貴重です。


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チョコレートブラウンの成形色の部品がタミヤ1/35「M60A1シャイアン」です。
こうして並べると、まさに兄弟キットなのですが、先に述べたようにクラウンのキットはタミヤと「似て非なるもの」……部品分割やモールドの面にも年少者向けの低価格帯商品としての工夫が施されているようです。



―――― とにかくクラウンの製品は多種多様で、僕は今もその全貌を掴んでいません。
似たようなキットでも箱絵が違ってみたり、同じ型式でも大きさや価格が違ったり。
メーカーが違うのに中身が似ているキット……他社の模倣品ということも当時は多かったでしょう……だけど違う製品名。
似てるけどチョットだけ違うキット内容……そういうものが店頭に並んでいると、当時の子供はひどく混乱したものでした。


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例えば、これはクラウン1/35の「M60A2イロコイス」。
この箱絵の戦車……どう見ても、タミヤが1/48ミニタンクシリーズで発売していた「M60A1E2ビクター」と同じであり、しかもそのタミヤ自体、このビクターと実にソックリな戦車を1/35で「M60A2チェロキー」という名称で発売していました。

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形は同じなのにビクター。
同じ型式名なのにチェロキーとイロコイス。
さっぱりワケがわからない。

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21型とか52型とかの違いはあっても零戦は零戦だろ? これは何で名前まで違うの??……という感覚でした。
当時の田舎の子供に、それは模型メーカーが独自に付けた「製品名」だなんて解るわけがないのです(笑)
こちらもチョコレートブラウンの成形色の部品がタミヤ1/35「M60A2チェロキー」です。


……しかし今になって考えると、この製品名のアイデアというのも模型文化のひとつだったように思います。
以前、本家サイトでこんなコラムを書きました。

http://www.tepproject.com/banana/contents/essay/20011201.html

そこにも書きましたが、例えば海外の映画を日本で配給するときに“邦題”が付けられます。
本来その作品が持っている内容のイメージを損なうことなく、時代のトレンドにマッチした語句を散りばめてあり、原題と比べるとなかなか楽しいものですが、模型の商品名もそれに似た感覚で楽しみたいというのが僕の考えです。


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モノグラム ミリタリージープ (1957年) [AFVモデル]

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MONOGRAM 1/35(?) MILITARY JEEP with 37mm ANTI TANK GUN

モノグラムは1950年代から1/35スケールのミリタリーモデルを発売していましたが、アメリカ軍のトレードマークともいえる1/4トントラック“ジープ”も抜かりなくラインナップに加えています。
遊び心を忘れないモノグラムは、このキットではフィギュアとともに可愛らしい37ミリ対戦車砲をオマケに付けています。


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1972年になってタミヤが1/35MMシリーズでウィリスMBを発売したことにより、ようやくミリタリーモデルファンは本格的な第二次大戦型ジープのキットを作ることが出来るようになりましたが、それ以前はこのクラスのジープのキットとしてはスナップ1/40とともにこのモノグラムしかありませんでした。
他のアメリカ製ミリタリーキット同様、このジープも日本国内メーカーの製品に大きな影響を与えたようです。
単品販売の他、レベル(Revell)のブランドに移ってから一時は映画「MASH」のテレビシリーズのキャラクターモデルとしても販売されたり、M34イーガービーバー・トラックとセット販売されたりもしました。


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僕がこのキットを初めて見たのは高校生の頃で、当時は完成品写真パッケージで売られていました。
後になって1957年の初版以来、様々なバージョンの箱絵で販売し続けられていたことを知り、そのクラシカルな画風に魅せられて買い集めるようになりました。
過去に3つほど作ってみましたが、少しばかりディテールアップしたとしてもタミヤ1/35旧MMのジープの半分以下の時間で完成してしまう、何とも愛らしいキットでした。


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発売当初、明確なスケール表示はなかったようですが、おおむね1/35スケール・クラスでまとめられています。
厳密に計測はしていませんが、ご覧のようにタミヤ1/35のウィリスMB(新版)と比べてわずかに大柄で、およそ1/33スケールといったところでしょうか。


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シンプルなパーツ分割で組み立ては簡単。
ボディ側面にはM1カービンなどを収納する革製のライフルスカバードが一体成形されるといったモノグラムらしい遊びが加えられています。
この内容に関わらず、実際に組み立てて眺めてみると、とくに真横からのスタイリングなどは見事で、タイヤとシャシー、そしてボディのバランスが美しく決まります。

ただし、他の多くのジープのキット同様にフロントグリルには誤りがあり、MBジープらしさがやや損なわれているのが惜しまれます。

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第二次大戦型ジープ ウィリスMB及びフォードGPWの「ツラガマエ」の特徴は、ボンネット(エンジンフード)が地面に対して水平ではなく、なだらかな曲面になっており、それがフロントグリルグリルよりやや前に突き出ていて帽子のツバのように影を作り、そしてフロントグリルの縦穴9本のうち左右2本がやや短く、ヘッドライトの開口部分はわずかに「逆オムスビ型」をしていて、その中に奥目がちに真円のヘッドライトが光っている……といったところで、このいくつかのシンプルな特徴さえキチンと掴んでいれば、子供でも本物ソックリのジープの「似顔絵」が描けるほどなのですが、これらの特徴の中でも特にヘッドライト開口部の形状を正確に表現したのは全スケールのキットを通じてタミヤMMシリーズの「SASジープ(1974年発売)」が初めてでした。


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3体のフィギュアと37ミリ対戦車砲のボーナスパーツ。
特に37ミリ砲は2010年に至るまで他社からは発売されていない唯一のインジェクションキットです。
第二次大戦中期からはさすがに対戦車用としてはパワー不足でしたが、対戦車用徹甲弾や対歩兵用キャニスター弾など各種の砲弾が発射できるのが特徴で、取り扱いと整備も簡単だったことから大戦末期まで支援火器として重宝されたようなのでディオラマの小道具などには便利なのですが……。



―――― 15年ほど前に作った物の写真が残っていました。
お目汚しですがご笑覧ください。


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現在のキットと比べてディテール描写がシンプルなので、ドライブラシでモールドを浮かせていますが、こりゃあチョット、やりすぎですね!(笑)

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シンプルで作りやすくシルエットが良いということもあって僕はこのキットが大好きで、今もまた改めて作ってみようと思い、またひとつ、いじくり回している最中です。
いくつ作っても飽きないのもモノグラムのキットの良さではないかと思っています。


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タミヤ(日本)1/35 M4シャーマン (1966年初版)  [AFVモデル]

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TAMIYA 1/35 M4A3 Sherman 76mm Gun Tank

モーターライズ戦車キット華やかなりし頃にタミヤが発売した76ミリ砲搭載型M4A3シャーマンです。
ところがなぜか商品名が「M4A3E2」になってしまい、E2というのは装甲強化型の“戦線突破型”として造られた特殊な型式のシャーマンいわゆる“ジャンボ”のことなので、当時は戸惑ったマニアの方もいらっしゃったかも知れません。
当時このクラスのシャーマン戦車のプラモデルはレベル1/40(実寸1/35)とその亜流モデルしかなく、すべてサスペンションが水平ボリュートスプリング型(HVSS)だったので、このキットは珍しい垂直ボリュートスプリング型(VVSS)として喜ばれたそうです。



―――― まず、この画像をご覧ください。




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おっとっとスミマセン!
冒頭から誤解を招くような展開をしてしまいました。

この画像はタミヤのM4A3E2シャーマンの完成品ではありません。

僕が中学生の頃に作った「76ミリ砲型M4A3シャーマン」です。


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かれこれ30余年前のシロモノで、半分スクラップ状態で実家の倉庫に残っていました。
それを数年前に帰省した際に発見して、砲塔やシャシー、サスペンション、ギヤボックスのダメージが少なかったので、もしかしたらナントカ生き返るかも知れないゾ!と、一発奮起して補修・再塗装したものです。


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当時発売されていたタミヤの「M4A3E8イージーエイト」の車体と砲塔に小改造を加え「M10襲撃砲戦車」のシャシーや細部部品をそっくり流用して作ったものです。
記憶を辿りながら、なるべく当時の姿に戻そうと破損・欠損部分を修復していきましたが、イージーエイトの車体にM10のライトとライトガードを移植して接着位置を変えてあったり、砲塔のピストルポート(薬莢排出口)をプラ板とパテで自作したりといった工作は当時そのままです。
なにせ中学生にとって2個の戦車プラモデルを組み合わせて1台を作るというのはとても贅沢な作業なので、2個のキットの部品から使えるものは何でも使ってしまおうという感じで仕上げてあるのがわかります。
ヘタッピな中学生なりにいろいろ工夫して作っています。


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模型専門誌で紹介される山田 卓司氏やフランソワ・バーリンデン氏らの作品の影響もあって、あの頃から車体にアクセサリー部品(荷物)を満載した仕上げが好きで、このモデルでもM10やM3A2ハーフトラックに付属していた今となっては懐かしいアクセサリー、そしてティッシュペーパーやガーゼで作ったシートなどをいっぱい載せてあります。
よくよく考えると不自然な荷物の載せ方をしている部分も多いのですが、ここも敢えて当時の状態のままにしてあります。

また中学生当時はヘタな筆塗り仕上げで、厚塗りのため一部のモールドが消えかかっていたりとベッタベタな感じでしたが(笑)
その質感をそのまま残しつつも、今回はエアブラシを使って塗り直し、細部も小まめに塗り分けたので、当時より多少は小綺麗に仕上がっています。
もちろん当時はドライブラシもウォッシングも上手に出来ませんでしたから(笑)もっとベタ塗りな仕上げでした。
それを考えると今回の仕上げは、チョット反則ですネ。
これら再塗装にともなってデカールも貼り直しましたが、これはタミヤM4A3E2のオマージュにしようと思い、同キット付属のデカールをスキャンしたものを元に若干アレンジして自作したものを使っています。



中学生の僕がなぜこんなシャーマンを作ったかというと……。
昔はバンダイが「ミスターシャーマン」という商品名で1/48スケールの76ミリ砲型M4A3を発売しており、なんとかお手軽な工作でその1/35版が作ってみたいと思ったのと、老舗の模型店のショーウィンドウの中に飾られていたタミヤのM4A3E2の完成品を目撃して、同じような物が欲しくなってしまったからなんです。


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タミヤのM4A3E2は1966年末から3年ちょっとの間だけ販売されていたとのことで、僕が中学生の頃にはさすがにもう何処にも売っておらず、当時は古いタミヤ製品に対する知識もなかったので模型店に飾られていた完成品を見たときはマニアが古いキットを使って改造したものか、または昔タミヤがそんな製品を発売していたのか、どっちとも判断がつかず、いろいろ考えているうちに似たような物が欲しくなってしまったのです(笑)


―――― 僕が本家本元のタミヤ製M4A3E2を手に入れたのは、それから四半世紀以上も経ってからのことです。



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このM4A3E2のキットが大改修されて陸上自衛隊でも使われていた「M4A3E8イージーエイト」として生まれ変わり1970年から発売されるわけですが、設計の古さから来るフランクな部分を差し引いても、このM4A3E2(実際にはM4A3)のキットのほうが第二次大戦を舞台にしたディオラマや情景写真では使い道が広いし、絶版を惜しんだ方も多いかも知れません。
絶版にともなって、もしかするとその昔、僕と同じような改造で76ミリ砲型M4A3をお作りになった方って案外多いのではないでしょうか。
お小遣いを叩いてイージーエイトとM10(M36ジャクソンでも良かったんだけど、M10のほうがアクセサリーがいっぱい付いていて100円ほど高くてもお買い得な感じがしました)を買ってきて、M10のシャシーにイージーエイトのボディが何の改造もなしにパコッ!とはまってくれたときには、ちょっと感動しませんでした?(笑)



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なかなか高級感のあるキット内容で、走行機構用金属部品がブリスターパックされています。一昔前の高級キットにはよく見られたパッケージング手法ですが、資料によればタミヤの戦車プラモデルでブリスターパックが使われたのはこのキットが初めてだったそうです。


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ゴムキャタピラとサスペンション部品。
僕も含めて後の世代のモデラーは、このサスペンションは同社の「M36ジャクソン駆逐戦車」「M10襲撃砲戦車」のものと同一だろうと思い込んでしまいがちですが、実際にはまったくの別物で、サスペンション本体のスプリングケース部分とサスペンションアームが別部品化されています。スプロケットなどの形状もM10/36とは違いがあります。
キャタピラは実車のT-48型を再現。これは「ラバーシェブロン」と言われるもので表面が硬質のゴム製であり、またシャーマンを含む米軍戦車のキャタピラテンショナー(キャタピラの緊張具合の調整装置)はきつめにセッティングされてキャタピラはピンと張っているので、このようなモーターライズ走行用ゴム製キャタピラでも思った以上に実車の雰囲気を醸し出していますが、ただ残念なことにキャタピラ両側にある特徴的な山型突起付きエンドコネクターが省略されており実感を損ねるとともに、たぶんキットをモーターライズ走行させてもキャタピラ脱落の度合いが高かったのではないかと思います。


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ボディと砲塔は基本的に後のイージーエイトと同じですが、実車同様にイージーエイトにはこのキットの車体部品にオーバーフェンダーを追加モールドしたことがわかります。
少年時代にイージーエイトを作ったとき、箱絵と違って向かって右側のヘッドライトとクラクションホーンの位置が逆になっているのが不思議でしたが(箱絵が正解なのは皆さんご承知の通りです)このM4A3E2でも同じ誤りがあります。

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1990年代以降、シャーマン戦車は1/35でも高品質の製品が豊富に発売されるようになり、今ではとくに難しい工作を行わなくても立派な76ミリ砲型M4A3の模型を手に入れることが出来るようになりました。
製品そのものの出来映えに不満を覚えたり、我慢しなくても済むようになったのです。

模型ファンとして本当に嬉しい反面、この古いタミヤのキットや少年時代の自分が作った作品を眺めていると、こういうのどかな時代も模型作りというもの自体になにやらオモシロ可笑しい楽しさがあって、何故だかいつもワクワクしていたなぁ……と思ってしまいます。


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オオタキ(日本)1/35 ドイツ陸軍装甲車 ピューマ.3 (1967年) [AFVモデル]

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OTAKI 1/35 Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”


“Puma”は第二次大戦後半期にドイツ軍によって使われた高性能の装甲偵察車で、正式名称はSd.Kfz.234/2といいます。
プラモデルファンの間では“Puma”のドイツ語風発音の「プーマ」という名前でお馴染みですが、大滝はピューマと読ませています。
またキットの組み立て説明書には「Panzersphwagen(Sd.Kfz.234/2) mit 5cm KWK.L/60 “PUMA”」と詳しい正式名称が表記されているにも関わらず箱に印刷された商品名は「ピューマ.3」となっており、この「.3」が何を意味するのか、気になるところです。


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1970年代初頭のタミヤ情景写真コンテスト作品集「パチッ特集号」を見ていると、明らかにタミヤ製品ではない不思議なシルエットの装甲車モデルを発見することがあります。
前々から、これはいったい何だろう? と疑問に思っていたのですが、このオオタキのキットを見つけてようやく疑問が解けました。
まだまだ市販されているキットの種類も少なく、また実車の詳しい資料も簡単には手に入らなかったあの当時、エネルギッシュな先輩方はこのキットを改造してドイツ軍の大型装甲車を作り、情景写真に使っていたのです。


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以前オオタキの「T-92デストロイヤー」を採り上げましたが……

http://vintageplamo.blog.so-net.ne.jp/2010-04-29

その項で、
「1960年代のオオタキ製AFVキットの持ち味は 独自のアレンジと男らしいしつらえ、これに尽きると思います」
……と述べました。

今回のピューマ.3にも同じことが言えます。
この頃のオオタキ……立ち位置がブレていません!(笑)

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もしかすると1960年代から発売されていたオーストリアのロコ社製HOスケールモデルを参考にして、図面を引き延ばす感じでデッサンしたのか、それともほんの2~3枚の平面図を基に設計して、その際に実車の形態的特徴が薄められてしまったのでしょうか……これまた戦車などにお詳しい方が何の補足説明もなしにこのキットの完成品を見せられたら、何処の国の何という装甲車なのかしばらく考え込んでしまいそうな、実に思い切ったアレンジに仕上がっています。


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シングルモーターライズ仕様ですが、走行系には興味深い設計がなされています。
後輪2軸はギヤボックス。ここはタミヤが1966年に発売した1/35モーターライズ「M8グレイハウンド」と同じようにギヤボックスそのものがシーソー式に動いてサスペンションが効くようになっており、前後の車軸に輪ゴムをかけて両方が駆動するようになっている点まで似ています。
発売時期を考えると、タミヤのグレイハウンドへの対抗意識があったのでしょうか?


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最前部はスィッチを兼ねてのステアリング可動。
その後の車軸はプラ素チックの弾性を利用したサスペンション可動。
なにせタイヤが8個もある車体ですから、そのどれもにサスペンション機構や駆動機構を盛り込んで、動かすと楽しいキットに仕上がるように工夫されています。


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現在の目で見るとスケールモデルというよりファンタジーに近い珍品ですが、冒頭で述べたように、他に同種のキットが無かった1960年代当時、ドイツ軍の大型装甲車を再現した貴重なキットとしてマニアの改造ベースとしての需要もあったようです。

今これを作るならば、実車との違いはそのままに「これがオオタキのテイストなのだ」と納得して丁寧にストレイト組みで作るか、フィクションモデルと割り切って自分なりに工作を加えてオリジナル仕様で作って楽しむか……迷ってしまいます。


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アダムズ(アメリカ)1/40 ホーク ミサイル バッテリー (1958年初版) [AFVモデル]

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ADAMS 1/40 “HAWK” MISSILE BATTERY


“ホーク”は1950年代後半から開発が始まり1960年代より広く使われた地対空誘導弾で、陸上自衛隊・高射特科部隊でも改良を重ねながら使い続けられ、先の湾岸戦争でもニュース映像に登場した長寿でポピュラーなミサイルシステムです。
運営システム自体は模型化した場合の見栄えがいいし、また新鋭兵器としてマスコミで採り上げられたためか、一時は各社から製品化されていました。

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興味深いのは、1958年にアダムズとレベルが個別に1/40キットを発売して、同じスケールで同じアイテムが2社によってバッティングしてしまいましたが、様々な資料で時系列を検証してみると、この当時すなわち1950年代末にはホークミサイルはまだ運用試験段階であり、実際に部隊配備されたのは1960年代になってからとのことで、アダムズやレベルが「西側期待の新鋭兵器」としてずいぶん早々とホークミサイルの製品化に取り組んだことがわかります。


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アダムズのキットはすぐにスナップに受け継がれ、1970年代初期までライフライクからも販売されていましたが、それとは別に日本国内ではクラウンモデルなど数社がこれらアダムズ由来の1/40キットの模倣品を販売しており、ベテランモデラーの中には見かけたことのある方も多いかと思います。


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クラウンからはアダムズ製(スナップのブランドで日本に輸入されていました)のジープ、ホークミサイル、M20装甲車、120ミリ高射砲などが模倣され、後には売れ行きを考えたのか一部の製品が1/35スケール表示になって店頭に並んでいた時期もありました。

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僕も中学生の頃、老舗の模型屋さんでクラウンのホークとM20装甲車を見つけて「こんなキットがあったのか!」と驚き、価格も確か300円かそこらだったので喜んで買って帰ったものの、M20を手許にあったタミヤ1/35の旧モーターライズ版M8グレイハウンド装甲車と比べると車体などの主要部品が一回り以上小さく、実寸は1/35ではないことに気づいてひどくガッカリした経験があります(笑)

……このクラウンのキットとの出会い、そして1970年代~80年代初期にかけて専門誌で紹介されていた大塚康生 先生の模型コレクション紹介記事によって往年の1/40スケールミリタリー輸入キットに注目し始め、オリジナル版のホークミサイルやM20装甲車、オネストジョンが欲しいと思うようになり、僕は骨董品キット探しの長い旅に発ったのでした(笑)


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参考までに、アダムズ製品現役の頃、組み立て説明書に掲載されていたカタログもご紹介しておきましょう。
これらの多くが様々な後発キットの手本となったり模倣されたりしている、ミリタリーモデル界のご先祖様的ラインナップです。



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アダムズのキットはミサイル本体とミサイルランチャーの他に、ミサイル運搬・装填用のクローラ式ローダーXM-501とレーダー・コンポーネンツ、整備員のフィギュアまで付属した豪華版で、このキットをひとつ買ってくるだけで米陸軍対空ミサイル部隊の攻撃準備状況が机上に再現出来ます。
後には各社から様々な戦場のシチュエイションを再現した「ジオラマセット」キットが発売されましたが、このホークミサイルバッテリーはベース(地面)部品こそ含まれていないものの、ジオラマ系製品の走りとも言えるのではないかと思います。

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小型で愛らしいXM-501は老舗FMC社の製品で、ジープ史上最高の名車と名高いウィリスMD(M38A1)“ブルドッグ”ジープのパワートレインが使われているそうです。
キットではこの小さな車体を丁寧に再現しており、楽しくなります。

ちなみにクローラ式車体に勇ましいミサイルを3本も背負った姿から、この車体から直接ミサイルを発射する……つまりXM-501は攻撃用の車両だと勘違いした人も多く、恐らく模倣品を発売したクラウンもそう思い込んでいたのではないかと推測されます。
実際には先にも述べたように、ミサイル発射装置(ランチャー)まで予備のミサイルを運搬し、装填するための支援機材です。

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お馴染みの一体成形ながらポージングやモールドが秀逸なフィギュアたち。
少しリラックスした雰囲気でホークミサイルシステムの設営に携わっている人々の姿が活写されています。




―――― ところで、ライフライク版特有のあっさりした味付けのパッケージをシケシゲとながめていると……思わぬものを発見してしまいました。


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絵の片隅に小さく「亜樹」という文字が読めます。

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これは、どう見ても東洋人の名前ではナカローカ? 
しかも響きが日本人名に思えます。
ライフライクのパッケージアーティストは日本人だったのでしょうか? 
タッチや色使いが同社のロングトムなどとは似通っていますが、M40自走砲やオネストジョン、L.V.T(A)5は明らかに別人のタッチです。
何人かのイラストレーターが分担して手がけていたのでしょうが、後になって同社のカーモデル(パイロ社製1/32を受け継いだもの)のパッケージにも「亜樹」の署名を発見することが出来ました。
亜樹サン、ライフライクの秘蔵っ子だったのかな?

……こんなことをあれこれと推理するのも、古いキットの楽しみ方のひとつではないでしょうか。

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